111AM080|第111回 看護師国家試験 過去問
射出される精子が通るのはどれか。
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正解: 3
正答
3.尿道
この問題のポイント
精子が精巣でつくられてから体外へ射出されるまでの通り道(精路)を、順番にたどれるかを問う問題です。判断の鍵は、精子が実際に通る「管」と、精液に分泌液を加えるだけの「腺」、そして尿の通り道にしか属さない器官を区別することです。男性では尿道が尿と精液の共通の出口になっていることが、正答を選ぶ決め手になります。
解説
精子の通り道(精路)
精子は次の順に運ばれて体外へ出ます。
- 精巣(精細管):精子がつくられる場所です。セルトリ細胞が精子形成を支え、間質のライディッヒ細胞がテストステロンを分泌します。
- 精巣上体:精子はここを通る間に運動能を獲得して成熟し、主に尾部に蓄えられます。
- 精管:精巣上体の尾部から続く管で、精索の一部として鼠径管を通り、骨盤内へ入って膀胱の後面へ回ります。末端は太くなって精管膨大部になります。
- 射精管:精管膨大部と精囊の導管が合流してできる短い管です。前立腺の中を貫き、前立腺部尿道の精丘に開口します。
- 尿道:前立腺部、隔膜部(膜様部)、海綿体部を順に通り、外尿道口から体外へ出ます。
つまり、選択肢の中で精子が実際に内腔を通過するのは尿道だけです。
精液をつくる付属生殖腺
精液は、精子と付属生殖腺の分泌液が混ざったものです。精子自体が占める体積はごくわずかです。
- 精囊:果糖を多く含むアルカリ性で粘り気のある分泌液を出し、精液量の約6〜7割を占めます。果糖は精子のエネルギー源になり、アルカリ性は腟内の酸性環境を中和します。
- 前立腺:乳白色で弱酸性の分泌液を出し、精液量の約2〜3割を占めます。クエン酸、酸性ホスファターゼ、PSA(前立腺特異抗原)などを含みます。PSAは、射精直後にいったん凝固した精液を液化させる働きをもちます。
- 尿道球腺(カウパー腺):射精の前に透明な粘液を尿道へ分泌し、尿道を潤します。
これらの腺は、導管を通して分泌液を精路に注ぐ器官です。腺そのものが精子の通り道になるわけではありません。
射精と膀胱の関係
射精では、まず精管・精囊・前立腺の平滑筋が収縮し、精液が後部尿道へ送り出されます。この過程は主に交感神経(下腹神経)が担います。同時に膀胱頸部の内尿道括約筋が閉じるため、精液は膀胱へ逆流しません。続いて、陰部神経に支配される球海綿体筋などが律動的に収縮し、精液を体外へ押し出します。国家試験では「勃起は副交感神経(骨盤神経)、射精は交感神経」という整理がよく問われます。
臨床・看護での意味
男性の尿道は尿と精液の共通路なので、尿道炎が精管を逆行して精巣上体炎を起こすことがあります。前立腺肥大症では前立腺部尿道が圧迫され、排尿障害が起こります。前立腺の手術後などには逆行性射精が起こりうるため、患者への説明が必要です。また、男性の尿道は長く屈曲しています。そのため男性に導尿するときは、陰茎を腹壁に対して垂直に持ち上げて尿道の屈曲を減らしてからカテーテルを挿入します。
選択肢の確認
1.精囊:精囊は膀胱の後面にある一対の袋状の腺で、果糖に富むアルカリ性の分泌液を射精管へ送り込む器官です。精囊の導管は精管と合流して射精管になりますが、精子は精管から射精管へ進むため、精囊の内腔は通り道になりません。「囊」という名前から精子の貯蔵庫と誤解されやすいものの、精子を蓄えるのは主に精巣上体(尾部)と精管膨大部です。「精液の液体成分を最も多く分泌する器官はどれか」と問われれば該当しますが、本問の「精子が通る」器官ではありません。
2.尿管:尿管は腎盂から膀胱へ尿を運ぶ長さ約25〜30cmの管で、尿路専用の管であり、生殖器系とはつながっていません。骨盤内では精管が尿管の前上方を乗り越えるように交差しますが、両者の内腔が通じることはありません。尿管と尿道は一字違いで取り違えやすいので、「腎臓→尿管→膀胱→尿道」という尿の流れで位置を確認しておきましょう。
3.尿道:正答。精子は精管から射精管へ進み、前立腺部尿道の精丘に開口したあと、隔膜部と海綿体部を通って外尿道口から射出されます。男性の尿道は、排尿時には尿の、射精時には精液の通り道となる共通路です。女性の尿道は約3〜4cmと短く、尿だけが通ります。
4.膀胱:膀胱は尿を一時的にためる器官で、射精管は膀胱ではなく、膀胱の出口より下流の前立腺部尿道に開口します。射精時には交感神経の働きで膀胱頸部(内尿道括約筋)が閉じるため、精液は膀胱へ入りません。この閉鎖がうまく働かないと精液が膀胱へ流れ込む逆行性射精となり、射精後の尿の白濁や男性不妊の原因になります。逆行性射精は、前立腺の手術後、糖尿病性自律神経障害、α1遮断薬の服用などでみられます。
5.前立腺:前立腺は膀胱の直下で尿道の起始部を取り囲む腺で、精液に乳白色で弱酸性の分泌液を加える器官です。射精管と尿道が前立腺の中を貫いているので、精子は前立腺の内部にある「管」を通過します。しかし、通り道として正確に名指しできるのは射精管と尿道であり、分泌を担う腺組織そのものではありません。前立腺肥大症や前立腺がんと結びつけて問われることが多い器官で、PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーとしても重要です。
覚えるポイント
- 精路は「精巣(精細管)→精巣上体→精管→射精管→尿道(前立腺部→隔膜部→海綿体部)→外尿道口」の順です。
- 精囊(果糖・アルカリ性・精液の約6〜7割)、前立腺(乳白色・弱酸性・PSA)、尿道球腺はいずれも分泌液を加える腺で、精子の通り道ではありません。
- 精子の成熟と貯蔵の場は精巣上体です。精囊は名前に反して精子を貯蔵しません。
- 男性の尿道は尿と精液の共通路で約16〜20cmと長く、女性の尿道は約3〜4cmで尿だけが通ります。尿管(腎盂→膀胱)と尿道(膀胱→体外)を混同しないようにしましょう。
- 勃起は副交感神経、射精は交感神経が主に担います。射精時には内尿道括約筋が閉じ、この閉鎖が障害されると逆行性射精が起こります。
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