111AM038|第111回 看護師国家試験 過去問
臥床患者の体位変換とボディメカニクスの原則との組合せで正しいのはどれか。
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正解: 1
正答
1.仰臥位から側臥位 ― トルクの原理
この問題のポイント
体位変換のときに患者の体がどう動くかを見分け、その動きに合う力学の原理を結び付けられるかを問う問題です。体の動きには、回転する、水平に滑る、起き上がるの3つがあります。仰臥位から側臥位への体位変換は、体の長軸を回転軸とした回転運動です。そのため、回転させる働きを表すトルクの原理が当てはまります。水平移動では摩擦力を小さくすること、起き上がりではてこの原理を使うことが鍵になります。
解説
ボディメカニクスの共通原則
ボディメカニクスとは、骨格・筋・関節の働きと力学の原理を利用して、少ない力で安全に動作する技術です。看護師の腰痛予防と、患者の安全・安楽の両方を目的としています。どの体位変換にも共通する原則は次のとおりです。
- 足を前後・左右に開いて支持基底面を広くとる
- 膝を曲げて腰を落とし、重心を低くする
- 患者に近づき、患者と看護師の重心を近づける
- 腕や手先の力ではなく、下肢や体幹の大きな筋群を使う
- 体幹をねじらず、足先を動かす方向に向ける
- 持ち上げずに水平に移動させ、患者の体を小さくまとめる
これらの共通原則に加えて、動きの種類ごとに中心となる原理があります。
回転させる動き:トルクの原理
トルクは物体を回転させる働きの大きさで、「加える力の大きさ×回転軸から力を加える点までの距離」で表されます。同じ力でも、回転軸から遠い点に加えるほど回転させる働きは大きくなります。つまり、軸から離れた点に力を加えれば、小さな力で回せます。
仰臥位から側臥位にするときの手順は次のとおりです。
- 患者の膝を高く立て、両腕を胸の上で組んでもらう
- 看護師は向ける側に立ち、患者の肩と膝に手を当てて手前に引き寄せる
膝を高く立てると、力を加える膝の位置が体の回転軸(体の長軸)から離れます。その分トルクが大きくなり、軽い力で骨盤から体全体を回すことができます。腕を組み膝を立てて体をまとめると、ベッドとの接触面が少なくなり、回すときの抵抗も減ります。
滑らせる動き:摩擦力を小さくする
摩擦力は、接している面の間で動きを妨げる力です。水平移動では患者を持ち上げずにベッド上を滑らせるので、摩擦力が小さいほど小さな力で動かせます。摩擦力を小さくする方法には次のものがあります。
- 体を小さくまとめる
- スライディングシートなど滑りやすい用具を使う
- 患者に頭を上げてもらったり、膝を立てて足でベッドを押してもらったりする
看護師は支持基底面を広げ、重心を低くし、自分の重心を移動させる力で患者を引き寄せます。摩擦やずれを減らすことは、皮膚の損傷や褥瘡の予防にもつながります。
起こす動き:てこの原理
てこは、支点・力点・作用点の位置関係によって3種類に分けられます。
- 第1種:支点が力点と作用点の間にある(シーソー、はさみ、くぎ抜き)
- 第2種:作用点が支点と力点の間にある(栓抜き、一輪車)
- 第3種:力点が支点と作用点の間にある(ピンセット、肘関節の屈曲)
仰臥位から長座位にするときは、看護師が患者の肩の下に腕を入れます。そして殿部を支点として、上半身を弧を描くように起こします。支点を意識して回すことで、上半身を真上に持ち上げるよりずっと小さな力で起こせます。
正答に至る判断
各選択肢について「その体位変換で体はどう動くか」を考えると、判断できます。側臥位への変換は回転なのでトルク、水平移動は摩擦力の軽減、起き上がりはてこです。この対応に合う組合せは選択肢1だけです。臨床では、患者の体格や協力の程度に合わせて、これらの原理と用具を組み合わせます。そうすることで、患者の安楽と看護師の身体を同時に守れます。
選択肢の確認
1.仰臥位から側臥位 ― トルクの原理:正答。側臥位への体位変換は体の長軸を回転軸とする回転運動です。膝を高く立てて回転軸から離れた点に力を加えることで、トルクが大きくなり、小さな力で体を回せます。
2.仰臥位から長座位 ― 摩擦力:長座位への変換は、殿部を支点として上半身を弧を描くように起こす動きです。中心となるのはてこの原理です。摩擦力は、水平移動のときに「小さくする」ことが要点となる力です。起き上がりの動作を成り立たせる原理として組み合わせるのは誤りです。
3.ベッドの片側への水平移動 ― 力のモーメント:片側への水平移動は、体を回転させずにベッド上をそのまま横へずらす動きです。要点は摩擦力を小さくすることと、看護師の重心移動です。力のモーメントは物理学的にはトルクと同じく物体を回転させる働きを表すので、回転を伴う側臥位への変換で活用される考え方です。水平移動の原理として組み合わせるのは誤りです。
4.ベッドの頭部への水平移動 ― てこの第1種の原理:頭側への移動も水平移動の一つです。要点は次の2つです。
- 膝を立てて体をまとめ、スライディングシートの使用などで摩擦力を小さくする
- 患者に足でベッドを押してもらうなど、患者自身の力を生かす
てこの第1種は、支点が力点と作用点の間にあるシーソー型のてこです。頭側への移動を成り立たせる原理ではありません。
覚えるポイント
- 体位変換の原理は動きの種類で結び付けます。回転(側臥位)はトルク、滑らせる動き(水平移動)は摩擦力の軽減、起こす動き(長座位)はてこの原理です。
- トルク=力×回転軸からの距離です。膝を高く立てて回転軸から遠い点に力を加えると、小さな力で回せます。
- 摩擦力を減らす方法は、体を小さくまとめる、スライディングシートを使う、患者の協力を得る、の3つです。摩擦やずれの軽減は褥瘡予防にもつながります。
- てこの種類は中央に来るもので覚えます。支点が中央なら第1種(シーソー)、作用点が中央なら第2種(栓抜き)、力点が中央なら第3種(ピンセット・肘関節の屈曲)です。
- 共通原則は、支持基底面を広く、重心を低く、患者に近づく、大きな筋群を使う、体をねじらない、持ち上げず水平に動かす、です。
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