111AM040|第111回 看護師国家試験 過去問
全介助が必要な臥床患者の口腔ケアで適切なのはどれか。
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正解: 1
正答
1.スポンジブラシは水を含ませた後、絞って使用する。
この問題のポイント
自分でうがいや吐き出しができない臥床患者の口腔ケアでは、誤嚥の防止と口腔粘膜の保護が2本柱です。「全介助」「臥床」という条件から、口に入った水分や剥がれた汚れを患者自身では処理できないと読み取ることが判断の鍵になります。水分の量、頸部の角度、ケア後の保湿、舌苔の除去法を、それぞれ根拠をもって判断します。
解説
問題文から読み取る状況
「全介助」「臥床」から、次のような状態が想定されます。
- うがいや吐き出しができず、口腔内に入った水分がそのまま咽頭へ流れやすい。
- 嚥下反射や咳嗽反射が低下していることが多く、むせのない誤嚥(不顕性誤嚥)を起こしやすい。
- 経口摂取が少なかったり口が開いたままだったりするため、唾液が減って口腔が乾燥しやすい。
歯垢や舌苔には多量の細菌が含まれており、唾液と一緒に誤嚥されると誤嚥性肺炎の原因になります。臥床高齢者に口腔ケアを行うと肺炎の予防に役立つことが知られています。口腔ケアの目的は清潔の保持だけではありません。感染予防、唾液分泌と嚥下反射の促進、味覚の維持、爽快感によるQOLの向上も目的に含まれます。
誤嚥を防ぐ工夫
- 水分は最小限にする:スポンジブラシは水に浸した後、しずくが垂れない程度まで十分に絞ります。水を含んだまま口に入れると、ケアの途中で汚れを含んだ水が咽頭へ流れ込みます。
- 体位:可能であれば上体を30度以上起こし、枕などで頸部を軽く前屈させます(顎を引いた姿勢)。上体を起こせない場合は側臥位にするか顔を横に向け、水分が口角から外へ流れ出るようにします。片麻痺がある場合は健側を下にした側臥位で行います。
- 動かす方向:スポンジやブラシは奥から手前へ動かし、汚れを咽頭側へ押し込まないようにします。汚れたスポンジはこまめにすすぎ、そのつど絞り直してから使います。
- 吸引の準備:唾液や水分がたまりやすい患者では、吸引器や吸引機能付きブラシを用意し、たまったものを回収しながら進めます。
粘膜の保護と保湿
口腔粘膜や舌は傷つきやすい組織です。とくに乾燥した粘膜や、痰や剥がれた上皮が乾いてこびりついた痂皮を無理にはがすと出血します。乾燥が強いときは、先に保湿剤で湿らせて汚れをふやかしてから除去します。
唾液には自浄作用、抗菌作用、粘膜の保護作用があります。口腔が乾燥するとこれらの働きが失われ、細菌が増えやすくなります。そのため、ケアの最後は保湿剤を薄く塗り広げ、湿った状態を保ちます。前回の保湿剤が残っている場合は、取り除いてから塗り直します。
この考え方は、意識障害のある患者、経管栄養のため絶食している患者、人工呼吸器を装着している患者にも共通します。経口摂取していない患者ほど、唾液による自浄作用が落ちて口腔は汚れやすくなります。「食べていないから口腔ケアは要らない」のではなく、むしろ必要性が高いと理解しておきましょう。
選択肢の確認
1.スポンジブラシは水を含ませた後、絞って使用する。:正答。乾いたままのスポンジブラシは粘膜との摩擦が大きく、粘膜を傷つける原因になるため、湿らせてから使います。一方、水を含んだままでは口腔内に水分があふれ、うがいのできない患者では誤嚥につながります。水を含ませた後に、しずくが垂れない程度まで絞れば、粘膜を守りながら汚れを絡め取ることができ、誤嚥の危険も減らせます。
2.頸部を後屈した体位で実施する。:頸部を後ろに反らすと、口腔から咽頭・気管への通り道がまっすぐになり、気道の入口も開くため、水分や汚れが気管へ流れ込みやすくなります。口腔ケアは、頸部を軽く前屈させ顎を引いた姿勢で行います。頭部を後ろに反らす姿勢は、心肺蘇生などで舌根沈下による気道閉塞を解除する「頭部後屈あご先挙上法」で使うものです。気道を開くことが目的の手技なので、誤嚥を防ぎたい場面では逆効果になります。両者を混同しないようにしましょう。
3.終了後は口腔内を乾燥させる。:口腔粘膜は湿っていることで保護されています。乾燥すると唾液の自浄作用や抗菌作用が働かなくなり、細菌の増殖、粘膜のひび割れや出血、痂皮の形成を招き、誤嚥性肺炎の危険も高まります。終了後は保湿剤を薄く塗るなどして、湿った状態を保つのが正しい方法です。
4.舌苔は強くこすって除去する。:舌苔は、舌乳頭の間に剥がれた上皮細胞、細菌、食物残渣などが付着したものです。口臭や肺炎の原因菌のすみかになるため、除去すること自体は必要です。しかし舌の表面は傷つきやすく、強くこすると粘膜や舌乳頭を損傷し、出血や痛みを起こしたり、味覚に影響したりします。舌ブラシや湿らせたスポンジブラシを使い、奥から手前へ軽い力でなでるように動かします。嘔吐反射を誘発しないよう奥に入れすぎないことも大切です。一度で取り切ろうとせず、数回に分けて少しずつ除去します。乾いて固着している場合は、保湿剤でふやかしてから行います。
覚えるポイント
- 全介助の口腔ケアで最優先するのは誤嚥の防止です。スポンジブラシは「湿らせて、絞って」使い、奥から手前へ動かします。
- 体位は上体挙上(30度以上)に頸部前屈(顎を引く)を組み合わせます。上体を起こせなければ側臥位にするか顔を横に向け、片麻痺では健側を下にします。
- 頸部後屈は気道確保(頭部後屈あご先挙上法)のための姿勢です。誤嚥しやすくなるため、口腔ケアや食事介助では避けます。
- 口腔ケアの仕上げは保湿です。乾燥すると自浄作用と抗菌作用が低下し、細菌の増殖や粘膜の損傷を招きます。
- 舌苔や痂皮は、保湿してふやかしてから、やさしく数回に分けて除去します。
- 経口摂取していない患者ほど口腔は汚れやすく、口腔ケアの必要性は高くなります。
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