112AM066|第112回 看護師国家試験 過去問

患者の権利や力を尊重し、自己制御している感覚を持たせ、患者が社会生活に必要な技能や能力を獲得する支援を意味するのはどれか。

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正解: 4

正答

4.エンパワメント

この問題のポイント

精神看護や地域での支援でよく出る、当事者の力に着目した4つの概念を見分ける問題です。手がかりは「権利や力を尊重」「自己制御している感覚」「技能や能力を獲得する支援」の3つの表現です。これらは、当事者が自分の生活や健康を自分でコントロールする力を取り戻せるよう支える働きかけを表しており、エンパワメントの説明にあたります。

解説

問題文の手がかり

設問の記述は、次の3つの要素でできています。

  • 患者の権利や力を尊重する:患者を「治療やケアを受けるだけの存在」ではなく、自分で決める主体としてとらえる姿勢です。
  • 自己制御している感覚を持たせる:自分の人生や健康を自分でコントロールできているという感覚を取り戻すことです。
  • 社会生活に必要な技能や能力を獲得する支援:そのために必要な知識・技能・資源を得られるよう支えることです。

さらに、設問は「支援を意味する」と結んでいます。本人の状態や特性ではなく、力を引き出す働きかけや過程を問うている点も判断の手がかりになります。

エンパワメントとは

エンパワメント(empowerment)は「力(パワー)を与える、力を発揮できるようにする」という意味の語です。差別や偏見、制度、疾病や障害などのために本来の力を発揮できなくなっている人が、自分の生活や環境をコントロールする力を取り戻していく過程を指し、それを支える働きかけも含みます。社会運動や社会福祉の領域で広まり、医療・看護でも中心的な概念になりました。

看護の実践では、次のような関わりがエンパワメントにあたります。

  • 病状や治療について十分な情報を伝え、選択肢を示し、本人が自分で決められるようにする
  • 本人の目標を尊重し、小さな成功体験を積み重ねて自己効力感を高める
  • 服薬管理、金銭管理、対人関係の技能など、地域生活に必要な技能の習得を支える(社会生活技能訓練〈SST〉など)
  • セルフヘルプグループやピアサポートなど、当事者どうしが力を得られる場につなぐ

これと対極にあるのが、医療者が本人に代わって「よかれと思って」決めてしまうパターナリズムです。エンパワメントでは、支援者は本人の決定を支える伴走者の立場をとります。

エンパワメントは個人だけでなく、集団や地域のレベルでも使われる概念です。WHOのオタワ憲章(1986年)は、ヘルスプロモーションを「人々が自らの健康をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義しており、同じ考え方に立っています。保健師が住民組織の力を高める地域活動も、コミュニティ・エンパワメントとして説明されます。

似た概念との関係

4つの概念はいずれも、病理や欠点よりも当事者がもつ力に着目する点で共通しています。ただし、焦点がそれぞれ異なります。

  • リカバリ:本人がたどる回復の過程(自分らしい生き方の回復)
  • ストレングス:本人がもつ強み(能力や資源)
  • レジリエンス:逆境から立ち直る力(本人がもつ回復力)
  • エンパワメント:力を取り戻す過程と、それを引き出す支援

実践では、これらは互いに結びついています。支援者が本人のストレングスに着目して関わることでエンパワメントが進み、それが本人のリカバリを後押しする、という流れで理解すると整理しやすくなります。設問は「権利の尊重」「自己制御感」「技能・能力の獲得支援」をひとまとまりで述べているので、エンパワメントを選びます。

選択肢の確認

1.リカバリ:精神障害の領域で用いられる概念で、症状や障害を抱えながらも希望をもち、自分らしく満足のいく人生を歩もうとする、本人の個人的で主体的な過程を指します。症状の消失や病前の状態に戻ること(臨床的な回復)だけを意味するわけではない点が重要です。回復の主体はあくまで本人であり、支援者が権利を尊重しながら技能の獲得を支える「支援」そのものを指す語ではありません。選択肢4の支援は、この過程を後押しする手段として位置づけられます。

2.ストレングス:本人がもつ強みを指す語です。能力や技能、関心、希望といった個人の強みと、家族や友人、地域の資源や機会といった環境の強みの両方を含みます。問題点や欠点ではなく強みを出発点に支援を組み立てる考え方で、ラップ(Rapp)が体系化したケースマネジメントの枠組みとしても知られます。ただし、この語が表すのは「着目する対象としての強み」です。自己制御感を取り戻させ、技能の獲得を支える過程を述べた設問の説明とは一致しません。

3.レジリエンス:強いストレスや逆境、トラウマとなる体験にさらされても、打ちのめされたままにならずに回復し、適応していく力を指し、「精神的回復力」「しなやかさ」などと訳されます。もとは物理学で、外から力を受けて変形した物体が元に戻る性質を表す語でした。周囲の支えや経験によって高めることはできますが、指しているのは個人の内にある回復力です。支援者が患者の権利を尊重し、社会生活の技能獲得を支える働きかけを表す語ではありません。

4.エンパワメント:正答。当事者を自分で決める主体として、その権利や力を尊重する考え方です。自分の生活や健康を自分でコントロールできる感覚を取り戻せるよう働きかけ、社会生活に必要な知識や技能を獲得できるよう支える過程を指し、設問の3つの要素すべてに合致します。

覚えるポイント

  • エンパワメントは、本来の力を発揮できない状態から、自分の生活や健康をコントロールする力を取り戻す過程と、それを支える支援を指します。キーワードは「権利の尊重」「自己決定」「自己制御感(コントロール感)」「技能の獲得」です。
  • リカバリは症状の消失ではなく、障害があっても希望をもって自分らしい人生を歩む本人の主体的な過程です。
  • ストレングスは、個人の強み(能力・関心・希望)と環境の強み(人・資源・機会)に着目する視点です。
  • レジリエンスは、逆境やストレスから立ち直り、適応する精神的回復力です。
  • 4つとも当事者の力に着目する考え方です。「強みに着目した支援で力を引き出し、その人の回復を後押しする」という関係で整理しておきましょう。
  • エンパワメントの対極はパターナリズムです。ヘルスプロモーション(オタワ憲章)や地域づくりでも、同じ考え方が基盤になっています。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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