112AM012|第112回 看護師国家試験 過去問
体温変化をとらえ、体温調節の指令を出すのはどれか。
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正解: 3
正答
3.視床下部
この問題のポイント
体温の変化を感知し、熱を作る反応と逃がす反応の指令を出す「体温調節中枢」がどこにあるかを問う問題です。問題文の「体温変化をとらえ」と「指令を出す」という2つの働きを、両方とも担う部位を選びます。体温、摂食、飲水、睡眠覚醒、内分泌などの自律機能をまとめて調節しているのは間脳の視床下部です。この点を押さえていれば確実に解けます。
解説
体温調節のしくみ
ヒトの深部体温がほぼ一定に保たれているのは、熱の産生(産熱)と熱の放散(放熱)のつり合いが常に調整されているからです。この調整を担う中枢が、間脳の視床下部にあります。
視床下部に届く体温の情報は、次の2種類です。
- 皮膚などにある温度受容器(温点・冷点)からの、末梢の温度情報
- 視床下部を流れる血液の温度。視床下部には温度に反応する神経細胞があり、深部の温度を直接感じ取ります
視床下部はこれらの情報をまとめ、あらかじめ決められた基準の温度(セットポイント)と比べます。そのうえで、自律神経、内分泌、骨格筋に指令を出します。問題文の「体温変化をとらえる」働きと「指令を出す」働きが、どちらも視床下部にあるということです。古典的には、視床下部の前部(視索前野)は放熱に、後部は産熱と熱の保持に関わると説明されます。
寒いときに体温を上げる反応は次のとおりです。
- 放熱を減らす:皮膚血管の収縮(交感神経による)、立毛
- 産熱を増やす:骨格筋のふるえ(シバリング)、甲状腺ホルモンやアドレナリンによる代謝の亢進
- 新生児はふるえによる産熱が未熟です。そのため、褐色脂肪組織でのふるえによらない熱産生が中心になります
暑いときは、皮膚血管を拡張させて体表から熱を逃がし、発汗による蒸発で熱を奪います。放熱の経路は輻射・伝導・対流・蒸発の4つです。気温が皮膚温より高い環境では、体に熱が入ってくるため、蒸発(発汗)がほぼ唯一の放熱手段になります。
発熱と高体温の違い
感染などで発熱物質が体内に入ると、IL-1、IL-6、TNF-αなどのサイトカインが作られます。これを受けて視床下部周辺でプロスタグランジンE2が産生され、セットポイントが引き上げられます。
- 悪寒期:実際の体温が新しいセットポイントより低いため、「寒い」と判断されます。悪寒、ふるえ、皮膚血管の収縮が起こるので、看護では保温を行います
- 極期:体温がセットポイントに達すると熱感が出ます。本人が望めば冷罨法で安楽を図ります
- 解熱期:セットポイントが下がり、発汗と皮膚血管の拡張によって熱を逃がします。水分補給と更衣が必要になります
解熱鎮痛薬は、主にプロスタグランジンの合成を抑えてセットポイントを下げることで効果を示します。
これに対して、熱中症などの高体温では、セットポイントは変わっていません。産熱が放熱を上回るか、放熱がうまくいかないことで体温が上がります。このため解熱薬は効きにくく、体を冷やすことが対応の中心です。脳出血や頭部外傷で視床下部が障害されたときの中枢性の発熱も、解熱薬が効きにくいとされます。
行動性体温調節と視床下部のほかの働き
暑さや寒さを「感覚として意識する」のは大脳皮質です。意識した結果として、衣服を調整する、冷暖房を使う、といった行動が起こります。これを行動性体温調節といいます。高齢者は温度の感覚が鈍くなりやすく、乳幼児は自分で行動を調整できません。どちらも室内での熱中症や低体温に注意が必要な理由です。
視床下部は体温以外にも、次のような働きを担っています。
- 摂食中枢と満腹中枢
- 飲水(口渇)
- 視交叉上核による概日リズム
- 下垂体を介した内分泌の調節
- 抗利尿ホルモンとオキシトシンの産生
- 自律神経の最高中枢としての働き
なお、同じ間脳でも「視床」は感覚情報の中継点です。名前が似ているので混同しないようにしましょう。
選択肢の確認
1.橋:橋は中脳と延髄の間にある脳幹の一部です。延髄の呼吸中枢と協調して呼吸のリズムを調節する働きや、排尿反射を統合する橋排尿中枢としての働きをもちます。三叉神経、外転神経、顔面神経、内耳神経の神経核もここにあります。体温の感知や調節の指令は担わないため、該当しません。生命維持の中枢は「呼吸・循環は延髄と橋、体温は視床下部」と区別しておくと混乱しません。
2.小脳:小脳は運動の協調、身体の平衡、筋緊張の調節を担い、運動を滑らかで正確にする中枢です。障害されると、運動失調、企図振戦、測定障害、歩行時のふらつきなどが起こります。体温を感知する働きはありません。寒いときのふるえは骨格筋の運動ですが、ふるえを起こす指令を出すのは視床下部であり、小脳ではない点に注意します。
3.視床下部:正答。皮膚の温度受容器からの末梢の情報と、流れる血液の温度という深部の情報を統合し、セットポイントと比べます。そのうえで、皮膚血管の収縮・拡張、発汗、ふるえ、代謝の調節を指令する体温調節中枢です。発熱のときにプロスタグランジンE2が作用してセットポイントが上がるのも、この部位です。
4.大脳皮質:大脳皮質は、皮膚から届いた温度の情報を「暑い」「寒い」という感覚として意識し、衣服の調節や冷暖房の使用といった行動性体温調節を起こします。しかし、体温変化を自動的にとらえて、発汗、血管の拡張・収縮、ふるえなどを指令する自律性体温調節の中枢ではありません。「感じて行動する」のが大脳皮質、「自動的に調節する」のが視床下部という区別が、この選択肢を見分ける鍵です。
覚えるポイント
- 体温調節中枢は間脳の視床下部です。皮膚の温度受容器(末梢)と血液温(深部)の両方の情報を統合し、セットポイントに合わせて産熱と放熱を調節します。
- 寒いときは皮膚血管の収縮、立毛、ふるえ、代謝の亢進(甲状腺ホルモン、アドレナリン)で体温を保ちます。新生児は褐色脂肪組織による熱産生が中心です。暑いときは皮膚血管の拡張と発汗で熱を逃がします。
- 発熱は「サイトカイン → プロスタグランジンE2 → セットポイントの上昇」で起こります。悪寒期は保温、解熱期は発汗への対応(水分補給・更衣)を行います。
- 熱中症などの高体温はセットポイントが変わらないため、解熱薬ではなく冷却で対応します。
- 脳の部位と主な働きは、延髄=呼吸・循環・嚥下・嘔吐、橋=呼吸調節・排尿反射、小脳=運動の協調・平衡、視床=感覚の中継、視床下部=体温・摂食・飲水・概日リズム・内分泌・自律神経、です。
- 大脳皮質は温度の感覚を意識し、行動性体温調節を担います。自律性の体温調節中枢ではありません。
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