111AM119|第111回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み118〜120の問いに答えよ。Aさん(28歳、女性、外国籍)は3年前に日本人の夫と結婚し来日した。簡単な日本語を話せたため、来日した半年後からコンビニエンスストアでアルバイトを始めた。最近になり、夫は仕事で帰りが遅くなることが多くなった。Aさんが「お客さんが自分の悪口を言っている」と話したが、夫は気にしなかった。その後、アルバイト先の上司から「Aさんが奇声を発している」「ぶつぶつと独り言を言って歩き回っている」と夫に連絡があった。夫が病院に付添い精神科外来を受診し、統合失調症 schizophrenia と診断されて入院となった。入院時、Aさんの髪は乱れ、誰かに見張られている気がすると怯えていた。入院後、担当看護師は毎日面会に来ている夫の表情が気になり声をかけた。夫は 「先生から統合失調症 schizophrenia には様々な症状があるとお聞きしました。入院して妻は落ちつきましたが、これからどう接していけばいいのか悩んでいます」と話した。担当看護師はチームカンファレンスで夫の様子を伝え、主治医の判断で、夫に家族心理教育への参加を促すことになった。担当看護師が夫に家族心理教育を勧める声かけで適切なのはどれか。

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正解: 1

正答

1.「Aさんの症状と対応について学ぶことができます」

この問題のポイント

家族心理教育の目的と運営のしかたを理解し、家族に参加を勧めるときに何を伝えればよいかを問う問題です。手がかりは、夫の「これからどう接していけばいいのか悩んでいます」という言葉と、主治医の判断で医療者側から参加を促すという流れです。家族心理教育は専門職が行う場で、疾患の知識と対処方法を学ぶものです。この点を押さえると、自助グループや強制的な参加との違いを見分けられます。

解説

事例の整理

Aさんは28歳の外国籍の女性で、来日して3年目です。次のような陽性症状がみられ、統合失調症と診断されて入院しました。

  • 「お客さんが自分の悪口を言っている」という訴え(被害妄想や幻聴が疑われます)
  • 奇声、独語、歩き回る行動
  • 「誰かに見張られている気がする」という訴え(注察妄想)

夫ははじめ妻の訴えを気にとめていませんでした。症状が進んでから職場からの連絡を受け、受診につながっています。入院後、Aさんは落ち着いてきましたが、毎日面会に来る夫の表情は気になる様子でした。夫は、統合失調症には様々な症状があると聞いたうえで、これからどう接していけばよいか悩んでいると話しています。

夫のニーズは次の2点に整理できます。

  • 病気と症状を理解したい
  • 具体的な接し方を知りたい

さらに、夫自身が不安や負担を抱えていることも読み取れます。家族も支援の対象です。

家族心理教育とは

家族心理教育は、統合失調症などの精神疾患をもつ人の家族を対象とするプログラムです。医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師などの専門職が計画的に行います。主な内容は次のとおりです。

  • 病気の知識:陽性症状と陰性症状、経過、治療と服薬の意義、再発の前兆
  • 対処技能:本人への接し方、コミュニケーションの工夫、困ったときの問題解決の方法
  • 社会資源の情報:相談窓口、福祉サービス、家族会など
  • 家族自身へのサポート:負担感や孤立感を軽くすること

複数の家族が集まるグループ形式で行うことが多く、情報提供に加えて、家族同士が経験や工夫を話し合う時間も設けられます。ただし、企画と運営の主体はあくまで専門職です。

家族心理教育の大きな根拠は、**感情表出(EE:expressed emotion)**の研究です。家族が本人に対して、批判的なコメント、敵意、情緒的な巻き込まれすぎ(過度な心配や過干渉)を多く示す状態を「高EE」といいます。高EEの家族と暮らす患者は、再発率が高いことが知られています。

病気への理解が不十分だと、退院後に目立ちやすい陰性症状(意欲低下、感情の平板化、ひきこもりなど)を「怠けている」と受け取り、批判的な言葉が増えがちです。症状の意味と対応を学ぶことでEEが和らぎ、再発予防につながります。家族心理教育は、統合失調症の再発を減らす効果が示された介入です。

正答に至る判断

夫の悩みは「症状の理解」と「接し方」であり、家族心理教育で得られるものとぴったり一致します。したがって、症状と対応を学べる場であると具体的に伝える声かけが適切です。夫の関心に沿っているため、自分から参加しようという気持ちも引き出せます。

また、夫は発症初期の訴えを見過ごしていました。家族心理教育では再発の前兆(不眠、イライラ、疑い深さ、ひきこもりなど)も学びます。そのため、変化に早く気づいて受診につなげる力も身につきます。

来日して日が浅く、身近な支え手が限られるAさんにとって、夫は最も重要な支援者です。夫の理解が深まることは、退院後の地域生活を支えるうえで大きな意味をもちます。Aさん本人への心理教育では、通訳や母語の資料の活用も検討します。

選択肢の確認

1.「Aさんの症状と対応について学ぶことができます」:正答。家族心理教育の中心である「疾患の知識」と「対処の方法」を学べることを、具体的に伝えています。どう接していけばよいか悩んでいるという夫の言葉に直接こたえる内容です。参加の意義が夫自身に伝わるため、参加への動機づけとして適切です。

2.「ご家族に参加して頂くことが退院の条件です」:家族心理教育への参加は家族の自由意思によるもので、退院の可否は本人の病状や退院後の生活の準備状況などから判断されます。参加を退院の条件として示すのは事実と異なり、家族に心理的な圧力をかけることにもなります。その結果、医療者との信頼関係や家族の主体的な学びを損ないます。家族の意思を尊重し、参加によって得られるものを伝えて自発的な参加を促すのが基本です。

3.「家族同士の自助グループです」:自助グループ(セルフヘルプグループ)とは、同じ問題を抱える当事者やその家族が主体となって運営し、体験を分かち合って支え合う集まりです。精神障害者の家族会がその例です。家族心理教育は専門職が企画・運営する教育的なプログラムで、家族同士が話し合う時間があっても自助グループにはあたりません。家族会は退院後の支えとして紹介する価値がありますが、今回勧める場の説明としては不適切です。

4.「匿名で参加できます」:匿名性を原則とする代表例は、アルコール依存症の自助グループであるAA(アルコホーリクス・アノニマス)です。家族心理教育は、入院中のAさんへの治療・支援の一環として医療者が行うものです。参加者はAさんの家族であることを前提に関わるため、匿名性を特徴とする場ではありません。また、匿名かどうかは接し方に悩む夫のニーズにこたえる情報ではなく、参加を勧める声かけとして的外れです。

覚えるポイント

  • 家族心理教育は専門職が行うプログラムです。疾患の知識(症状・経過・治療・服薬・再発の前兆)と対処技能を伝え、家族の負担も軽くします。
  • 家族の高EE(批判、敵意、情緒的な巻き込まれすぎ)は、統合失調症の再発の危険を高めます。家族心理教育はEEを和らげ、再発予防に役立ちます。
  • 自助グループは当事者や家族が主体となって運営する場で、家族会、断酒会、AAなどがあります。専門職が主導する心理教育とは区別します。
  • 匿名での参加を原則とするのはAA、実名で参加するのが断酒会です。
  • 家族への支援や教育への参加は強制しません。家族の悩みに結びつけて参加の意義を具体的に伝え、動機づけます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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