111AM039|第111回 看護師国家試験 過去問

Aさん(24歳、男性)は急性虫垂炎 acute appendicitis の術後1日で、ベッド上で仰臥位になり右前腕から点滴静脈内注射が行われている。Aさんは左利きである。病室外のトイレまでAさんが移動するための適切な療養環境はどれか。

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正解: 4

正答

4.ベッドは端座位時にAさんの足底が床につく高さにする。

この問題のポイント

術後早期離床で初めて歩くときに、転倒と点滴ルートのトラブルを防ぐための療養環境の整え方を問う問題です。手がかりは「術後1日」「右前腕の点滴」「左利き」の3つです。履物・ベッド柵・輸液スタンドの位置は、利き手ではなく点滴刺入部の位置とベッドから降りる側で決めます。「左利き」は、選択肢1〜3を選ばせるために置かれた情報です。

解説

状況の整理

Aさんは24歳と若く、急性虫垂炎の術後1日目です。現在はベッド上で仰臥位をとり、右前腕に点滴をしています。これから病室外のトイレまで移動しようとしています。つまり、術後に初めて本格的に離床する場面の可能性が高いと読み取れます。

術後の早期離床には、次のような効果があり、積極的に勧められます。

  • 無気肺・肺炎などの呼吸器合併症を防ぐ
  • 腸蠕動の回復を促し、術後イレウスを防ぐ
  • 深部静脈血栓症を防ぐ
  • 筋力低下を防ぐ

一方、初回歩行には次のような危険が集中します。

  • 起立性低血圧によるめまいやふらつき
  • 創痛による姿勢の崩れと転倒
  • 臥床中にできた血栓による肺血栓塞栓症
  • 点滴ルートの引っかかりや事故抜去

したがって環境整備では、「安全に起き上がり、立ち上がれること」と「点滴ルートが動作の邪魔にならないこと」の2点を満たす必要があります。

立ち上がりを安全にするベッドの高さ

転倒が最も起こりやすいのは、起き上がってから立ち上がるまでの動作です。

ベッドは、端座位で足底全体が床につき、膝と股関節がおよそ90度に曲がる高さに調整します。この高さなら、座った姿勢が安定し、体幹を前に傾けて重心を足の上に移すことで、無理なく立ち上がれます。

  • 高すぎる場合:足が浮いて座位が不安定になり、降りるときに床へ飛び降りる形になって転倒しやすくなります。
  • 低すぎる場合:立ち上がりに大きな筋力と腹圧が必要になり、腹部の創痛が強まってふらつきにつながります。

看護師がケアをするときは、腰痛予防のためにベッドを高く上げることがあります。しかし、患者が離床する前には必ず適切な高さまで下げることが大切です。

点滴ルートと降りる側

点滴中の移動では、輸液スタンドを刺入部と同じ側に置き、ルートが体をまたいだり体の前を横切ったりしないようにします。

Aさんは右前腕に点滴をしているので、スタンドは右側に置きます。右側から降りればルートの取り回しが最も自然です。降りる側が決まれば、次のように環境を整えます。

  • 履物は、降りる側の、端座位で足を下ろす位置にそろえる
  • 降りる側のベッド柵は、動作の妨げにならないよう外す

なお、刺入部位は利き手や関節部を避けて選ぶのが原則です。左利きのAさんの右前腕(非利き手側)に点滴が入っているのは、この原則どおりです。利き手が関係するのは刺入部位を選ぶ場面であり、スタンドや履物の位置を決める根拠にはなりません。

実践での手順

起き上がるときは、次の順で行います。

  1. いったん側臥位になり、腕の力で上体を起こす(腹圧がかかりにくく、創痛を軽減できる)
  2. 端座位でしばらく休み、めまい・気分不快・顔色・脈拍などを確認する
  3. 立位になってからも同様に確認し、看護師が付き添って歩行を始める

あわせて次の点も整えます。

  • かかとのある滑りにくい履物を用意する
  • 通路の障害物を取り除く
  • 輸液ボトルを刺入部より高い位置に保ち、ルートに適度なたるみを持たせる
  • 移動の前後で、刺入部と滴下を確認する

選択肢の確認

1.履物はAさんの左手側に置く。:履物は利き手の側ではなく、ベッドから降りる側の、端座位で足を下ろした位置にそろえて置きます。本問では点滴が右前腕にあり、輸液スタンドを右側に置くため、右側から降りるのが自然です。その状況で履物が左手側にあると、足を探して体をひねったり、はだしで床に立ったりすることになり、転倒の危険が高まります。「左利きだから左側」と利き手に結びつけるのが引っかけです。病室の配置上どうしても左側から降りる場合は左側に置きますが、その場合も決め手は利き手ではなく降りる側です。

2.ベッド柵はAさんの右手側に設置する。:点滴側の右側から降りる場合、右側の柵は乗り降りの妨げになり、柵を乗り越えたり柵の端から無理に降りたりする転倒の原因になります。また、柵を支えに使うとしても、右前腕には点滴の刺入部があります。右手で柵を強く握って体重をかけると刺入部に負荷がかかり、血管外漏出や針の抜去につながります。ベッド柵は臥床中の転落防止として降りない側に用い、降りる側は動作を妨げないよう外すのが基本です。

3.輸液スタンドはAさんの左手側に置く。:点滴は右前腕から入っているので、輸液スタンドは刺入部と同じ右側に置きます。左側に置くと、ルートが体の上や前を横切ります。その結果、起き上がりや立ち上がりの動作でルートが引っ張られたり、体の下敷きになったり、足に絡んだりして、事故抜去や転倒の原因になります。利き手の左手でスタンドを押すほうが楽そうに思わせるのがこの選択肢のねらいですが、ルートの安全を優先します。

4.ベッドは端座位時にAさんの足底が床につく高さにする。:正答。端座位で足底全体が床につく高さにすると、座位が安定し、前方へ重心を移して安全に立ち上がれます。また、腹部の創に余分な腹圧をかけずに済みます。高すぎれば足が浮いて飛び降りる動作になり、低すぎれば立ち上がりに大きな力が必要になります。この高さ設定は、利き手や点滴の側に左右されず、どの患者の離床にも共通する原則です。

覚えるポイント

  • 離床時のベッドの高さは、端座位で足底全体が床につき、膝がおよそ90度になる高さです。ケアのために上げたベッドは、離床前に必ず下げます。
  • 輸液スタンドは刺入部と同じ側に置き、ルートが体をまたがないようにします。輸液ボトルは刺入部より高く保ち、ルートには適度なたるみを持たせます。
  • 履物は降りる側の足元にそろえ、かかとのある滑りにくいものを選びます。降りる側のベッド柵は動作の妨げにならないよう外します。
  • 利き手は、点滴の刺入部位を選ぶときに「避ける側」として考慮します。スタンドや履物の位置を決める根拠にはならず、問題文の「利き手」は引っかけのことがあります。
  • 術後の初回歩行では、起立性低血圧・創痛による転倒・肺血栓塞栓症に注意します。側臥位を経由して起き上がり、端座位と立位で症状を確認してから、看護師が付き添って歩き始めます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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