111PM048|第111回 看護師国家試験 過去問

下腿の介達牽引を受けている患者が足背のしびれを訴えている。看護師が確認すべき項目で優先度が高いのはどれか。

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正解: 1

正答

1.下肢の肢位

この問題のポイント

下腿の介達牽引中に出た「足背のしびれ」から、どの神経がどこで圧迫されているかを推測し、原因として最も多く、その場ですぐ確認して直せる項目を選ぶ問題です。足背の感覚は主に腓骨神経が支配しています。総腓骨神経は腓骨頭の周囲で皮膚のすぐ下を通るため、下肢が外旋して膝の外側が寝具や器具に押しつけられると圧迫されます。「足背のしびれ=腓骨神経の圧迫=外旋位による腓骨頭部の圧迫」と結びつけられるかが鍵です。

解説

問題文の手がかり

介達牽引は、皮膚を介して骨や関節を牽引する方法です。下肢ではスピードトラック牽引が代表的です。スポンジの付いた牽引バンドを下腿の内側と外側に当て、弾性包帯で巻いて固定し、重錘で引きます。患者は仰臥位のまま、長時間ベッド上で過ごします。この状況で出た足背のしびれは感覚の異常で、末梢神経の圧迫を疑わせる初期のサインです。

腓骨神経の走行と麻痺

坐骨神経は膝の裏あたりで、脛骨神経と総腓骨神経に分かれます。総腓骨神経は、腓骨頭のすぐ下(腓骨頸部)を外側から前へ回り込みます。この部分では硬い骨と皮膚の間を浅く走るため、外からの圧迫を受けやすくなります。その後、2本に分かれます。

  • 浅腓骨神経:下腿外側と足背の大部分の感覚を支配し、腓骨筋を動かします(足の外がえし)。
  • 深腓骨神経:前脛骨筋や足趾の伸筋を動かし(足関節と足趾の背屈)、第1・2趾の間の感覚を支配します。

この神経が麻痺すると、下腿外側から足背にかけて感覚障害が起こり、足関節と足趾を背屈できない下垂足になります。歩行時には、垂れ下がったつま先が床に引っかからないよう、股関節と膝関節を大きく曲げて膝を高く持ち上げ、つま先から接地する鶏歩がみられます。これは背屈できない分を補う代償的な歩き方です。高く上がるのは膝(下肢全体)で、つま先は垂れ下がったままです。しびれの段階で圧迫を取り除けば、回復が期待できます。一方、圧迫が続いて運動麻痺まで進むと、回復に長い時間がかかったり、後遺症が残ったりします。

なぜ肢位を最優先で確認するのか

仰臥位で臥床していると、下肢は重力で外側に倒れ、外旋しやすくなります。痛みや筋力低下のため自分で脚を戻せない患者では、なおさらです。外旋すると膝の外側、つまり腓骨頭部が、マットレスや牽引の架台、外旋防止のために置いた枕や砂のうなどに押しつけられ、総腓骨神経が圧迫されます。

看護師はまず次の点を確認します。

  • 膝蓋骨とつま先が真上を向いた中間位になっているか
  • 腓骨頭部に何かが当たっていないか

肢位は見ればすぐに確認でき、中間位に整えればその場で圧迫を解除できます。原因としての頻度と、確認・修正の早さのどちらから見ても、最優先の項目です。外旋を防ぐ支えは、腓骨頭部を避けて当てます。

あわせて行う観察と対応

  • 神経の観察:足背と下腿外側の感覚、足関節・足趾を自分で背屈できるか
  • 循環の観察:足背動脈の拍動、皮膚の色と温度、腫脹、疼痛の増強
  • 局所の観察:弾性包帯の締めすぎやしわ、皮膚の発赤・水疱

しびれは、コンパートメント症候群などの循環障害でも起こります。そのため、神経と循環の観察を並行して行います。肢位を直してもしびれが続く場合や、背屈ができないなど運動障害がある場合は、速やかに医師へ報告します。同じ機序の腓骨神経麻痺は、下肢のギプス固定や長時間の側臥位でも起こります。どの場面でも、腓骨頭部の除圧を意識します。

選択肢の確認

1.下肢の肢位:正答。足背のしびれは、まず総腓骨神経の圧迫を疑う徴候です。その原因として最も典型的なのは、下肢の外旋によって腓骨頭部が寝具や器具に押しつけられることです。膝蓋骨やつま先が外側に倒れていないか、膝の外側に枕・砂のう・架台が当たっていないかを確認します。中間位に整えれば、その場で圧迫を取り除けます。原因として起こりやすく、確認と修正をすぐにできることから、最初に確認すべき項目です。

2.牽引の方向:牽引は、骨折部の整復・固定や患部の安静などを目的に、原則として患肢の長軸方向に引くよう医師が設定しています。方向の点検は、骨のアライメント(骨軸のそろい方)、牽引の効果、疼痛を管理するうえで定期的に行う大切な項目です。ただし、方向がずれたこと自体は、足背に限ったしびれを直接生じる機序ではありません。しびれを訴えた場面で最初に確かめる項目としては、肢位より優先度が下がります。肢位を整えたあとに、ロープや滑車の位置とあわせて点検します。

3.重錘の重さ:重錘の重量は医師が指示するもので、看護師の判断で増減したり外したりはしません。介達牽引は皮膚を介して引くため、重すぎると皮膚の損傷や水疱、疼痛の原因になります。看護師が確認するのは、指示どおりの重さか、重錘が床やベッドに触れず自由に垂れ下がっているかです。重量は、足背に限局したしびれを説明する直接の要因とは考えにくいため、この場面での優先度は高くありません。

4.弾性包帯のずれ:弾性包帯がずれると、牽引力が伝わりにくくなります。ずれた包帯のしわやたるみは、皮膚を局所的に圧迫したりこすったりします。巻き直す際に締めすぎれば、循環障害や神経の圧迫を招きます。そのため、観察項目の一つです。特に腓骨頭部の周囲をきつく巻くと、腓骨神経を圧迫するおそれがあります。肢位を直してもしびれが続くときは、包帯の状態を必ず確認します。とはいえ、足背のしびれの原因として最も起こりやすく、一目で確認してすぐ直せるのは外旋位による圧迫です。優先度はそれに次ぐ位置づけになります。

覚えるポイント

  • 下腿外側から足背のしびれ、足関節・足趾の背屈不能(下垂足)、鶏歩は、腓骨神経麻痺のサインです。鶏歩は、垂れたつま先が引っかからないよう膝を高く上げ、つま先から接地する歩き方です。圧迫されやすい部位は、腓骨頭(腓骨頸部)の周囲です。
  • 下肢の牽引・ギプス固定・臥床中は外旋位を防ぎ、膝蓋骨とつま先を真上に向けた中間位を保ちます。外旋防止の支えは、腓骨頭部を避けて当てます。
  • しびれを訴えたら、まず肢位と局所の圧迫を確認して取り除きます。次に、感覚、足趾の運動、足背動脈、皮膚の色と温度を観察します。改善しない場合や運動障害がある場合は、医師に報告します。
  • 介達牽引は皮膚を介して引くため、重い重錘はかけられず、皮膚障害に注意します。直達牽引は骨に通した鋼線で引くため、刺入部の感染に注意します。
  • 牽引管理の基本は、重錘を床につけず自由に垂れ下げること、ロープを滑車に正しくかけること、指示どおりの重さと方向を保つこと、看護師の判断で外さないことです。
  • 上肢の神経麻痺と対にして覚えます。橈骨神経麻痺は下垂手、尺骨神経麻痺は鷲手、正中神経麻痺は猿手です。

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