111PM049|第111回 看護師国家試験 過去問
前立腺癌 prostate cancer について正しいのはどれか。
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正解: 2
正答
2.血清 PSA 値が高値となる。
この問題のポイント
前立腺癌の基本的な特徴として、腫瘍マーカー、好発年齢、転移部位、ホルモン依存性の4点を問う問題です。押さえるべきことは次の4つです。PSAが診断と経過観察の指標になること、高齢男性に多いこと、アンドロゲン依存性で治療はアンドロゲンを抑える方向で行うこと、骨転移が特徴的だが肺にも転移することです。この4点を知っていれば、すべての選択肢を判定できます。
解説
発生部位と症状の特徴
前立腺は膀胱の直下で尿道を取り囲む臓器で、精液の一部となる前立腺液を分泌します。前立腺癌の大部分は腺上皮から発生する腺癌で、主に辺縁域から発生します。辺縁域は直腸に接しているため、直腸診で硬い結節として触れることがあります。
前立腺肥大症は尿道を囲む移行域から発生するため、早い時期から排尿障害が現れやすい疾患です。これに対して前立腺癌は、早期には自覚症状がほとんどありません。進行してから、排尿困難や血尿、骨転移による腰痛などで見つかることがあります。
前立腺癌は加齢とともに急増するがんで、60歳代から増え、70歳代以降に多くみられます。日本では高齢化とPSA検査の普及により罹患数が増え、男性で罹患数の多いがんの一つになっています。
PSAの意味と限界
PSA(前立腺特異抗原)は前立腺上皮細胞がつくる蛋白分解酵素です。本来は精液中に分泌され、精液を液化させる働きをもちます。癌によって前立腺の正常な構造が壊れると、血中に漏れ出る量が増えて血清PSA値が上昇します。スクリーニングでは一般に4.0 ng/mLが基準の目安とされ、これを超える場合はMRIや前立腺生検などの精密検査を検討します。
PSAは「前立腺に特異的」ですが、「癌に特異的」ではありません。次のような場合にも上昇します。
- 前立腺肥大症
- 前立腺炎
- 尿閉
- 直腸診、尿道カテーテル操作、射精の後
逆に、前立腺肥大症の治療薬である5α還元酵素阻害薬はPSA値を低下させます。そのため、PSA値を解釈するときは服薬歴の確認が欠かせません。確定診断は前立腺生検による病理診断で行い、悪性度はグリーソンスコアで評価します。PSAは診断後も、治療効果の判定や再発の監視に使われます。
ホルモン依存性と治療
前立腺癌は、男性ホルモン(アンドロゲン、主にテストステロン)の刺激で増殖するアンドロゲン依存性の腫瘍です。このため進行癌や転移癌では、アンドロゲンの作用を断つ内分泌療法が治療の中心になります。
- 両側精巣摘除術(外科的去勢)
- LH-RHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト:下垂体からのLH分泌を抑え、精巣でのテストステロン産生を低下させます
- 抗アンドロゲン薬:アンドロゲンが受容体に結合するのを妨げます
LH-RHアゴニストは、投与初期に一時的にテストステロンを上昇させます。その結果、骨痛や排尿障害が一過性に悪化することがあり、これをフレア現象といいます。内分泌療法の副作用には、ほてり、性機能低下、女性化乳房、骨密度低下などがあります。
限局癌では、リスクや年齢に応じて治療法を選びます。選択肢は、PSA監視療法、前立腺全摘除術、放射線療法(外照射、小線源療法)です。前立腺全摘除術の後は尿失禁と勃起障害が問題になりやすく、骨盤底筋訓練の指導が看護の重要な役割になります。
転移の特徴
前立腺癌は所属リンパ節に転移するほか、血行性に骨へ転移しやすい癌です。腰椎、骨盤、肋骨などに、骨を硬くする造骨性転移を起こすのが特徴で、骨シンチグラフィで検出され、血清ALPが上昇します。骨転移は疼痛や病的骨折の原因になります。脊椎転移による脊髄圧迫では、下肢の麻痺や膀胱直腸障害が起こるため、緊急の対応が必要です。看護では、転倒と骨折の予防、下肢のしびれや脱力の観察、排尿・排便の変化の観察が重要です。
遠隔転移は骨が最も多いものの、肺や肝臓への転移も起こります。特に肺は、骨に次いで多い転移先とされています。
選択肢の確認
1.肺転移の頻度は低い。:前立腺癌の遠隔転移は骨が最も多いものの、肺は骨に次いで多い転移先であり、剖検例の検討でも骨に次いで肺への転移が多いと報告されています。骨転移ほど注目されないだけで、頻度が低いとはいえないため誤りです。「骨転移が特徴的」という知識から、ほかの臓器にはあまり転移しないと思い込まないよう注意します。
2.血清 PSA 値が高値となる。:正答。PSAは前立腺上皮が産生する蛋白で、癌によって血中への漏出が増えるため高値となります。スクリーニング、診断の補助、治療効果の判定、再発の監視に用いられます。ただし前立腺肥大症や前立腺炎、直腸診の後などでも上昇するため、確定診断には生検が必要です。
3.患者の多くは60歳未満である。:前立腺癌は加齢とともに急増するがんで、罹患は60歳代から増え、70歳代以降に多いため、60歳未満の患者は少数であり誤りです。高齢男性に多い点は前立腺肥大症と共通で、同じ年代で両者が併存することもあります。対照的に、若年男性(20〜30歳代)に多い泌尿生殖器の腫瘍は精巣腫瘍です。
4.テストステロン補充療法が行われる。:前立腺癌はテストステロンなどのアンドロゲンの刺激で増殖するため、補充すると癌の増殖を促してしまい誤りです。実際の治療は、精巣摘除術、LH-RHアゴニスト、抗アンドロゲン薬などでアンドロゲンを抑える内分泌療法です。テストステロン補充療法は、男性の性腺機能低下症や加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)に用いる治療で、前立腺癌には禁忌とされています。
覚えるポイント
- 前立腺癌の腫瘍マーカーはPSA(基準の目安は4.0 ng/mL)です。前立腺には特異的ですが癌には特異的でなく、前立腺肥大症、前立腺炎、直腸診の後でも上昇します。
- 高齢男性に多く(70歳代以降が中心)、主に辺縁域から発生します。早期は無症状で、直腸診で硬い結節として触れることがあります。前立腺肥大症は移行域から発生します。
- アンドロゲン依存性の腫瘍なので、治療はアンドロゲンを抑える内分泌療法です。テストステロン補充は禁忌です。LH-RHアゴニストの投与初期にはフレア現象に注意します。
- 内分泌療法の副作用は、ほてり、性機能低下、女性化乳房、骨粗鬆症です。
- 転移は骨(腰椎・骨盤・肋骨、造骨性)が最も多く、次いで肺に多くみられ、肝臓にも転移します。脊髄圧迫による下肢麻痺や膀胱直腸障害は緊急事態です。
- 前立腺全摘除術後の合併症は尿失禁と勃起障害で、尿失禁には骨盤底筋訓練を指導します。
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