112PM043|第112回 看護師国家試験 過去問

経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉の測定値に影響を及ぼすのはどれか。

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正解: 4

正答

4.末梢循環不全

この問題のポイント

パルスオキシメータの測定原理を理解しているかを問う問題です。判断の鍵は、この機器が「拍動する動脈血による光の吸収」を測っているという点です。拍動を十分に検出できない状態では、測定値が不正確になります。頻脈・高血圧・高体温は患者の状態として重要ですが、測定の仕組みそのものを妨げるものではありません。

解説

パルスオキシメータの測定原理

SpO2は、動脈血中のヘモグロビンのうち酸素と結合しているもの(酸素化ヘモグロビン)の割合を、採血せずに皮膚の上から推定した値です。パルスオキシメータは、プローブの発光部から赤色光と赤外光の2種類の光を指先などに当て、組織を透過した光を受光部で測ります。酸素化ヘモグロビンは赤外光をよく吸収し、脱酸素化ヘモグロビン(還元ヘモグロビン)は赤色光をよく吸収します。この性質の違いを利用し、2つの光の吸収の比から酸素飽和度を算出します。

ただし、光が通る部分には動脈血だけでなく、静脈血、皮膚、骨なども含まれます。そこで機器は、心拍に合わせて変動する成分(拍動成分)だけを動脈血によるものとして取り出し、計算に使っています。つまりパルスオキシメータは、末梢まで拍動のある血流が十分に届いていることを前提にした機器です。

末梢循環不全で何が起こるか

次のような状態では末梢の血流が低下し、拍動成分の信号が小さくなります。

  • ショック、心拍出量の低下、循環血液量の減少
  • 寒冷や疼痛による末梢血管の収縮
  • 昇圧薬の使用
  • 末梢動脈疾患

その結果、実際より低い値や不安定な値が表示されたり、測定できなくなったりします。モニタの脈波(プレチスモグラフ)が小さく平坦なときや、表示される脈拍数が触診した脈拍と一致しないときは、数値をそのまま信用しないことが大切です。

看護の実際では、次のように対応します。

  • 測定部位を温める
  • 測定部位を耳朶や額などに変える
  • 脈波の形や信号の強さを確認してから数値を読む
  • 値に疑問があれば医師に報告し、動脈血ガス分析(SaO2、PaO2)で確認する

また、長時間の装着ではプローブによる圧迫や発熱で皮膚障害が起こることがあります。そのため、装着部位を定期的に変えます。

他に測定値を狂わせる主な因子

  • 体動、プローブのずれ、外部からの強い光
  • マニキュアやジェルネイル(とくに濃い色)
  • 一酸化炭素中毒:カルボキシヘモグロビンを酸素化ヘモグロビンと区別できないため、実際より高い値が表示され、低酸素を見逃しやすくなります
  • メトヘモグロビン血症:85%付近の値を示しやすく、実際の値とずれます
  • 検査で静脈内投与する色素(インドシアニングリーン、メチレンブルーなど)
  • 高度の貧血

なお、貧血ではSpO2が正常でも、ヘモグロビン量が少ないため血液が運べる酸素の総量(酸素含量)は減っています。「SpO2が正常=組織に十分な酸素が届いている」とは限らない点も押さえておきましょう。

頻脈・高血圧・高体温が該当しない理由

これらは脈拍数・血圧・体温というバイタルサインの異常であり、動脈の拍動自体は保たれています。拍動が検出できれば、光の吸収比からSpO2を求める仕組みは変わりません。本問の「測定値に影響を及ぼす」は、実際の酸素化の状態と表示値との間にずれを生じさせる因子、つまり測定の精度を損なう因子を指すと考えて解きます。

選択肢の確認

1.頻脈:脈拍数が多くても動脈の拍動は検出できるため、赤色光と赤外光の吸収比からSpO2を求める原理に支障はありません。パルスオキシメータは脈拍数も表示しますが、心拍が速いこと自体で飽和度の値がずれることはありません。ただし心房細動のように1回ごとの拍出量が変動する不整脈では、弱い拍動が脈として拾われないことがあります。その場合、表示される脈拍数が心拍数より少なくなるため、心電図モニタと見比べることが必要です。

2.高血圧:血圧が高い状態では末梢動脈の拍動はむしろ十分に保たれており、測定の妨げにはなりません。取り違えやすいのは血圧測定との関係です。マンシェットで加圧している腕の指にプローブを付けると、加圧中は血流が途絶えて一時的に測定できなくなります。これは血圧の高さではなく駆血による血流の途絶が原因なので、反対側の手で測定します。

3.高体温:体温上昇時は末梢血管が拡張して皮膚の血流が増えるため、拍動の検出はむしろ容易になります。注意したいのは発熱の上昇期です。悪寒による末梢血管の収縮や、ふるえ(シバリング)による体動があると測定が不安定になりますが、原因は体温の高さではなく血管収縮と体動です。なお、体温上昇は酸素解離曲線を右方に移動させ、組織で酸素を放しやすくします。これは実際の酸素化の変化であり、測定の誤差とは区別します。

4.末梢循環不全:正答。パルスオキシメータは拍動する動脈血の成分だけを取り出して計算します。そのため、ショック、寒冷、血管収縮などで末梢の血流が低下すると拍動信号が弱くなり、低値や測定不能の原因になります。脈波を確認し、部位の加温や変更、動脈血ガス分析による確認で対応します。

覚えるポイント

  • パルスオキシメータは赤色光と赤外光の吸収の違いを利用し、拍動成分から動脈血の酸素飽和度を推定する
  • 末梢循環不全(ショック、寒冷、血管収縮)、体動、マニキュア、外光は測定値を不正確にする。数値だけでなく脈波も確認する
  • 一酸化炭素中毒ではSpO2が実際より高く表示され、低酸素を見逃しやすい
  • SpO2の基準はおおむね96〜99%。SpO2 90%はPaO2 約60Torrに相当し、呼吸不全の目安となる
  • 貧血ではSpO2が正常でも酸素含量は低下している
  • 頻脈・高血圧・高体温は拍動の検出を妨げないため、SpO2の測定原理には直接影響しない

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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