111AM041|第111回 看護師国家試験 過去問
術後1日の手術創の正常な治癒過程として正しいのはどれか。
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正解: 1
正答
1.創部の浮腫が起こる。
この問題のポイント
創傷治癒を「炎症期→増殖期→成熟期」に分け、「術後1日」がどの時期にあたるかを判断する問題です。術後1日は炎症期の早い段階で、血管透過性が高まって起こる浮腫は正常な経過です。ほかの選択肢もすべて創傷治癒で実際に起こる現象ですが、起こるのはもっと後の時期です。現象と時期を結び付けて覚えているかが問われています。
解説
問題文の手がかり
鍵となる言葉は「術後1日」と「正常な治癒過程」です。4つの選択肢はいずれも治癒過程のどこかで起こる現象です。そのため「起こるかどうか」ではなく、「術後1日の時点で起こっているか」で判断します。
創傷治癒の時期と主な現象
手術創のような急性創傷は、次の時期が少しずつ重なりながら連続して進みます。日数は目安で、教科書によって多少の幅があります。
- 止血・炎症期(受傷直後〜おおむね3〜5日)
- 受傷直後に血管が収縮し、血小板が凝集してフィブリン塊をつくり、止血します。
- 続いてヒスタミンなどの化学伝達物質によって血管が拡張し、透過性が亢進します。血漿成分や白血球が血管の外へ出るため、創部に発赤・腫脹(浮腫)・熱感・疼痛が現れます。
- 最初に好中球が集まって細菌を貪食します。その後はマクロファージが中心となり、壊死組織を処理するとともに、成長因子を放出して増殖期への移行を促します。
- 増殖期(おおむね3日〜2、3週間)
- 線維芽細胞が増えてコラーゲンを産生します。
- 血管内皮細胞が既存の血管から新しい毛細血管を伸ばします(血管新生)。
- これらが合わさって、赤く湿った顆粒状の肉芽組織ができます。
- 筋線維芽細胞による創収縮と、表皮細胞の遊走による上皮化が進みます。
- 成熟期(リモデリング期)(おおむね数週間〜数か月、1年以上)
- コラーゲンが分解と再合成を繰り返し、架橋されて線維の配列が整います。
- 瘢痕は赤みが引いて白っぽく平坦になります。
- 抗張力は徐々に増しますが、元の皮膚と同じ強さには戻りません(最大で8割程度とされます)。
術後1日の創で起きていること
術後1日は炎症期のさなかです。血管透過性の亢進で滲出液が組織間隙にたまるため、縫合創の周囲が軽く腫れます。赤み、熱感、痛みを伴うのも生体の正常な反応です。滲出液には白血球や成長因子が含まれ、創を清浄にして次の修復に備える役割があります。
縫合された一次治癒の創では、表皮細胞が創縁から遊走し、術後およそ48時間で創表面が上皮で閉じるとされます。このため、術後24〜48時間は滅菌した被覆材で創を保護し、その後は被覆を必須としない考え方がとられています。これも「術後早期の創の状態」として一緒に押さえておくとよい知識です。
看護実践での生かし方
術後早期の軽い発赤や腫脹は正常な炎症反応なので、それだけで異常と判断しません。正常であれば炎症徴候は日を追って落ち着いていきます。次のような所見があれば手術部位感染(SSI)を疑い、医師へ報告します。
- 術後数日たってから発赤・腫脹・疼痛がかえって強くなる
- 膿性の滲出液や悪臭がある
- 発熱が再び上がる
治癒を遅らせる因子も、術前・術後の観察とケアの視点として重要です。
- 低栄養(とくにたんぱく質の不足。ビタミンCや亜鉛もコラーゲン合成に関わります)
- 糖尿病による高血糖
- 副腎皮質ステロイドの使用
- 喫煙や貧血による組織の低酸素
- 肥満、感染
選択肢の確認
1.創部の浮腫が起こる。:正答。術後1日は炎症期にあたります。血管の拡張と透過性の亢進により血漿成分が組織間隙へ漏れ出し、創部が腫れます。これは発赤・熱感・疼痛とともにみられる正常な炎症反応です。
2.肉芽組織が形成される。:肉芽組織は線維芽細胞、新生毛細血管、未熟なコラーゲンなどからなる組織です。形成が進むのは、おおむね術後3日以降の増殖期なので、術後1日の現象ではありません。なお、肉芽組織がはっきり観察できるのは、組織欠損を肉芽で埋めていく二次治癒(開放創や褥瘡など)です。縫合された一次治癒の創ではわずかしかできません。
3.コラーゲンが成熟し瘢痕組織となる。:コラーゲンの再構築と瘢痕化は成熟期の現象で、術後数週間以降に始まり、1年以上かけて進みます。術後1日の時点では、コラーゲンの本格的な産生すらまだ始まっていません。成熟期の異常として、瘢痕が赤く盛り上がったまま残る肥厚性瘢痕や、創の範囲を越えて広がるケロイドも区別して覚えます。
4.血管内皮細胞が新しい血管を形成する。:血管新生は、マクロファージなどが出す成長因子の刺激で血管内皮細胞が増殖・遊走して起こります。肉芽組織の形成とともに増殖期に本格化するため、術後1日の現象ではありません。炎症期に起こる血管の変化は「既存の血管の拡張と透過性の亢進」です。「新しく血管ができること」とは区別して覚えます。
覚えるポイント
- 創傷治癒の流れは、止血・炎症期(〜3〜5日)→増殖期(3日〜2、3週間)→成熟期(数週間〜1年以上)の順です。
- 炎症期は、血管拡張と透過性亢進による浮腫、発赤・腫脹・熱感・疼痛が特徴です。細胞は好中球からマクロファージへと主役が移ります。
- 増殖期は、線維芽細胞によるコラーゲン産生、血管新生、肉芽組織の形成、上皮化、創収縮が起こる時期です。
- 成熟期は、コラーゲンが再構築されて瘢痕が白く平坦になる時期です。抗張力は増しますが、元の皮膚の強さには戻りません。
- 一次治癒の縫合創は、術後およそ48時間で上皮化します。術後早期の炎症徴候は正常ですが、数日後の増悪や膿性の滲出液はSSIを疑います。
- 治癒を遅らせる因子は、低栄養、高血糖、ステロイド、低酸素(喫煙・貧血)、肥満、感染です。
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