111AM026|第111回 看護師国家試験 過去問
正常な心臓で心拍出量が減少するのはどれか。
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正解: 2
正答
2.大動脈圧の上昇
この問題のポイント
心拍出量を決める4つの因子(前負荷・後負荷・心収縮力・心拍数)が増えたとき、心拍出量がどちらへ動くかを問う問題です。「正常な心臓で」という条件は、フランク・スターリングの法則が正常に働き、心拍数の変化にも対応できる心臓を想定していることを示しています。4つのうち、増えると心拍出量を減らす方向に働くのは後負荷だけです。大動脈圧は後負荷を決める代表的な因子です。
解説
心拍出量の式と4つの規定因子
心拍出量は、1分間に心室から送り出される血液量です。心拍出量=1回拍出量×心拍数で表されます。安静時の成人では1回拍出量が約70mL、心拍数が約70回/分で、心拍出量はおよそ5L/分になります。1回拍出量を決めるのは前負荷・後負荷・心収縮力の3つで、これに心拍数を加えた4つが心拍出量の規定因子です。
- 前負荷:収縮直前(拡張終期)に心室にかかる負荷で、拡張終期容積(心室の充満量)に相当します。静脈還流量や循環血液量で決まります。
- 後負荷:心室が血液を駆出するときに打ち勝たなければならない抵抗です。左心室では、大動脈圧(動脈圧)、末梢血管抵抗、大動脈弁狭窄などで決まります。
- 心収縮力:前負荷や後負荷とは別に、心筋そのものが持つ収縮の強さです。交感神経(β1受容体)刺激、カテコールアミン、強心薬で高まります。
- 心拍数:交感神経の働きで増え、副交感神経(迷走神経)の働きで減ります。
大動脈圧が上がると心拍出量が減る理由
左心室が血液を送り出すには、心室内圧が大動脈圧を上回り、大動脈弁を押し開く必要があります。大動脈圧が高いと、弁が開くまでの等容性収縮期に多くの時間とエネルギーを使います。その分、血液を駆出する時間と量が減り、収縮終期に心室内に残る血液が増えます。つまり後負荷が増すと、同じ前負荷・同じ収縮力でも1回拍出量が減り、心拍出量が減少します。
加えて、大動脈弓や頸動脈洞の圧受容器が圧の上昇を感知すると、圧受容器反射が起こります。迷走神経の活動が高まり、交感神経の活動が抑えられるため、心拍数と収縮力が低下します。この反射も心拍出量を減らす方向に働きます。
ここで混同しやすいのが、血圧(平均動脈圧)=心拍出量×末梢血管抵抗という関係です。この式から「心拍出量が増えれば血圧が上がる」ことは正しく言えます。しかし本問は逆の視点で、「心臓の出口側の圧が高いと心臓は血液を送り出しにくくなる」という後負荷の考え方で解きます。因果の向きを取り違えないことが大切です。
臨床での意味
高血圧や大動脈弁狭窄症では、左心室に慢性的な後負荷がかかります。その結果、心室壁が厚くなる求心性肥大を経て、心不全に至ることがあります。心不全の治療では、ACE阻害薬やARBなどの血管拡張作用を持つ薬で後負荷を下げ、心臓が血液を送り出しやすくします。一方、利尿薬や硝酸薬は主に前負荷を下げてうっ血を軽くします。看護では、血圧・脈拍・尿量・末梢の冷感・浮腫・呼吸状態を合わせて観察し、どの負荷が問題になっているかを考えることが、観察や援助の根拠になります。
選択肢の確認
1.心拍数の増加:心拍出量は1回拍出量と心拍数の積なので、正常な心臓では心拍数が増えると心拍出量も増えます。運動時に交感神経が働いて心拍数が上がり、心拍出量が安静時の数倍に達するのはこのためです。ただし極端な頻脈では、拡張期が短くなって心室に血液が十分に充満しません。すると1回拍出量が大きく減り、かえって心拍出量が減ることがあります。本問は正常な心臓での一般的な反応を問うているため、減少する選択肢には当たりません。
2.大動脈圧の上昇:正答。大動脈圧は左心室の後負荷を決める主な因子です。圧が高いほど、大動脈弁を開くのに大きな心室内圧が必要になり、駆出できる血液量が減ります。その結果、1回拍出量が減って心拍出量が減少します。圧受容器反射によって心拍数や収縮力が抑えられることも、減少の方向に働きます。
3.静脈還流量の増加:心臓へ戻る血液が増えると、拡張終期容積(前負荷)が増えて心筋が引き伸ばされます。フランク・スターリングの法則により、正常な心臓は引き伸ばされた分だけ強く収縮するため、1回拍出量と心拍出量は増えます。戻ってきた血液をそのまま送り出すこの仕組みによって、左右の心室の拍出量のつり合いも保たれています。一方、心不全で心筋がすでに過度に伸展している場合は、この反応が弱くなります。前負荷が増えても拍出量はあまり増えず、うっ血を招きやすくなります。正常心と不全心のこの違いを押さえておくと理解が深まります。
4.心筋収縮力の上昇:前負荷や後負荷が同じでも、心筋の収縮が強くなれば心室からより多くの血液を送り出せます。そのため1回拍出量が増え、心拍出量は増加します。心筋収縮力を高める作用(陽性変力作用)の代表例は、交感神経のβ1受容体刺激、アドレナリンやドブタミンなどのカテコールアミン、ジギタリスです。心不全やショックの治療で強心薬を用いるのは、この作用で心拍出量を確保するためです。
覚えるポイント
- 心拍出量=1回拍出量×心拍数です。安静時の成人で約5L/分(1回拍出量約70mL×心拍数約70回/分)になります。
- 1回拍出量の規定因子は前負荷・後負荷・心収縮力です。前負荷と収縮力が増えると拍出量は増え、後負荷が増えると拍出量は減ります。
- 前負荷は拡張終期容積(静脈還流量・循環血液量)、後負荷は駆出時の抵抗(大動脈圧・末梢血管抵抗・大動脈弁狭窄)です。
- フランク・スターリングの法則:心筋は引き伸ばされるほど強く収縮します。正常な心臓では、静脈還流が増えると拍出量も増えます。
- 心拍数が増えると基本的に心拍出量は増えます。ただし極端な頻脈では、拡張期の短縮で充満不足になり減少します。
- 心不全の治療では、血管拡張薬で後負荷を、利尿薬などで前負荷を下げ、強心薬で収縮力を高めます。
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