111AM079|第111回 看護師国家試験 過去問

咀嚼運動にかかわる脳神経はどれか。

解答・解説を見る

正解: 3

正答

3.三叉神経

この問題のポイント

咀嚼運動を担う咀嚼筋(咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)を支配する脳神経を問う、人体の構造と機能の基本問題です。判断の鍵は、12対の脳神経がそれぞれ感覚・運動・副交感のどれを担うかという知識です。三叉神経は、顔面の感覚と咀嚼筋の運動をあわせ持つ混合神経です。食べる動作に関わるほかの脳神経(顔面神経・舌咽神経・迷走神経・舌下神経)との役割分担も整理しておくと、類題に対応できます。

解説

咀嚼筋とその支配神経

咀嚼運動は、下顎を引き上げて歯をかみ合わせ、さらに前後や左右に動かして食物をすりつぶす運動です。この運動を担うのが次の4つの咀嚼筋です。

  • 咬筋:下顎を引き上げます。歯を強くかみしめると、頬の後方で硬く盛り上がるのを触れます。
  • 側頭筋:下顎を引き上げ、後方へ引きます。こめかみの部分で収縮を触れます。
  • 内側翼突筋:下顎を引き上げます。
  • 外側翼突筋:下顎を前方へ出し、口を開ける動きや左右のすりつぶし運動に働きます。

この4つはすべて、三叉神経の第3枝である下顎神経の運動枝に支配されています。問題文の「咀嚼運動」という言葉から咀嚼筋を思い浮かべ、その支配神経を答えるのがこの問題の筋道です。

三叉神経の構成

三叉神経(第V脳神経)は脳神経の中で最も太い神経で、橋から出て、眼神経(V1)、上顎神経(V2)、下顎神経(V3)の3枝に分かれます。

  • 感覚:顔面の皮膚、角膜、鼻腔・口腔の粘膜、歯、舌の前2/3の一般感覚(触覚・痛覚・温度覚)を伝えます。
  • 運動:咀嚼筋などを支配します。運動線維を含むのは下顎神経だけです。

臨床では次のような形で問われます。一側の三叉神経の運動枝が障害されると、患側の咀嚼筋の筋力が低下して萎縮し、口を開けたときに下顎が患側へ偏ります。三叉神経痛は感覚枝の障害で、顔面に発作的な激痛が起こり、第2枝・第3枝の領域に多くみられます。角膜反射は、求心路が三叉神経(眼神経)、遠心路が顔面神経です。

食べる動作に関わる脳神経の分担

摂食嚥下は、複数の脳神経が協調して成り立っています。

  • 口唇を閉じる口輪筋、食物を歯列の上に保つ頬筋:顔面神経(どちらも表情筋です)
  • 舌を動かして食塊をまとめ、咽頭へ送り込む舌筋:舌下神経
  • 味覚:舌の前2/3は顔面神経、後1/3は舌咽神経
  • 唾液分泌:顎下腺・舌下腺は顔面神経、耳下腺は舌咽神経(いずれも副交感神経線維)
  • 咽頭期の嚥下(軟口蓋・咽頭・喉頭の筋):舌咽神経・迷走神経

頬筋は咀嚼を助けますが、咀嚼筋ではなく顔面神経支配の表情筋である点が混同されやすいところです。脳卒中や神経難病の患者の摂食嚥下を評価するときは、どの段階(口唇閉鎖、咀嚼、舌による送り込み、咽頭通過)に問題があるかを観察し、関わる脳神経と結びつけてアセスメントします。咀嚼機能を確かめるには、歯をかみしめてもらい、咬筋と側頭筋の収縮の強さを左右で触れて比べる方法が簡便です。

選択肢の確認

1.嗅神経:鼻腔上部の嗅上皮で受けたにおいの情報を、篩骨の篩板を通して嗅球へ伝える感覚だけの神経(第I脳神経)で、運動線維を含まないため咀嚼筋は支配しません。食物の風味の感じ方には嗅覚も関わるので摂食と関係がありそうに見えますが、においの知覚と咀嚼運動は別の機能です。

2.滑車神経:上斜筋だけを支配する眼球運動の神経(第IV脳神経)で、眼球の下転(特に内側を向いたときの下向き)と内旋に関わります。中脳の背側から出る唯一の脳神経で、障害されると下を見るときに複視が起こり、階段を下りる動作や読書がしにくくなります。咀嚼筋とは関係がありません。

3.三叉神経:正答。第3枝の下顎神経の運動枝が、咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋の4つの咀嚼筋をすべて支配しています。顔面の感覚も担う混合神経であり、運動線維は下顎神経にだけ含まれます。

4.動眼神経:上直筋・下直筋・内直筋・下斜筋・上眼瞼挙筋を支配し、副交感神経線維で瞳孔括約筋と毛様体筋も支配する第III脳神経で、担うのは眼球運動・開眼・縮瞳・調節です。障害されると眼瞼下垂、散瞳、眼球の外下方への偏位が起こります。咀嚼には関与しません。

5.内耳神経:蝸牛神経(聴覚)と前庭神経(平衡覚)からなる感覚だけの神経(第VIII脳神経)で、運動線維を含まず咀嚼筋は支配しません。顔面神経と一緒に内耳道を通るため、顔面神経の働き(表情筋や味覚)と取り違えないよう注意します。

覚えるポイント

  • 咀嚼筋4つ(咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)は、すべて**三叉神経第3枝(下顎神経)**の支配です。
  • 三叉神経は「顔面の感覚+咀嚼の運動」を担う混合神経です。表情筋(口輪筋・頬筋を含む)は顔面神経の支配なので混同しないようにします。
  • 食べる動作の分担:口唇閉鎖は顔面神経、舌の運動は舌下神経、咽頭期の嚥下は舌咽神経・迷走神経です。味覚は舌の前2/3が顔面神経、後1/3が舌咽神経で、舌の前2/3の一般感覚は三叉神経です。
  • 眼球運動の神経:動眼神経(大部分の外眼筋、上眼瞼挙筋、瞳孔括約筋)、滑車神経(上斜筋)、外転神経(外側直筋)の3つです。
  • 感覚だけの脳神経は嗅神経・視神経・内耳神経の3つです。副交感神経線維を含むのは動眼神経・顔面神経・舌咽神経・迷走神経です。
  • 角膜反射は求心路が三叉神経、遠心路が顔面神経です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。

関連問題

← 111AM078111AM080 →
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)