111PM047|第111回 看護師国家試験 過去問

鼓室形成術を受けた患者の退院指導の内容で正しいのはどれか。

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正解: 3

正答

3.鼻を強くかむことを禁じる。

この問題のポイント

鼓室形成術後の退院指導を問う問題です。中耳(鼓室)は耳管で上咽頭につながっています。そのため、鼻や咽頭の圧、外気圧の変化、水や細菌の侵入が、再建したばかりの鼓膜や耳小骨に影響します。この構造を押さえたうえで、「中耳に圧をかけない」「耳に水や異物を入れない」「急な気圧変化を避ける」の3つの視点で選択肢を判断します。

解説

鼓室形成術とはどのような手術か

鼓室形成術は、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎で生じた鼓膜穿孔や耳小骨の破壊に対して行う手術です。病巣を除去し、鼓膜と耳小骨の連鎖(伝音機構)を再建します。目的は次の2つです。

  • 感染や骨破壊の原因となる病巣を取り除くこと
  • 伝音難聴を改善すること

鼓膜の再建には、側頭筋膜などの自家組織を移植片として用います。術後は、外耳道にガーゼやスポンジなどの詰め物(パッキング)を入れて移植片を固定します。移植片が生着して上皮で覆われるまでは、わずかな圧の変化や感染でも移植片がずれたり、再び穿孔したりするおそれがあります。退院指導の中心は、この時期に移植片を守ることです。

耳管を介した圧の伝わり方

中耳は耳管によって上咽頭(鼻咽腔)とつながっています。耳管はふだん閉じており、嚥下やあくびのときに開いて、鼓室内の圧を外気圧と等しく保っています。

鼻を強くかむと鼻咽腔の圧が急に高まり、その圧が耳管を通って鼓室内に伝わります。術後の中耳では、次の2つの危険があります。

  • 圧によって移植した鼓膜が押されて浮き上がる、またはずれる
  • 鼻汁とともに細菌が中耳へ押し込まれ、術後感染を起こす

これが、鼻を強くかむことを禁じる根拠です。

退院指導の具体的な内容

上の機序から、退院指導では次のような内容を伝えます。

  • 鼻を強くかまない。かむ場合は片側ずつ軽くかむ。
  • くしゃみは口を開けて行い、圧を口から逃がす。
  • 強いいきみや重い物の持ち上げなど、胸腔内圧が急に高まる動作を控える。便秘にも注意する。
  • かぜは鼻汁やくしゃみを増やし、耳管を通じた感染の原因にもなるため、予防に努める。
  • 耳に水を入れない。洗髪時は医師の指示に従って耳を保護し、水泳や潜水は医師の許可が出るまで控える。
  • 外耳道の詰め物を自分で取らない。耳に指や綿棒を入れない。
  • 飛行機、登山、高層ビルの高速エレベーターなど、急に気圧が変わる環境を一定期間避ける。
  • 次の症状があれば受診する:耳からの出血や膿性の耳漏、発熱、耳痛の増強、めまいの増強、顔の動きにくさ(顔面神経麻痺)など。

臨床では、禁止事項を並べるだけでなく「耳と鼻は管でつながっているから」という理由を添えて説明すると、患者が納得して守りやすくなります。同じ考え方は、鼓膜形成術やアブミ骨手術など、ほかの中耳手術後の指導にも共通して使えます。

選択肢の確認

1.水泳は可能である。:退院時点では移植片の生着や上皮化がまだ途中です。耳に水が入ると外耳道や中耳の感染、移植片の浮き上がりの原因になるため、水泳は医師が許可するまで控えます。水中では水圧による圧変化も加わるので、潜水はさらに危険です。再開の時期は創の治り具合をみて医師が判断します。自己判断で「もう泳いでよい」と考えないよう指導する必要があります。

2.耳垢はこまめに除去する。:術後の外耳道には詰め物が入っており、皮膚や移植片も傷つきやすい状態です。患者が綿棒や耳かきを入れると、損傷や感染、詰め物のずれを招きます。外耳道の清掃や詰め物の除去は外来で医師が行うため、「こまめに除去する」という指導は適切ではありません。なお、耳垢には外耳道の皮膚を保護する働きがあり、外耳道には耳垢を外へ送り出す自浄作用があります。そのため健常時でも過度な耳掃除は勧められません。

3.鼻を強くかむことを禁じる。:正答。鼻を強くかむと鼻咽腔の圧が耳管を通じて鼓室に伝わります。その結果、再建した鼓膜の移植片がずれたり、再穿孔したりするおそれがあります。また、鼻汁中の細菌が中耳へ押し込まれて感染を起こす危険もあります。かむ場合は片側ずつ軽くかむこと、くしゃみは口を開けて行うことも併せて指導します。

4.エレベーターの使用を勧める。:高層ビルの高速エレベーターは短時間で大きな高度差を移動するため、外気圧が急に変わります。健常者でも耳が詰まった感じになるのは、この圧の変化のためです。術後は鼓室内との圧の差が再建部位の負担になるため、飛行機への搭乗や登山と同様に、一定期間は避けるよう説明します。心疾患などで運動負荷を減らしたい患者には「階段よりエレベーター」と指導することがありますが、その指導と取り違えないよう注意します。

覚えるポイント

  • 中耳(鼓室)と上咽頭は耳管でつながっています。そのため、鼻かみ・くしゃみ・いきみの圧や、鼻咽腔の細菌が中耳に及びます。
  • 中耳術後の生活指導は4本柱で覚えます。
  • 強く鼻をかまない(くしゃみは口を開けて)
  • 耳に水・指・綿棒を入れない(水泳・潜水は許可まで禁止)
  • 急な気圧変化を避ける(飛行機・登山・高速エレベーター)
  • かぜを予防する
  • 鼓室形成術の目的は「病巣の除去」と「伝音機構(鼓膜・耳小骨)の再建」です。改善を目指すのは伝音難聴です。
  • 中耳手術の主な合併症は、顔面神経麻痺、味覚障害(鼓室内を通る鼓索神経の障害)、めまい、耳鳴、耳漏・感染です。これらは受診の目安として指導します。
  • 小児の耳管は太く・短く・水平に近いため、上気道感染から中耳炎を起こしやすいという点も、耳管に関連してよく問われます。

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