112AM013|第112回 看護師国家試験 過去問

下血がみられる疾患はどれか。

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正解: 2

正答

2.大腸癌 colon cancer

この問題のポイント

下血とは、消化管からの出血が肛門から排出されることです。出血が最終的に「どの出口から体外に出るか」を考えれば解けます。選択肢のうち消化管そのものの疾患は大腸癌だけです。子宮なら性器出血、腎なら血尿というように、臓器ごとの出血の現れ方を対応づけて整理しておくことが鍵になります。

解説

下血と便の色

下血は、食道から直腸・肛門までの消化管のどこかで起きた出血が、便に混じって、または血液そのものとして肛門から出る状態です。口から吐き出される吐血と対になる言葉です。臨床では、上部消化管出血による黒色便を下血、下部消化管からの赤い便を血便と呼び分けることもあります。国家試験では、両者を含めて「消化管出血が肛門から出るもの」と理解しておけば対応できます。

便の色は、出血部位から肛門までの距離と、血液が消化管内にとどまる時間で変わります。

  • 上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血では、ヘモグロビンが胃酸で黒色の塩酸ヘマチンに変化し、さらに腸内細菌の作用も受けます。そのため、黒色でねっとりしたタール便になります。
  • 右側結腸など口側の大腸からの出血では、暗赤色の便になりやすいです。
  • 左側結腸・直腸・肛門からの出血では、血液がほとんど変化しないまま出るため、鮮紅色の血便になります。

ただし、上部消化管からの大量出血では腸を急速に通過して赤い便になることがあり、色はあくまで目安です。

大腸癌で下血が起こる理由

大腸癌は大腸粘膜から発生する悪性腫瘍です。腫瘍の表面はもろく血管に富むため、便が通過する際にこすれて出血します。日本人の大腸癌は直腸とS状結腸に多く、肛門に近いこれらの部位の出血は、鮮紅色から暗赤色の血便として気づかれやすいです。このため、下血や便潜血陽性は大腸癌の代表的な発見の契機になります。痔からの出血と自己判断して受診が遅れることがあるため、注意が必要です。

大腸癌の症状は、発生部位によって異なります。

  • 左側(下行結腸・S状結腸・直腸)は内腔が細く、便も固形化しています。そのため、血便に加えて便通異常(便秘と下痢の繰り返し)、便が細くなる、残便感、腸閉塞が起こりやすくなります。
  • 右側(盲腸・上行結腸)は内腔が広く、便も液状のため症状が出にくいです。少量の出血が続くことによる鉄欠乏性貧血や、腹部腫瘤をきっかけに見つかることが多くなります。

市町村が行う対策型の大腸がん検診は、40歳以上を対象に年1回、問診と免疫法による便潜血検査(2日法)で行います。免疫法はヒトヘモグロビンに反応するため、食事制限が不要です。下部消化管からの出血はヘモグロビンの変性が少ないため検出されやすく、大腸癌の拾い上げに適しています。陽性の場合の精密検査は全大腸内視鏡検査です。

看護の場面で下血をみたら、次の点を観察します。

  • 便の色・量・性状、粘液の混入、腹痛の有無
  • 脈拍・血圧・意識レベル、冷汗や顔面蒼白などショックの徴候
  • 貧血の症状

黒色便は鉄剤の内服でもみられるため、服薬歴の確認も欠かせません。

他の選択肢との区別

出血は、病変のある臓器の出口から現れます。子宮の病変なら腟からの性器出血、腎・尿路の病変なら尿に混じる血尿、気道の病変なら咳とともに口から出る喀血です。肝疾患でも、肝硬変に伴う食道・胃静脈瘤が破裂すれば吐血や下血を起こします。しかしこれは消化管の静脈瘤からの出血であり、肝囊胞そのものが下血の原因になるわけではありません。

選択肢の確認

1.肝囊胞 liver cyst:肝臓内に漿液がたまった袋状の病変で、多くは無症状のまま、超音波検査などで偶然見つかります。巨大になると腹部膨満感や圧迫感を起こすことがありますが、消化管の内腔とはつながっていないため、下血の原因にはなりません。肝疾患に関連する消化管出血は、肝硬変による門脈圧亢進から食道・胃静脈瘤が破裂した場合に起こるもので、これと混同しないようにします。

2.大腸癌 colon cancer:正答。腫瘍表面がもろく、便の通過で傷ついて出血するため、血便・下血は大腸癌の代表的な症状です。特に直腸やS状結腸の癌では、鮮紅色から暗赤色の血便として自覚されやすくなります。便潜血検査による大腸がん検診も、この出血を手がかりにした仕組みです。

3.子宮体癌 uterine corpus cancer:子宮内膜から発生する癌で、主症状は不正性器出血です。出血は腟から排出されるため、下血ではありません。閉経前後から閉経後の女性に多く、閉経後の性器出血は子宮体癌を疑う重要なサインです。肥満、未産、糖尿病、エストロゲンの長期的な作用などが危険因子であり、診断には子宮内膜の細胞診・組織診を行います。

4.腎細胞癌 renal cell carcinoma:腎の尿細管上皮から発生する癌で、古典的には血尿・側腹部痛・腹部腫瘤が三主徴とされます。出血は尿路を通って尿に混じるため、下血ではなく血尿として現れます。現在は三主徴がそろう例は少なく、健康診断の超音波検査やCTで、無症状のうちに偶然発見される例が多くなっています。

覚えるポイント

  • 下血は消化管からの出血が肛門から出るものです。吐血は消化管の出血が口から出るもので、暗赤色やコーヒー残渣様になります。喀血は気道からの出血で、鮮紅色・泡沫状です。
  • 上部消化管からの出血はタール便になります(胃酸でヘモグロビンが塩酸ヘマチンに変化するため)。左側大腸・直腸・肛門からの出血は鮮紅色の血便になります。
  • 大腸癌の好発部位は直腸とS状結腸です。左側の癌は血便・便通異常・便が細くなる・腸閉塞、右側の癌は貧血・腹部腫瘤で見つかりやすいです。
  • 大腸がん検診は、40歳以上に年1回、免疫法の便潜血検査(2日法)で行います。陽性なら全大腸内視鏡検査を受けます。
  • 出血は臓器の出口で整理します。子宮体癌は不正性器出血、腎細胞癌は血尿(三主徴は血尿・側腹部痛・腹部腫瘤)です。
  • 黒色便は鉄剤の内服でも起こります。下血時は、バイタルサイン、ショック徴候、貧血の評価を優先します。

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