112PM011|第112回 看護師国家試験 過去問

副交感神経の作用で正しいのはどれか。

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正解: 4

正答

4.消化液分泌の促進

この問題のポイント

副交感神経がどのように働くかを問う問題です。交感神経は「闘争か逃走(fight or flight)」、副交感神経は「休息と消化(rest and digest)」に働く、という全体像をつかむことが鍵になります。この全体像があれば、各選択肢の変化が緊急時と安静時のどちらに役立つかで判断できます。選択肢1〜3はいずれも交感神経が優位なときの反応です。

解説

自律神経の二重支配と拮抗支配

自律神経は、意思とは関係なく内臓・血管・腺の働きを調節する神経で、交感神経と副交感神経から成ります。多くの臓器は両方の神経から支配を受けています(二重支配)。そして、一方が促進すればもう一方は抑制する、というように反対の方向に働きます(拮抗支配)。

交感神経は、闘う・逃げるといった緊急事態に備えて、全身の活動力を高める方向に働きます。骨格筋や脳に酸素とブドウ糖を届けるために、次のような変化を起こします。

  • 心拍数と心収縮力を増やす
  • 気管支を広げる
  • 血糖を上げる
  • 当面は急がない消化活動を抑える

副交感神経は、安静時にエネルギーを蓄え、体を回復させる方向に働きます。消化管の運動と消化液の分泌を促し、心拍数を下げ、瞳孔を小さくします。

副交感神経の構造と伝達物質

  • 起始:脳幹から出る4つの脳神経(動眼神経・顔面神経・舌咽神経・迷走神経)と、仙髄(S2〜S4、骨盤内臓神経)から出ます。これを「頭仙系」とよびます。交感神経は胸髄・腰髄から出る「胸腰系」です。
  • 支配域:迷走神経が胸腹部の臓器の大部分を支配します。下行結腸より先の消化管、膀胱、生殖器は骨盤内臓神経が担います。
  • 伝達物質:副交感神経は節前線維・節後線維ともにアセチルコリンを放出し、効果器ではムスカリン受容体に作用します。交感神経の節後線維はノルアドレナリンを放出します(汗腺だけは例外でアセチルコリン)。

器官ごとの作用

  • 眼:副交感神経は瞳孔括約筋を収縮させて縮瞳を起こします。交感神経は瞳孔の散大筋を収縮させて散瞳を起こします。
  • 気管支:副交感神経は気管支平滑筋を収縮させ、気道分泌を増やします。交感神経はβ2受容体を介して気管支を広げます。
  • 心臓:副交感神経(迷走神経)は洞結節の興奮頻度を下げて心拍数を減らし、房室伝導も遅くします。交感神経はβ1受容体を介して心拍数と収縮力を高めます。
  • 消化管:副交感神経は蠕動運動を高め、唾液・胃液・膵液の分泌を促します。交感神経はこれらを抑えます(唾液腺では、交感神経刺激で少量の粘稠な唾液が出ます)。
  • 膀胱:副交感神経は排尿筋を収縮させ、内尿道括約筋を弛緩させて排尿を促します。交感神経は蓄尿の方向に働きます。
  • 交感神経のみが支配する器官:汗腺、大部分の血管、副腎髄質、立毛筋は副交感神経の支配を受けません。

看護実践とのつながり

この対応関係を理解しておくと、薬の副作用や急変時の症状を暗記に頼らず導けます。

  • 抗コリン薬(アトロピン、ブチルスコポラミンなど):副交感神経の働きを遮断するため、口渇、便秘、尿閉、散瞳、頻脈が起こります。眼圧上昇や尿閉を悪化させるおそれがあるので、緑内障や前立腺肥大症の既往を確認します。検査の前処置で用いる際にも既往の確認が必要です。
  • 有機リン中毒:アセチルコリンを分解する酵素が阻害され、アセチルコリンが過剰になります。その結果、縮瞳、徐脈、流涎、気道分泌の増加、下痢といった副交感神経優位の症状が出ます。
  • 迷走神経反射:採血時の緊張や痛み、排便時のいきみなどで副交感神経が急に優位になり、徐脈と血圧低下から失神に至ることがあります。

選択肢の確認

1.瞳孔散大:瞳孔を広げるのは交感神経の作用で、瞳孔の散大筋を収縮させて散瞳を起こします。副交感神経(動眼神経)は瞳孔括約筋を収縮させて縮瞳を起こすので、この選択肢は逆の作用です。恐怖や興奮で瞳孔が開くのは交感神経が優位になった反応です。抗コリン薬の副作用で散瞳がみられるのは、副交感神経の働きが遮断されるためです。

2.気管支拡張:気管支を広げて空気の通り道を確保するのは、交感神経(β2受容体)の作用です。副交感神経(迷走神経)は反対に気管支平滑筋を収縮させ、気道分泌を増やします。喘息発作でβ2刺激薬を吸入するのは、交感神経側の作用を利用した治療です。COPDで吸入抗コリン薬を使うのは、副交感神経による気管支の収縮を遮断するためです。治療法から逆にたどっても判断できます。

3.心拍数の増加:心拍数を上げて心拍出量を高めるのは、交感神経(β1受容体)の作用です。副交感神経は迷走神経を介して洞結節の興奮頻度を下げ、心拍数を減らします。運動や強い不安で頻脈になるのは交感神経優位の反応です。迷走神経反射やアセチルコリン過剰で徐脈になるのは副交感神経優位の反応です。このように対比して覚えます。

4.消化液分泌の促進:正答。副交感神経は顔面神経・舌咽神経・迷走神経などを介して唾液・胃液・膵液の分泌を促し、消化管の蠕動運動も高めます。食後にくつろいでいるときに消化が進むのは、副交感神経が優位な「休息と消化」の状態だからです。反対に、交感神経は消化液の分泌と消化管の運動を抑えます。そのため、強い緊張やストレスのもとでは口渇や食欲低下が起こります。

覚えるポイント

  • 交感神経(闘争か逃走):散瞳、気管支の拡張、心拍数増加・血圧上昇、血糖上昇、消化管運動と消化液分泌の抑制、蓄尿
  • 副交感神経(休息と消化):縮瞳、気管支の収縮と分泌増加、心拍数減少、消化管運動と消化液分泌の促進、排尿(排尿筋の収縮)
  • 副交感神経は頭仙系(動眼・顔面・舌咽・迷走神経とS2〜S4)で、迷走神経が胸腹部臓器の大部分を支配します。伝達物質はアセチルコリン(効果器ではムスカリン受容体)です。
  • 汗腺、大部分の血管、副腎髄質、立毛筋は交感神経のみの支配で、二重支配の例外です。
  • 抗コリン薬の副作用(口渇・便秘・尿閉・散瞳・頻脈)は、副交感神経の作用の裏返しとして導けます。緑内障と前立腺肥大症では注意が必要です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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