111AM057|第111回 看護師国家試験 過去問
発育と発達に遅れのない生後6か月の男児。BCG 接種の翌日に接種部位が赤く腫れ次第に増悪して膿がみられたため、母親は接種後4日目に医療機関に電話で相談し、看護師が対応した。児に発熱はなく、哺乳や機嫌は良好である。このときの看護師の説明で適切なのはどれか。
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正解: 2
正答
2.「速やかに来院してください」
この問題のポイント
BCG接種後の局所反応が「いつ」「どの程度」出たかを見極める問題です。通常の反応は接種後10日頃から現れます。本事例では接種翌日から発赤・腫脹が増悪し、4日目に化膿しているため、結核への既感染を示唆するコッホ現象が疑われます。全身状態が良好でも、結核感染の有無を確かめるために速やかな受診が必要だと判断できるかが問われています。
解説
問題文の手がかり
- 生後6か月:BCGの標準的な接種時期にあたり、接種は予定どおり行われています。
- 接種の翌日から発赤・腫脹があり、次第に増悪:通常の反応より明らかに早く、強い反応です。
- 接種後4日目に膿:通常であれば、まだ針痕がほとんど目立たない時期です。
- 発熱なし、哺乳・機嫌良好:全身状態は安定しており、救急搬送が必要な状況ではありません。
BCGの通常の局所反応
BCGは結核を予防する生ワクチンです。予防接種法に基づく定期接種として1歳未満に行い、標準的な接種期間は生後5か月から8か月未満です。上腕外側に管針を押し当てる経皮接種で行います。2005年以降は、事前にツベルクリン反応検査を行わず直接接種しています。
通常の局所反応の経過は次のとおりです。
- 接種後およそ10日頃から、針痕に一致して発赤や小さな膿疱が現れる
- 接種後4週間頃に最も強くなる
- その後かさぶたとなり、接種後3か月頃までに小さな瘢痕を残して治る
この時期の膿は正常な反応の一部なので、つぶしたり消毒したりせず、自然の経過にまかせます。
コッホ現象と受診の必要性
すでに結核菌に感染している人の体には、結核菌に対する細胞性免疫(遅延型過敏反応)が成立しています。そこにBCGを接種すると、接種部位に早く強い反応が起こります。典型的には次のような経過をたどり、これをコッホ現象といいます。
- 接種後10日以内(多くは数日以内)に、発赤・腫脹・針痕の化膿がみられる
- その後2〜4週間ほどで消炎し、瘢痕化する
事前のツベルクリン反応検査を省いて直接接種しているため、接種後のこの反応が既感染に気づく重要な手がかりになります。本事例の「接種翌日から発赤・腫脹」「4日目に膿」という経過は、これに合致します。
ただし、この反応だけで感染が確定するわけではありません。医師の診察と、胸部エックス線検査などの検査による確認が必要です。
速やかな受診が必要な理由は次の3点です。
- 乳児は重症化しやすい:乳児は結核に感染すると発病しやすく、粟粒結核や結核性髄膜炎などの重症型に進展しやすい特徴があります。感染が確認されれば、早期に治療や発病予防の内服を始める必要があります。
- 感染源の発見につながる:乳児への感染源は同居家族など身近な成人であることが多いです。保健所と連携した接触者の調査・健康診断により、家族内の結核患者を早く見つけることにつながります。
- 報告の仕組みがある:コッホ現象を診た医師は、保護者の同意を得て市町村長に報告する仕組みがあります。
発熱がなく哺乳や機嫌が良いことは、救急車を呼ぶ状況ではないことを示します。しかし、受診を先延ばしにしてよい理由にはなりません。電話相談では、全身状態の緊急度だけでなく、所見の背後にある疾患の可能性も考えて受診の要否を判断します。
なお、通常反応でもコッホ現象でも、接種部位はこすらず、つぶさず、絆創膏で覆わずに清潔を保ちます。膿でぬれたときは、清潔なガーゼで軽く押さえる程度にします。
選択肢の確認
1.「通常の反応です」:BCGの通常の局所反応は接種後10日頃から現れ、4週間頃に最も強くなります。接種翌日から腫れて4日目に化膿する経過は早すぎます。これを通常反応と説明すると、コッホ現象を見逃し、結核感染の確認や家族内の感染源調査が遅れてしまいます。接種後10日以降に針痕に一致した小さな発赤や膿がみられ、全身状態に問題がない場合であれば、適切な説明になります。
2.「速やかに来院してください」:正答。接種翌日からの発赤・腫脹と4日目の化膿は、コッホ現象を疑う経過で、結核にすでに感染している可能性があります。全身状態は良好なので救急対応は不要です。医師の診察と検査で感染の有無を確かめ、必要に応じて治療や家族の調査につなげるため、速やかな受診を勧めます。
3.「1週間後にまた電話をください」:このまま経過観察を続けると、結核感染の確認が少なくとも1週間遅れます。乳児は発病しやすく重症化しやすいため、この遅れの不利益は大きくなります。電話で経過を追う対応は、通常反応の範囲内で保護者が不安を感じている場合などに適したもので、既感染を疑う所見がある本事例には当てはまりません。
4.「患部をアルコール消毒してください」:BCGの接種部位は、清潔を保ちながら自然の経過にまかせるのが原則です。接種後の針痕や膿疱にアルコールを用いる必要はなく、刺激にもなるため勧められません。さらに、局所の手当てを指示するだけでは、背景にある結核感染の可能性への対応が抜け落ち、受診の機会を逃すことになります。
覚えるポイント
- BCGの通常反応:接種後約10日で針痕に一致した発赤・小膿疱が現れ、4週頃に最も強くなり、かさぶたを経て3か月頃までに小さな瘢痕となります。膿も正常反応の一部です。
- コッホ現象:接種後10日以内(多くは数日以内)に発赤・腫脹・化膿が起こり、2〜4週で消炎します。結核への既感染を疑い、速やかに受診して検査と家族の感染源調査につなげます。
- BCGの基本:生ワクチンの定期接種で、対象は1歳未満、標準は生後5か月〜8か月未満です。管針による経皮接種で、事前のツベルクリン反応検査は行わない直接接種です。
- 接種部位のケア:こすらない、つぶさない、絆創膏を貼らない、消毒しない。清潔を保ち、自然の経過にまかせます。
- その他の副反応:接種側の腋窩リンパ節腫脹(多くは自然に縮小)、まれに骨炎・骨髄炎や、免疫不全の児での全身播種性BCG感染症があります。
- 電話相談の考え方:「全身状態が良い=受診不要」ではありません。所見の出現時期や性質から隠れた疾患を考え、受診の要否を判断します。
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