111AM027|第111回 看護師国家試験 過去問
ワクチン接種後の抗体産生について正しいのはどれか。
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正解: 4
正答
4.同じワクチンを2回接種すると抗原に対する抗体の産生量が増加する。
この問題のポイント
ワクチン接種後に起こる獲得免疫(液性免疫)を、抗原提示から抗体産生、免疫記憶まで一続きで理解しているかを問う問題です。判断に必要な知識は次の4点です。
- 抗原提示細胞の種類
- 一次応答で最初に作られる抗体のクラス
- 血中で最も多い抗体のクラス
- 一次応答と二次応答の違い
「2回接種」という言葉から、免疫記憶による二次応答(ブースター効果)を思い浮かべられるかが鍵です。
解説
ワクチン接種から抗体産生までの流れ
ワクチンは、病原体やその成分を弱毒化・不活化したものを体内に入れる方法です。感染する前に獲得免疫を成立させるもので、人工能動免疫にあたります。接種後の反応はおおむね次の順に進みます。
- 接種部位で、樹状細胞などの抗原提示細胞がワクチン抗原を取り込んで分解します。
- 樹状細胞は所属リンパ節へ移動し、抗原の断片をMHCクラスII分子にのせて、ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)に提示します。
- 同じ抗原をB細胞受容体で認識したB細胞は、活性化したヘルパーT細胞の助けを受けます。B細胞は増殖して形質細胞に分化し、抗体を分泌します。
- B細胞・T細胞の一部は記憶細胞として長く体内に残ります。
一次応答と二次応答
初めて抗原に接したときの反応を一次免疫応答といいます。その抗原に反応できるリンパ球はもともと少数しかありません。そのため増殖と分化に時間がかかり、抗体が上昇するまでに数日から1〜2週間ほどの遅れがあります。
- 最初に産生される抗体はIgMです。
- その後、ヘルパーT細胞の助けでクラススイッチが起こり、IgGが遅れて増えてきます。
- 一次応答での抗体産生量は少なく、低下も比較的早いのが特徴です。
同じ抗原に再び接すると、記憶B細胞・記憶T細胞がすばやく反応します。これが二次免疫応答です。
- 抗体産生までの時間が短くなります。
- 産生量は一次応答より大幅に多くなります。
- 主体はIgGで、抗原への結合力(親和性)が高く、長く持続します。
これがブースター効果です。不活化ワクチンの多くで複数回の接種が定められているのは、二次応答を利用して十分な抗体価と長い持続を得るためです。
抗体(免疫グロブリン)の5クラス
- IgG:血中で最も多く、全体の約7〜8割を占めます。二次応答の主体です。胎盤を通過できる唯一のクラスで、新生児の受動免疫を担います。
- IgA:血中ではIgGに次いで多い抗体です。分泌型IgAとして唾液・涙・腸管などの粘膜面や母乳(特に初乳)に含まれ、粘膜での防御を担います。
- IgM:五量体で分子量が最も大きく、一次応答で最初に産生されます。胎盤は通過しません。
- IgD:主にB細胞表面にあり、抗原受容体として働きます。
- IgE:血中濃度は最も低い抗体です。肥満細胞と結合し、I型アレルギーや寄生虫に対する反応に関わります。
臨床での活用
- 特異的IgM抗体は感染初期に上昇するため、「最近の感染」を示す手がかりになります。
- 特異的IgG抗体は、既往感染や免疫の有無の判定に使われます。
- IgMは胎盤を通過しないため、臍帯血や新生児の血中でIgMが高値なら胎児自身が作った抗体と考えます。これは先天感染を疑う根拠になります。
- 追加接種の意味を保護者や本人に説明する場面でも、この知識が役立ちます。
選択肢の確認
1.ワクチン内の抗原を提示するのは好中球である。:抗原を取り込んでヘルパーT細胞に提示する抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞です。なかでも樹状細胞は、未感作(ナイーブ)T細胞を活性化できる最も重要な抗原提示細胞で、ワクチン接種後の免疫応答の起点になります。好中球は白血球の中で最も数が多く、細菌を貪食・殺菌する自然免疫の中心的な細胞です。ただし寿命が短く、抗原提示は主な役割ではありません。「貪食する細胞」という共通点から、マクロファージと取り違えないようにします。
2.抗原に対して最初に産生される抗体は IgA である。:一次免疫応答で最初に産生される抗体は、五量体のIgMです。IgAは分泌型IgAとして粘膜面や母乳に多く含まれる抗体で、「粘膜免疫」「初乳に含まれる抗体」を問う問題で正答になるクラスです。「最初に作られる抗体」とは区別して覚えます。
3.抗原に対して血中濃度が最も高くなる抗体は IgM である。:血中濃度が最も高い抗体はIgGで、免疫グロブリン全体の約7〜8割を占めます。IgMは一次応答で最初に出現しますが、濃度はIgGより低く、しかも速やかに低下します。「最初に出るのはIgM」「最も多いのはIgG」を混同させる選択肢です。
4.同じワクチンを2回接種すると抗原に対する抗体の産生量が増加する。:正答。1回目の接種で記憶B細胞・記憶T細胞が形成されます。そのため同じワクチンを再び接種すると二次免疫応答が起こり、一次応答より速く、多量の、親和性の高いIgGが産生されます。定期接種では、この効果を得るためにワクチンごとに接種回数と間隔が定められています。
覚えるポイント
- 抗原提示細胞は樹状細胞・マクロファージ・B細胞です。最も重要なのは樹状細胞で、好中球は貪食・殺菌が主な役割です。
- 一次応答は「遅い・少ない・IgMが先行」、二次応答は「速い・多い・IgG主体・親和性が高い・持続が長い」です。追加接種はこの二次応答(ブースター効果)を利用しています。
- 抗体のクラスの特徴:血中で最多はIgG(約7〜8割)、胎盤を通過するのはIgGのみ、母乳・粘膜は分泌型IgA、最大で最初に出るのはIgM、I型アレルギーはIgEです。
- 特異的IgMの上昇は最近の感染を示します。臍帯血・新生児のIgM高値は先天感染を疑います。
- 免疫の分類:ワクチンは人工能動免疫、γグロブリン製剤は人工受動免疫、胎盤経由のIgG・母乳のIgAは自然受動免疫、感染による免疫は自然能動免疫です。
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