111AM117|第111回 看護師国家試験 過去問
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。Aさん(73歳、女性)は夫(73歳)と2人暮らし。6年前に Parkinson〈パーキンソン〉 Parkinson disease 病と診断され、レボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉重症度分類のステージⅢ、要介護1である。夫が付き添い神経内科外来に月1回、杖歩行で通院している。外来受診のとき、Aさんは足がすくんで転びやすくなったことを主治医に相談し、レボドパ〈L-dopa〉を1日4回に増量して様子を見ることになった。Aさんと夫は薬の副作用〈有害事象〉について外来看護師に尋ねた。3か月後、Aさんは「夫は家事を楽しんでいるようで助かっていますが、友人と外出したいと言っています。私も最近は転ぶこともなくなったので、身体を動かしたり、レクリエーションに参加してみたいです」と訪問看護師に話した。訪問看護師がAさんに提案するサービスで最も適切なのはどれか。
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正解: 1
正答
1.通所介護
この問題のポイント
要介護1のParkinson病の女性に対し、本人と介護者の両方の希望をかなえる介護保険サービスを選ぶ問題です。判断の手がかりは3つあります。本人の「身体を動かしたり、レクリエーションに参加してみたい」という言葉、夫の「友人と外出したい」という言葉、そして「転ぶこともなくなった」という現在の身体状況です。居宅サービスごとの目的と対象を知っていれば、両方の希望を一つで満たせるサービスを選べます。
解説
事例から読み取ること
判断に必要な情報を整理します。
- 本人の状態:73歳の女性で、Parkinson病と診断されて6年です。Hoehn-Yahr重症度分類のステージⅢ、要介護1で、杖歩行で通院しています。
- 症状の経過:すくみ足で転びやすくなり、レボドパが1日4回に増量されました。1か月後(問116の場面)には、いつもと違う時間に入浴して転倒したことがあり、訪問看護が導入されています。3か月後には「最近は転ぶこともなくなった」と話しており、運動症状は改善して安定していると判断できます。
- 本人の希望:「身体を動かしたり、レクリエーションに参加してみたい」と述べており、活動と社会参加への意欲がはっきり表れています。
- 介護者の状況:Aさんから見て、夫は家事を楽しんでいるようです。そのため、家事の代行を求める必要性は低いと考えられます。一方で夫は「友人と外出したい」と言っており、介護から離れて自分の時間をもつこと(レスパイト)を求めています。
Hoehn-Yahr重症度分類のステージⅢは、両側性の症状に姿勢反射障害(突進現象など)が加わった段階です。活動はある程度制限されますが、日常生活はおおむね自立しています。ステージⅣでは日常生活に介助が必要になり、ステージⅤでは車椅子や臥床が中心の生活になります。Aさんは外出も可能な段階にあり、自宅の外で活動できる力を生かすことが目標になります。
通所介護の目的
通所介護(デイサービス)は、要介護者がデイサービスセンターなどに日帰りで通うサービスです。送迎、入浴・排泄・食事の支援、健康状態の確認、機能訓練指導員による機能訓練、レクリエーションなどを受けられます。対象は要介護1〜5の人で、要介護1のAさんは利用できます。要支援の人は、介護予防・日常生活支援総合事業の通所型サービスを利用します。通所介護の目的は、次の3つに整理できます。
- 心身機能の維持
- 社会的孤立感の解消
- 家族の身体的・精神的負担の軽減
本人の活動・交流と、介護者の休息を同時に支えられる点が、このサービスの大きな特徴です。
Parkinson病の療養と活動
Parkinson病では、薬物療法に加えて運動や身体活動を続けることが大切です。活動量が落ちると、筋力低下や関節拘縮などの廃用が進み、歩行障害がさらに悪化しやすくなります。また、抑うつや意欲低下などの非運動症状もみられます。そのため、他者と交流して楽しめる場をもつことは、閉じこもりの予防にもつながります。
ただし姿勢反射障害は残っており、入浴時に転倒した経過もあるため、転倒の危険が消えたわけではありません。送迎があり、職員の見守りのもとで体を動かしたり入浴したりできる環境は、安全面でも適しています。実際に利用する際は、次の点を通所先と共有しておくと安心です。
- 服薬時刻
- 薬の効果が切れて動きにくくなる時間帯(ウェアリング・オフ)
- すくみ足が出やすい場面
時間帯によって動きやすさが変わること(ADLの日内変動)を踏まえれば、動きやすい時間帯に活動や入浴を組み立てられます。
正答に至る判断
Aさんの希望は、自宅の外で身体を動かし、人と交流して楽しむことです。夫の希望は、介護から離れて友人と外出する時間をもつことです。自宅にサービス提供者が来る訪問系のサービスでは、Aさんが望むレクリエーションや他の利用者との交流の場は得られません。宿泊を伴う短期入所は、日常的な活動の場としては一時的です。したがって、日帰りで通い、その間に夫が自由に過ごせる通所介護が最も適しています。
訪問看護師が提案したあとは、介護支援専門員(ケアマネジャー)と連携し、ケアプランに位置づけて利用につなげます。なお実際の支援では、リハビリテーションを主目的とする通所リハビリテーション(デイケア)も候補になりますが、この設問の選択肢にはありません。
選択肢の確認
1.通所介護:正答。日帰りで施設に通い、送迎、機能訓練、レクリエーション、入浴・食事などの支援を受けるサービスです。身体を動かしたい、レクリエーションに参加したいという本人の希望に直接こたえられます。他の利用者との交流を通じて、社会参加の場にもなります。さらに、Aさんが通っている間は夫が友人と外出する時間をもてます。介護者のレスパイトとしても働くため、双方の希望を一つで満たせます。
2.訪問介護:ホームヘルパーが自宅を訪れ、入浴・排泄・食事などの身体介護や、調理・掃除・洗濯などの生活援助を行うサービスです。自宅での生活を支える支援が中心で、レクリエーションに参加したり他の利用者と交流したりする場にはなりません。そのため、本人の希望はかなえられません。また、夫は家事を楽しんで担っています。同居家族がいる場合の生活援助は、原則として家族が障害や疾病などで家事を行うことが困難な場合に限られます。したがって、現時点で必要性は低いといえます。独居の人や、介護者が家事を担えない世帯で検討されるサービスです。
3.訪問入浴介護:自宅に浴槽を持ち込み、看護職員と介護職員が入浴を介助するサービスです。寝たきりなどで、自宅の浴槽や通所先での入浴が難しい人が対象になります。Aさんは杖歩行ができます。1か月後にいつもと違う時間に入浴して転倒したことはありましたが、3か月後には「最近は転ぶこともなくなった」と話しています。入浴時の転倒は、動きやすい時間帯に入浴するなど、ADLの日内変動に合わせた工夫で予防を図る課題です。自宅の浴槽での入浴が難しい状態ではないため、このサービスの対象には当たりません。また、身体を動かしたい、交流したいという本人の希望にも、夫の外出の希望にもつながりません。臥床中心となるステージⅤのような状態で検討するサービスです。
4.短期入所生活介護:特別養護老人ホームなどに短期間宿泊し、日常生活上の世話や機能訓練を受けるサービスです。介護者の病気、冠婚葬祭、旅行などで一時的に在宅介護ができないときや、介護者の休息のために使われます。夫の休息には役立ちますが、夫が望んでいるのは友人との外出です。Aさんが泊まりがけで家を離れる必要はありません。また、本人が求める継続的な運動やレクリエーションの場としては、一時的な利用にとどまります。したがって、最も適切とはいえません。
覚えるポイント
- 通所介護(デイサービス)の目的は、心身機能の維持、社会的孤立感の解消、家族の負担軽減の3つです。本人の活動・交流と介護者のレスパイトを同時に満たせます。対象は要介護1〜5です。
- 通所リハビリテーション(デイケア)は、介護老人保健施設や病院・診療所などで、医師の指示のもとリハビリテーションを行うサービスです。通所介護との違いとして押さえておきます。
- 訪問介護は身体介護と生活援助が中心です。同居家族がいる場合の生活援助は、家族が家事を行うことが困難な場合などに限られます。
- 訪問入浴介護は、寝たきりなどで自宅の浴槽や通所先での入浴が難しい人が対象です。原則として看護職員1人と介護職員2人で訪問します。
- 短期入所生活介護は宿泊を伴う一時的な利用で、介護者の不在時や休息のために使います。保険給付の対象となる連続利用は30日までで、31日目以降は給付されません。
- Hoehn-Yahr重症度分類では、ステージⅢで姿勢反射障害が加わり、ステージⅣで日常生活に介助が必要、ステージⅤで車椅子・臥床中心となります。指定難病の医療費助成は、原則としてステージⅢ以上かつ生活機能障害度Ⅱ度以上が対象です。
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