111AM116|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み115〜117の問いに答えよ。Aさん(73歳、女性)は夫(73歳)と2人暮らし。6年前に Parkinson〈パーキンソン〉 Parkinson disease 病と診断され、レボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉重症度分類のステージⅢ、要介護1である。夫が付き添い神経内科外来に月1回、杖歩行で通院している。外来受診のとき、Aさんは足がすくんで転びやすくなったことを主治医に相談し、レボドパ〈L-dopa〉を1日4回に増量して様子を見ることになった。Aさんと夫は薬の副作用〈有害事象〉について外来看護師に尋ねた。1か月後の外来受診のときに、Aさんは「いつもと違う時間に入浴したら転んでしまった。怪我をしなくてよかった」と主治医に話した。主治医から勧められ、Aさんは訪問看護を週に1回利用することになった。今後Aさんが安全な入浴をするために訪問看護師がアセスメントする内容で最も優先するのはどれか。

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正解: 4

正答

4.日常生活動作〈ADL〉の日内変動

この問題のポイント

パーキンソン病でレボドパを長く内服し、最近1日4回に増量された患者が「いつもと違う時間に入浴したら転んだ」と話している場面です。浴室などの環境は普段と同じで、違ったのは時間帯だけという点が最大の手がかりです。ここから薬効の変動(ウェアリングオフ現象)による動作能力の日内変動を思い浮かべられるかが問われています。安全な入浴を計画するには、まず「1日のうちいつなら安全に動けるのか」を把握することが優先されます。

解説

事例から読み取る情報

  • 73歳女性。パーキンソン病と診断されて6年が経ち、レボドパを内服している
  • ホーエン・ヤール重症度分類ステージⅢ。姿勢反射障害が出現し、転倒しやすい段階である
  • すくみ足で転びやすくなったため、レボドパが1日3回から4回に増量された
  • 1か月後に「いつもと違う時間に入浴したら転んだ」と話した。怪我はなかった
  • 同じ73歳の夫と2人暮らしで、要介護1、杖歩行である

レボドパ長期内服と日内変動

レボドパは脳内でドパミンに変換され、不足したドパミンを補います。パーキンソン病治療の中心となる薬です。治療開始から数年は効果が安定しています。しかし長期内服に伴って1回の服用で効果が続く時間が短くなり、次の服用前に症状が悪化するようになります。これをウェアリングオフ現象といいます。

薬が効いている時間(オン)には比較的動けても、効果が切れた時間(オフ)には無動・筋固縮・すくみ足・姿勢反射障害が強まります。そのため転倒の危険が急に高まります。服用回数を増やして1回量を分けることは、効果の切れ目を減らすための代表的な調整です。Aさんの増量もこの流れと考えられます。ただし増量後もオンとオフの時間帯は残り、服用時刻や食事の影響でも変わります。

さらに、パーキンソン病では自律神経症状として起立性低血圧が起こりやすく、レボドパの副作用としても起立性低血圧があります。入浴すると温熱で末梢血管が広がり、血圧が下がりやすくなります。そのため浴槽から立ち上がるときなどにふらつきが起こりやすくなります。動きやすさだけでなく、立ちくらみが1日のどの時間帯に出やすいかも合わせて確認します。

正答に至る判断

Aさんはこれまで同じ浴室で入浴しても転んでいませんでした。転倒したのは「いつもと違う時間」に入浴したときです。浴室の構造や動線は普段と変わらないので、原因として最も考えやすいのは時間帯による身体状況の違い、つまり薬効が切れた時間帯に入浴したことです。したがって訪問看護師がまず把握すべきなのは、服薬時刻と、1日の中でいつ動きやすく、いつ動きにくいかというADLの日内変動です。

具体的には、本人と夫に症状日誌をつけてもらいます。記録するのは、服薬時刻、動きやすい時間帯と動きにくい時間帯、すくみ足や立ちくらみが出た時刻などです。これを訪問時の観察と合わせて評価します。そのうえで、薬が効いて動きやすく、夫の見守りも得られる時間帯に入浴を設定します。

手すり、滑り止め、シャワーチェアなどの環境整備は、その次に検討します。要介護認定を受けているAさんは、介護保険の住宅改修や特定福祉用具購入(入浴補助用具)を利用できます。在宅療養では「いつ危ないか」を先に押さえ、そのうえで「どこが危ないか」を整えるという順序が、転倒予防の実践に役立ちます。

選択肢の確認

1.浴室の床の素材:滑りやすい床材は入浴中の転倒要因になるため、住環境の評価項目として大切です。しかしAさんは普段と同じ浴室で入浴しており、転んだときも床の条件は変わっていません。床材を改善しても、薬効が切れて姿勢反射障害やすくみ足が強い時間帯に入浴すれば危険は残ります。そのため日内変動の把握より優先度は下がります。入浴時間を決めた後に、滑り止めマットや住宅改修を検討する段階で評価する内容です。

2.居室から浴室までの距離:移動距離、廊下の手すり、段差の有無は、杖歩行のAさんの移動負担を知るのに役立ちます。すくみ足は歩き始め、方向転換、狭い場所や出入口で起こりやすいため、動線を確認する意味はあります。ただし距離は時間帯によって変わりません。普段は同じ動線で転ばずに入浴できていたことから、今回の転倒を説明する要因としては弱く、最優先にはなりません。

3.転倒による打撲痕の状態:高齢者が転倒した後に、外傷や骨折の有無を観察すること自体は必要です。しかしAさんは「怪我をしなくてよかった」と話しており、設問が問うているのは「今後」の安全な入浴のためのアセスメントです。打撲痕は起きてしまった転倒の結果を評価する情報で、次の転倒を防ぐ計画には直接つながりません。そのため優先度は低くなります。

4.日常生活動作〈ADL〉の日内変動:正答。レボドパを長く内服していると、ウェアリングオフ現象によって薬効が切れた時間帯に無動、すくみ足、姿勢反射障害が強まります。時間帯だけが違う入浴で転倒したという経過から、服薬時刻と動作能力の変動を把握することが必要です。そのうえで動きやすい時間帯に入浴を計画することが、今後の転倒予防に最も直結します。

覚えるポイント

  • ホーエン・ヤール重症度分類:Ⅰは症状が片側のみ、Ⅱは両側だが姿勢反射障害なし、Ⅲは姿勢反射障害が出現(日常生活はおおむね自立)、Ⅳは生活に介助が必要(起立・歩行はかろうじて可能)、Ⅴは介助がなければ車椅子またはベッド上の生活です。
  • ウェアリングオフ現象は服薬時刻と関連し、次の服用前に効果が切れて症状が悪化します。オン・オフ現象は服薬時刻と関係なく、症状が急に変動します。
  • レボドパの主な副作用は、悪心・嘔吐、起立性低血圧、幻覚・妄想、ジスキネジアです。抗パーキンソン病薬を急に中止すると悪性症候群を起こすことがあります。
  • 入浴、外出、リハビリテーションは、薬が効いているオンの時間帯に計画します。すくみ足には、床に引いた線などの視覚的な手がかりや、号令・リズムなどの聴覚的な手がかりが有効です。
  • パーキンソン病でホーエン・ヤール重症度分類ステージⅢ以上かつ生活機能障害度Ⅱ度以上の場合は「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当します。この場合、要介護認定を受けていても訪問看護は医療保険から提供されます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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