112AM047|第112回 看護師国家試験 過去問

Aさん(62歳、男性)は呼吸困難と咳嗽が増強したため外来を受診した。胸部エックス線写真と胸部CTによって特発性肺線維症 idiopathic pulmonary fibrosis による間質性肺炎 interstitial pneumonia と診断され、呼吸機能検査を受けた。換気障害の分類を図に示す。Aさんの換気障害の分類で当てはまるのはどれか。

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正解: 1

正答

1.A

この問題のポイント

換気障害の分類図を読み取り、特発性肺線維症による間質性肺炎がどの区画に入るかを判断する問題です。図は縦軸が1秒率、横軸が%肺活量です。1秒率は「息を速く吐き出せるか(気道の通りやすさ)」を、%肺活量は「肺がどれだけ膨らむか」を表します。間質性肺炎では肺が線維化して硬くなるため、%肺活量は下がり、1秒率は保たれます。この拘束性換気障害の病態を理解していることが鍵です。

解説

判断の手がかりは「特発性肺線維症による間質性肺炎」という診断名です。62歳の男性で、呼吸困難と咳嗽が増強しているという経過も、この疾患の典型像に合います。診断名から肺にどのような変化が起きているかを考え、それが図のどちらの軸の値を下げるかに結びつけます。

図と2つの指標の読み取り

図の縦軸は1秒率(%)で、0〜100%の範囲のうち70%の位置に横向きの点線があります。横軸は%肺活量(%)で、80%の位置に縦向きの点線があり、その右に100%の目盛りがあります。2本の点線で分けた4つの区画は、次のように判定します。

  • A(左上):1秒率70%以上、%肺活量80%未満で、拘束性換気障害です。
  • B(右上):1秒率70%以上、%肺活量80%以上で、正常です。
  • C(左下):1秒率70%未満、%肺活量80%未満で、混合性換気障害です。
  • D(右下):1秒率70%未満、%肺活量80%以上で、閉塞性換気障害です。

1秒率はスパイロメトリーで測ります。最大まで息を吸ってから一気に最後まで吐き出した量を努力肺活量といい、そのうち最初の1秒間に吐き出せた量(1秒量)の割合が1秒率です(1秒量÷努力肺活量×100)。気道が狭くなったり、息を吐くときに気道がつぶれたりして速く吐き出せなくなると、1秒率は下がります。1秒率70%未満を閉塞性換気障害と判定します。

%肺活量は、年齢・性別・身長から求めた予測肺活量に対する実測肺活量の割合です。肺活量の実測値は体格や年齢、性別で大きく異なるため、予測値と比べて評価します。肺や胸郭が膨らみにくくなると下がり、%肺活量80%未満を拘束性換気障害と判定します。閉塞性は「吐き出しにくい」、拘束性は「膨らみにくい」と整理しておくと、どちらの軸を見ればよいかがすぐに分かります。

間質性肺炎が拘束性換気障害になる理由

間質性肺炎は、肺胞の壁(肺胞隔壁)を中心とする間質に炎症と線維化が起こる疾患の総称です。膠原病や薬剤、放射線など原因が明らかなものと、原因不明の特発性のものがあります。特発性肺線維症は特発性間質性肺炎のなかで最も多い病型で、線維化が慢性に進み、予後は不良です。中高年の男性や喫煙歴のある人に多く、主な症状は乾性咳嗽と労作時の呼吸困難です。両側下肺野の捻髪音(fine crackles)、ばち指、CTでの蜂巣肺、血清KL-6・SP-Dの上昇などが手がかりになります。

線維化した肺は硬くなり(肺コンプライアンスの低下)、十分に膨らまなくなります。そのため肺活量が減って%肺活量が下がり、全肺気量などの肺気量も全体に小さくなります。一方、線維化は肺胞側の変化であり、気道の内腔が狭くなるわけではありません。むしろ硬くなった肺が気道を外側から引っ張って広げるため、息を吐き出す速さは保たれます。1秒量と努力肺活量がともに小さくなっても、その比である1秒率は正常か、かえって高くなります。

したがってAさんは「1秒率70%以上・%肺活量80%未満」の区画、つまりAの拘束性換気障害にあたります。対照的に、肺気腫を主体とするCOPDでは肺胞壁が壊れて肺の弾性収縮力が落ちます。そのため息を吐くときに細い気道がつぶれて1秒率が下がり、吐ききれない空気がたまって残気量が増えます(過膨張)。同じ慢性の肺疾患でも、肺が「硬くなる」か「弾力を失う」かで、変化は正反対になります。

看護につながる知識

間質性肺炎では肺胞壁が厚くなり、酸素が肺胞から血液へ移りにくくなる拡散障害も起こります。検査では肺拡散能(DLCO)が低下します。安静時のSpO2が保たれていても、歩行や入浴、排泄などの労作で大きく下がりやすいのが特徴です。看護では次のことを支援します。

  • 動作の前後や途中で、SpO2と呼吸困難の程度を確認する
  • 動作をゆっくり行う、休息をはさむといった工夫をする
  • 指示に基づく酸素療法(在宅酸素療法を含む)を行う

また、短期間に呼吸不全が急速に進む急性増悪を起こすことがあり、感染はその誘因の一つです。そのため、禁煙と感染予防の指導が大切です。

似た用語に%1秒量(予測1秒量に対する実測1秒量の割合)があります。閉塞性障害があるかどうかの判定には1秒率を、COPDの病期(重症度)分類には%1秒量を使うので、取り違えないようにしましょう。

選択肢の確認

1.A:正答。1秒率は70%以上に保たれ、%肺活量だけが80%未満に下がる左上の区画で、拘束性換気障害を表します。線維化で肺が硬くなって膨らまず肺活量が減る一方、気道の通りは保たれて1秒率は正常かむしろ高くなります。これは特発性肺線維症の特徴と一致します。間質性肺炎のほかに拘束性換気障害を起こす代表的な病態として、胸水や胸膜の肥厚、脊柱側弯症などの胸郭変形、筋萎縮性側索硬化症や重症筋無力症などの神経筋疾患、肺切除後があります。

2.B:1秒率70%以上、%肺活量80%以上で、どちらの異常の基準にも当てはまらない右上の区画です。換気障害のない「正常」を表します。健康な人のほか、発作のない時期の気管支喘息でも値がこの範囲に収まることがあります。この事例は線維化によって肺活量が減る病態なので、%肺活量が保たれたこの区画にはあたりません。

3.C:1秒率70%未満かつ%肺活量80%未満の左下の区画で、閉塞性と拘束性の両方をあわせもつ混合性換気障害を表します。肺結核後遺症や、進行して残気量が増え肺活量まで下がった慢性閉塞性肺疾患などでみられます。特発性肺線維症は肺活量が下がる点では当てはまりますが、気道の閉塞はなく1秒率は下がらないため、この区画にはあたりません。

4.D:1秒率だけが70%未満に下がり、%肺活量は80%以上に保たれる右下の区画で、閉塞性換気障害を表します。慢性閉塞性肺疾患(肺気腫・慢性気管支炎)、発作時の気管支喘息、びまん性汎細気管支炎など、気道が狭くなって息を速く吐き出せない疾患が該当します。慢性の肺疾患という共通点から肺気腫と混同しやすいのですが、肺線維症は肺が硬くなって膨らまない病態です。線維化そのものでは1秒率は下がらないため、この区画にはあたりません。

覚えるポイント

  • 閉塞性換気障害は1秒率70%未満(吐き出しにくい)です。代表はCOPD、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎などです。
  • 拘束性換気障害は%肺活量80%未満(膨らみにくい)です。代表は間質性肺炎・肺線維症、胸水・胸膜肥厚、胸郭変形、神経筋疾患、肺切除後などです。
  • 両方の基準に当てはまれば混合性換気障害(肺結核後遺症、進行したCOPDなど)、どちらにも当てはまらなければ正常です。
  • 1秒率=1秒量÷努力肺活量×100、%肺活量=実測肺活量÷予測肺活量(年齢・性別・身長から算出)×100です。COPDの病期分類には、1秒率ではなく%1秒量を使います。
  • 間質性肺炎の特徴は、1秒率が正常〜高値、拡散能の低下と労作時のSpO2低下、捻髪音、ばち指、CTでの蜂巣肺、KL-6の上昇です。
  • 分類図の問題では、まず縦軸と横軸に何が割り当てられているかを確認します。本問の図では、右上が正常、左上が拘束性、右下が閉塞性、左下が混合性です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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