112AM051|第112回 看護師国家試験 過去問
成人のばね指 snapping finger で正しいのはどれか。
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正解: 2
正答
2.原因は腱の炎症である。
この問題のポイント
成人のばね指(弾発指)について、病態、起こりやすい人、起こりやすい指、治療の原則を問う問題です。ばね指は「屈筋腱とそれを押さえる腱鞘の間で起こる狭窄性腱鞘炎」です。この病態を押さえれば、女性に多いこと、母指に多いこと、治療は安静が基本であることを導けます。問題文の「成人の」は、背景の異なる小児のばね指と区別するための条件です。
解説
ばね指の病態
指を曲げる屈筋腱は、指の骨に沿って走るトンネル状の靱帯性腱鞘(滑車)の中を滑って動きます。手の使いすぎなどで腱と腱鞘の間に摩擦が繰り返し加わると、腱と腱鞘に炎症が起こります。炎症で腱鞘が肥厚して狭くなり、腱も部分的に腫れて結節状になります。その結果、腱はMP関節の手のひら側にある腱鞘の入口(A1滑車)を滑らかに通れなくなります。これを狭窄性腱鞘炎といいます。
腫れた腱が狭い腱鞘に引っかかり、力を加えると急に通り抜けて、指がカクンとはじけるように伸びたり曲がったりします。この弾発現象が「ばね指」という名前の由来です。選択肢2の「腱の炎症」は、腱と腱鞘を一体として起こるこの炎症を指しており、ばね指の原因を正しく表しています。
症状と好発
主な症状は次のとおりです。
- MP関節の手のひら側の痛みと圧痛(腫れた結節を触れることがある)
- 指の曲げ伸ばしでの引っかかりと弾発現象
- 進行すると、指が曲がったまま伸びなくなる(ロッキング)
- 朝起きたときに症状が強く、手を使ううちに軽くなることが多い
更年期や妊娠・出産期の女性に多く、女性ホルモンの変動が腱鞘の腫れやすさに関与すると考えられています。手をよく使う仕事や家事の多い人、糖尿病、関節リウマチ、透析を受けている人にも多くみられます。成人では母指に最も多く、次いで中指・環指に多くみられます。
治療と看護
治療の基本は保存療法で、原因となっている摩擦を減らすことが中心です。
- 手の使いすぎを避ける局所の安静と、装具(スプリント)による固定
- 消炎鎮痛薬の内服・外用
- 腱鞘内への副腎皮質ステロイドの注射
- 改善しない場合や再発を繰り返す場合は、腱鞘を切開して腱の通り道を広げる腱鞘切開術
看護では、症状が手の使い方と関係していることを説明します。そのうえで、同じ動作を長く続けない、重い物を指先でつまみ持ちしないなど、家事や仕事の中で負担を減らす工夫を一緒に考えます。糖尿病や関節リウマチなどの基礎疾患がある人はばね指を起こしやすいため、手指の訴えを見逃さない視点も大切です。
小児のばね指との違い
小児のばね指は多くが母指に起こり、第1関節(IP関節)が曲がったまま伸びない状態で気づかれます。使いすぎによる炎症というより、腱の肥大や結節が中心と考えられており、自然に改善することもあります。成人とは背景が異なるため、問題文では「成人の」と限定されています。
選択肢の確認
1.男性に多い。:ばね指は中年以降、とくに更年期や妊娠・出産期の女性に多い疾患で、女性ホルモンの変動が関係すると考えられています。男性でも糖尿病、透析、手を酷使する作業があれば起こりますが、全体としては女性に多い疾患です。「男性に多い」手の疾患には、手掌腱膜が肥厚して環指・小指が曲がったまま伸びなくなるデュピュイトラン拘縮があり、これと取り違えないよう注意します。
2.原因は腱の炎症である。:正答。屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で摩擦が繰り返されて炎症が起こり、腱鞘の肥厚と腱の腫れによって腱の通過が妨げられます(狭窄性腱鞘炎)。これが引っかかりと弾発現象を生む原因です。
3.好発部位は示指である。:成人のばね指は母指に最も多く、次いで中指・環指に多くみられ、示指は比較的少ない部位です。母指に起こる別の腱鞘炎として、手首の母指側が痛むドケルバン病(短母指伸筋腱と長母指外転筋腱の狭窄性腱鞘炎)があります。障害される腱と部位がばね指(屈筋腱、MP関節の手のひら側)とは異なるので、区別して覚えます。
4.積極的にストレッチを行う。:炎症のある腱を積極的に伸ばしたり動かしたりすると、腱と腱鞘の摩擦が増えて炎症が悪化するおそれがあるため、治療の基本は局所の安静です。装具で動きを制限し、消炎鎮痛薬やステロイド注射で炎症を抑えます。なお、腱鞘切開術の後は、腱の癒着を防ぐために早い時期から指を動かすよう指導されることがあります。「動かす」ことが勧められるのは術後であり、炎症のある時期と混同しないようにします。
覚えるポイント
- ばね指は、屈筋腱と靱帯性腱鞘(MP関節の手のひら側)の狭窄性腱鞘炎です。腱が腱鞘に引っかかって弾発現象が起こり、進行するとロッキングになります。
- 好発する人は、更年期・妊娠出産期の女性、手を使いすぎる人、糖尿病・関節リウマチ・透析の患者です。
- 成人の好発指は母指が最も多く、次いで中指・環指です。症状は朝に強く出ます。
- 治療は、局所安静・装具・消炎鎮痛薬・腱鞘内ステロイド注射で、無効なら腱鞘切開術を行います。炎症期に積極的なストレッチはしません。
- 混同しやすい疾患として、ドケルバン病(母指の伸筋側の腱鞘炎)、手根管症候群(正中神経の圧迫で、女性に多い)、デュピュイトラン拘縮(手掌腱膜の病変で、男性の環指・小指に多い)があります。
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