112PM044|第112回 看護師国家試験 過去問

仰臥位で手術を受けた患者が術後に上肢の薬指と小指のしびれを訴えた。しびれの原因として考えられるのはどれか。

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正解: 3

正答

3.肩関節の内旋

この問題のポイント

薬指と小指のしびれから障害された末梢神経(尺骨神経)を特定し、手術体位のどの肢位がその神経を圧迫するかを判断する問題です。尺骨神経は肘の内側(上腕骨内側上顆の後方)の浅いところを通ります。肩関節を内旋させると、この部分が手術台に押し付けられることが判断の鍵です。

解説

症状から障害神経を特定する

問題文の手がかりは「仰臥位」「術後」「薬指と小指のしびれ」の3つです。手の感覚は主に次の3本の神経が分担しています。

  • 尺骨神経:小指、薬指の尺側(小指側)半分、手の尺側部
  • 正中神経:手掌側の母指・示指・中指と、薬指の橈側半分
  • 橈骨神経:手背の橈側(母指・示指の付け根の背側など)

薬指と小指に限られたしびれは、尺骨神経障害の典型的な分布です。

尺骨神経が圧迫されやすい部位

尺骨神経は上腕の内側を下り、肘では上腕骨内側上顆の後ろにある溝(肘部管)を通ります。肘をぶつけたときに小指側へジーンと響く場所がここです。神経は皮膚のすぐ下を骨に沿って走っており、筋や脂肪による保護がほとんどありません。そのため、硬い面に長く接していると圧迫されて障害されやすく、周術期の末梢神経障害の中でも頻度の高いものの一つです。

全身麻酔中の患者は、痛みやしびれを訴えることも、自分で姿勢を変えることもできません。そのため、長時間の圧迫がそのまま神経障害につながります。

肩関節の内旋で何が起こるか

仰臥位では、上肢を体側に置くか、上肢台(アームボード)に外転位で乗せます。どちらの場合も、肘の内側がどちらを向くかは上腕骨の回旋、つまり肩関節の回旋で決まります。

  • 肩関節を内旋させた場合:上腕骨が内側にねじれ、内側上顆の後方にある肘部管が手術台やアームボードの側を向きます。尺骨神経が骨と台の間に挟まれて圧迫され、術後に薬指・小指のしびれが生じます。重症化すると手内筋の麻痺(鷲手)に至ることもあります。
  • 外旋位の場合:手掌を上や体側に向けた肢位では、肘の内側が台から離れるため、圧迫は軽くなります。

看護実践での予防

手術室看護師は、体位固定の段階で神経損傷を防ぐ役割を担います。

  • 肘の内側(肘部管)に除圧用のパッドを当てる
  • 肩関節を内旋させず、前腕は中間位から回外位に保つ(体側に置く場合は手掌を体側に向ける)
  • 肘関節の深い屈曲を避ける(屈曲すると肘部管が狭まり、尺骨神経が伸ばされて圧迫される)
  • アームボードを使うときは上肢の外転を90度以内にとどめ、腕神経叢が伸ばされるのを防ぐ
  • 術中も体位のずれを定期的に確認する
  • 術後は上下肢の感覚と運動を観察し、しびれや筋力低下があれば早期に報告する

選択肢の確認

1.頸部の伸展:頸部の伸展(後屈)は、主に頸椎・頸髄と気道管理に関わる肢位です。頸椎症などがある患者では、過伸展による頸髄障害に注意が必要です。しかし肘の部分で尺骨神経を局所的に圧迫するものではなく、薬指と小指に限られたしびれの原因とは考えにくいです。上肢の神経障害に関わる頭頸部の肢位としては、頸部を反対側へ回旋・側屈させた状態で上肢を過度に外転すると腕神経叢が伸ばされる、という組み合わせを覚えておきましょう。

2.前腕の回内:前腕の回内は、橈骨が尺骨のまわりを回って手掌を下に向ける運動です。上腕骨そのものは回旋しないため、尺骨神経が通る肘内側の向きは直接には変わりません。この問題で問われているのは、肘内側を台に向けてしまう上腕の回旋、つまり肩関節の内旋です。ただし臨床では、前腕を強く回内させると肩の内旋を伴いやすくなります。そのため、手術体位では前腕を中間位から回外位に保つのが基本です。

3.肩関節の内旋:正答。肩関節を内旋させると上腕骨が内側にねじれ、上腕骨内側上顆の後方にある肘部管が手術台やアームボードに接するようになります。ここは尺骨神経が皮膚の直下を走る、保護の乏しい部位です。長時間圧迫されると尺骨神経麻痺が起こり、その支配域である薬指の尺側と小指のしびれとして現れます。

4.肘関節の伸展:肘関節を伸展させると肘部管はむしろ緩み、尺骨神経が引き伸ばされたり、管の中の圧が上がったりすることは起こりにくくなります。尺骨神経に負担をかけるのは反対の屈曲で、特に深く曲げると肘部管が狭くなり、神経が引き伸ばされます。なお、肘を快適な範囲を超えて伸展させると正中神経が伸ばされるおそれがあるため、無理な伸展も避けます。

覚えるポイント

  • しびれの部位と神経:薬指(尺側)と小指は尺骨神経、手掌側の母指〜中指は正中神経、手背の橈側は橈骨神経
  • 尺骨神経は肘内側(上腕骨内側上顆の後方にある肘部管)を浅く走るため圧迫に弱く、肩関節の内旋と肘の深い屈曲がリスクになる
  • 麻痺したときの手の形:尺骨神経は鷲手、正中神経は猿手、橈骨神経は下垂手
  • 手術体位で起こりやすい神経障害:上肢の過外転で腕神経叢、上腕外側の圧迫で橈骨神経、腓骨頭の圧迫(砕石位・側臥位など)で総腓骨神経(下垂足)
  • 予防の基本:除圧パッド、上肢の外転は90度以内、前腕は中間位〜回外位、術中・術後の感覚と運動の観察

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