112AM014|第112回 看護師国家試験 過去問
糖尿病 diabetes mellitus の急性合併症はどれか。
解答・解説を見る
正解: 4
正答
4.ケトアシドーシス昏睡
この問題のポイント
糖尿病の合併症を「急性」と「慢性」に分けられるかを問う問題です。急性合併症は、インスリン作用が急激に不足して代謝が破綻し、数時間から数日で意識障害や生命の危機に至るものです。慢性合併症は、長年の高血糖による血管障害の結果として生じます。判断の鍵は「発症が突然かどうか」ではなく、「代謝の破綻が短期間に起こるものか、長期の血管障害の結果か」です。
解説
急性合併症と慢性合併症の整理
糖尿病の合併症は、成り立ちによって次の2つに分けます。
- 急性合併症:インスリン作用が急激かつ高度に不足し、代謝が短時間に破綻するものです。代表は糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態で、高血糖による易感染性に伴う感染症も含めます。薬物治療に伴う低血糖も、急速に意識障害を起こす急性の病態として一緒に押さえます。
- 慢性合併症:高血糖が年単位で続き、血管が傷むことで生じるものです。細小血管障害として糖尿病神経障害・糖尿病網膜症・糖尿病腎症の三大合併症があります。大血管障害(動脈硬化)として脳血管疾患・虚血性心疾患・末梢動脈疾患があります。神経障害や血流障害を背景とする糖尿病足病変(潰瘍・壊疽)も慢性合併症です。
糖尿病ケトアシドーシスの機序と症状
インスリンが絶対的に不足すると、細胞はブドウ糖を取り込んでエネルギー源として使えなくなります。加えて、グルカゴン、カテコールアミン、コルチゾールなどのインスリン拮抗ホルモンが増えます。その結果、肝臓での糖新生が進み、著しい高血糖になります。
エネルギー不足を補うために脂肪分解が亢進し、遊離脂肪酸から肝臓でケトン体(アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトン)が大量につくられます。ケトン体は酸であるため、体は代謝性アシドーシスに傾きます。
症状は、機序と結びつけると覚えやすくなります。
- 高血糖による浸透圧利尿:口渇、多飲、多尿、脱水(皮膚・口腔粘膜の乾燥、頻脈、血圧低下)
- アシドーシスに対する呼吸性代償:深く大きい規則的なKussmaul〈クスマウル〉呼吸で二酸化炭素を排出する
- ケトン体(アセトン):呼気のアセトン臭(甘酸っぱい果物様のにおい)
- 消化器症状:悪心・嘔吐、腹痛
- 進行すると意識障害から昏睡に至る
主な誘因は、1型糖尿病の発症時、インスリン注射の自己中断、感染症などのシックデイです。2型糖尿病でも、清涼飲料水を多飲し続けた場合などに起こることがあります。
治療の柱は、生理食塩液による十分な輸液、速効型インスリンの持続静脈内投与、カリウムの補正です。インスリンを投与するとカリウムが細胞内へ移動し、低カリウム血症を起こしやすくなります。そのため、血清カリウム値と心電図の観察が重要です。
高浸透圧高血糖状態・低血糖との区別と看護
高浸透圧高血糖状態は、高齢の2型糖尿病患者に多い病態です。感染症、脱水、高カロリー輸液、副腎皮質ステロイドや利尿薬の使用などが誘因になります。インスリン分泌がある程度保たれているため、ケトン体の産生は軽度で、アシドーシスは目立ちません。一方で、血糖値は著しく高く(600mg/dL以上が目安)、高度の脱水と意識障害が前面に出ます。
低血糖は、インスリンやスルホニル尿素薬の使用中に起こります。食事の遅れや不足、過度の運動、飲酒などがきっかけです。発汗・動悸・手指振戦などの交感神経症状に続き、さらに血糖が下がると意識障害やけいれんに至ります。意識があればブドウ糖(または砂糖)を経口摂取してもらいます。α-グルコシダーゼ阻害薬を服用中の場合は、二糖類の分解が遅れるため必ずブドウ糖を使います。
看護では、患者にシックデイの対応を指導します。具体的には、自己判断でインスリンを中止しないこと、水分と糖質を補給すること、早めに受診することです。意識障害のある糖尿病患者を見たら、まず血糖を測定し、低血糖か高血糖かを見分けることが初期対応の要になります。慢性合併症については、定期的な眼科受診、尿中アルブミンの測定、毎日の足の観察とフットケアなど、症状が出る前からの継続的な管理が中心です。
選択肢の確認
1.足壊疽 foot gangrene:糖尿病足病変の一つで、慢性合併症に分類されます。神経障害で痛みを感じにくいため、靴擦れ・低温やけど・胼胝などの小さな傷に気づきにくくなります。さらに末梢動脈疾患による血流不足で傷が治りにくく、高血糖による易感染性も重なって、潰瘍から壊疽へ進みます。感染が加わると短期間で悪化し、下肢切断に至ることもあります。しかし背景にあるのは長年の神経障害と血流障害です。予防として、毎日の足の観察、足に合った靴の選択、深爪をしない爪の手入れなどのフットケアを指導します。
2.脳血管疾患 cerebrovascular disease:高血糖が長期間続いて動脈硬化が進んだ結果として起こる大血管障害で、慢性合併症です。脳梗塞そのものは突然発症しますが、糖尿病の合併症としては長期の血管障害の結果なので慢性に分類されます。「発症が急だから急性合併症」と取り違えやすい点に注意が必要です。虚血性心疾患や末梢動脈疾患と同様に、血糖だけでなく高血圧、脂質異常症、喫煙などの危険因子を併せて管理することが予防になります。
3.糖尿病網膜症 diabetic retinopathy:網膜の細い血管が長期間の高血糖で障害される細小血管障害で、三大合併症の一つです。単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症の順に進行します。進行すると、新生血管からの硝子体出血や網膜剝離によって視力を失うことがあります。かなり進むまで自覚症状が乏しいため、症状がなくても定期的な眼底検査が欠かせません。
4.ケトアシドーシス昏睡:正答。インスリンの絶対的な不足によってケトン体が蓄積し、代謝性アシドーシスと脱水を来して、短時間で意識障害から昏睡に至る急性合併症です。Kussmaul呼吸とアセトン臭が特徴的な所見です。輸液、インスリン投与、カリウム補正による緊急治療が必要になります。
覚えるポイント
- 急性合併症は、糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖状態、感染症です。治療に伴う低血糖(血糖70mg/dL未満が目安)も、急性の意識障害として一緒に覚えます。
- 慢性合併症は「しめじ」と「えのき」で覚えます。「しめじ」は神経障害・網膜症(目)・腎症の細小血管障害、「えのき」は壊疽・脳血管疾患・虚血性心疾患です。
- 脳梗塞や心筋梗塞のように発症が突然でも、長期の動脈硬化が原因のものは慢性合併症です。
- 糖尿病ケトアシドーシスは、1型・インスリンの絶対的不足・ケトン体著増・代謝性アシドーシス・Kussmaul呼吸・アセトン臭が特徴です。高浸透圧高血糖状態は、高齢の2型・血糖600mg/dL以上・高度脱水・ケトン体は軽度が特徴です。
- 糖尿病患者の意識障害では、まず血糖を測定します。ケトアシドーシスの治療中は、インスリン投与に伴う低カリウム血症に注意します。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。