112PM012|第112回 看護師国家試験 過去問

心臓の刺激伝導系で最初の興奮部位はどれか。

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正解: 1

正答

1.洞房結節

この問題のポイント

心臓の刺激伝導系を構成する部位と、興奮が伝わる順序を問う基礎問題です。「最初の興奮部位」とは、自ら興奮する能力(自動能)が最も高く、心拍のリズムを決めるペースメーカーのことです。洞房結節→房室結節→His束→右脚・左脚→Purkinje線維という順序を、各部位の位置と役割とあわせて覚えておけば確実に解けます。

解説

刺激伝導系のしくみ

心臓は、神経からの指令がなくても自ら周期的に興奮します。この性質を自動能といいます。心筋には、収縮を担う固有心筋と、興奮を生み出して伝える特殊心筋があります。特殊心筋がつくる経路が刺激伝導系で、興奮を心房から心室へ、決まった順序とタイミングで伝えます。

興奮が伝わる順序と、各部位の役割は次のとおりです。

  • 洞房結節:右心房の上大静脈開口部付近にあります。細胞の膜電位が静止せず、少しずつ脱分極して自ら興奮します(歩調取り電位)。ここで興奮が始まります。
  • 心房筋:興奮が左右の心房に広がり、心房が収縮します。心電図のP波にあたります。
  • 房室結節:心房中隔の下部、冠状静脈洞の開口部付近にあります。伝導速度が最も遅い部位です。この遅れがあるため、心房が血液を心室へ送り終えてから心室が収縮できます。
  • His束:心房と心室を電気的に隔てる線維性の組織を貫く経路です。正常では、心房と心室をつなぐ唯一の電気的な通り道です。
  • 右脚・左脚:心室中隔で左右に分かれます。
  • Purkinje線維:心内膜下に網目状に広がり、伝導速度が最も速い部位です。心室全体をほぼ同時に興奮させます。心電図のQRS波にあたります。

なぜ洞房結節が「最初」なのか

刺激伝導系の各部位はどれも自動能をもっています。ただし、固有の興奮頻度は上流ほど高くなります。目安は、洞房結節が毎分60〜100回程度、房室接合部が40〜60回程度、心室(Purkinje線維)が20〜40回程度です。

最も速く興奮する洞房結節の興奮が下流に届くと、下流の部位は自分で興奮する前に興奮させられます。そのため、正常では洞房結節が心臓全体の歩調取り(ペースメーカー)になります。洞房結節から始まる正常なリズムを洞調律といいます。

心拍数を調節する自律神経も、主に洞房結節に働きます。交感神経は興奮頻度を上げ、迷走神経(副交感神経)は下げます。

臨床での活かし方

上流の部位が働かなくなったり、興奮が途中で伝わらなくなったりすると、下流の部位が自分の頻度で興奮して心停止を防ぎます。これを補充調律といいます。ただし下流ほど頻度が低いため、徐脈になります。

  • 洞不全症候群:洞房結節の機能が低下して高度の徐脈や心停止が起こり、めまいや失神を招きます。
  • 完全房室ブロック:心房の興奮が心室に伝わらず、心房と心室が別々に興奮します。心室は、ブロック部位より下流から出る遅い補充調律で動きます。ブロックが房室結節のレベルにあれば、His束近傍の房室接合部から毎分40〜60回程度の補充調律(QRS幅は狭い)が出ます。His束より下位でブロックされていれば、心室から毎分20〜40回程度の補充調律(QRS幅は広い)となり、より高度な徐脈になります。脳の血流が不足して意識を失うことがあり、これをAdams-Stokes発作といいます。

いずれもペースメーカー植込みの代表的な適応です。心電図モニターを観察するときは、次の点を確認します。

  • P波があるか
  • P波の後にQRS波が一定の間隔で続くか
  • QRS波の幅が狭いか広いか

これが、刺激伝導系のどこに異常があるかを考える第一歩になります。

選択肢の確認

1.洞房結節:正答。右心房の上大静脈開口部付近にあり、刺激伝導系の中で固有の興奮頻度が最も高い(毎分60〜100回程度)部位です。そのため、心臓全体の興奮の起点となるペースメーカーです。ここから始まる正常なリズムが洞調律で、心電図ではP波がQRS波に先行する形で確認できます。

2.房室結節:心房を伝わってきた興奮を受け取って心室側へ中継する部位であり、興奮の出発点ではありません。伝導速度が最も遅く、心房の収縮と心室の収縮の間に時間差をつくります。この時間はPQ間隔(正常0.12〜0.20秒)に反映されます。房室接合部には自動能があり、選択肢1が働かないときや、この部位で完全房室ブロックが起きたときには、毎分40〜60回程度の補充調律(接合部調律)を生じます。「洞房」と「房室」は字面が似ているので、取り違えに注意します。

3.His〈ヒス〉束:選択肢2から興奮を受け取り、心房と心室を隔てる線維性の組織を貫いて心室中隔へ伝える経路です。伝導の順序では3番目にあたります。心室中隔の上部で右脚と左脚に分かれます。正常ではこの経路が心房と心室をつなぐ唯一の通り道です。WPW症候群では、これとは別の副伝導路(Kent束)があるため、心室の一部が早く興奮します。

4.Purkinje〈プルキンエ〉線維:右脚・左脚の末端から心内膜下に広がり、心室筋へ興奮を伝える刺激伝導系の最終部位です。伝導速度が最も速く、心室全体をほぼ同時に収縮させます。自動能はありますが、固有の頻度は毎分20〜40回程度と最も低い部位です。上流からの興奮が届かない場合(選択肢3より下位での完全房室ブロックなど)に、心室由来の補充調律を担います。

覚えるポイント

  • 伝導の順序:洞房結節→心房筋→房室結節→His束→右脚・左脚→Purkinje線維→心室筋
  • 固有の興奮頻度:洞房結節(毎分60〜100回)>房室接合部(40〜60回)>心室(20〜40回)。上流ほど速く、最も速い洞房結節がペースメーカーになる
  • 伝導速度:房室結節が最も遅く(心房と心室の収縮の時間差をつくる)、Purkinje線維が最も速い(心室を同時に収縮させる)
  • 心電図との対応:P波=心房の興奮、PQ間隔=房室伝導を含む時間(正常0.12〜0.20秒)、QRS波=心室の興奮、T波=心室の再分極
  • 補充調律の起源はブロックの部位で決まる:房室結節レベルなら接合部調律(QRS幅が狭い、40〜60回)、His束より下位なら心室調律(QRS幅が広い、20〜40回)
  • 臨床:洞不全症候群や完全房室ブロック→高度徐脈→失神(Adams-Stokes発作)→ペースメーカー植込みの適応

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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