112AM052|第112回 看護師国家試験 過去問

広汎子宮全摘出術を受けた患者への退院後の生活に関する説明で正しいのはどれか。

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正解: 2

正答

2.「定期的に排尿を試みてください」

この問題のポイント

広汎子宮全摘出術の術式の特徴から、退院後も続きやすい合併症を想定して生活指導を選ぶ問題です。判断の鍵は、基靱帯を含む子宮傍組織を広く切除するときに骨盤内臓神経が損傷され、**排尿障害(尿意の低下と排尿筋の収縮力低下)**が高い頻度で残ることです。あわせて、腟断端の治癒を待つ必要がある性交・入浴の時期と、リンパ節郭清後にリンパ浮腫が起こる部位(下肢)を正しく理解しているかが問われています。

解説

広汎子宮全摘出術とは

主に子宮頸癌に対して行われる術式です。子宮に加えて、基靱帯などの子宮傍組織、腟の上部、骨盤内のリンパ節を広く切除します。卵巣・卵管は、年齢や病状に応じて切除するか温存するかを決めます。単純子宮全摘出術との違いは、子宮周囲の組織と腟を広く切除することと、骨盤リンパ節郭清を伴うことです。この2点がそれぞれ退院後の生活上の問題につながります。

排尿障害が起こるしくみ

膀胱の排尿筋を収縮させるのは、仙髄(S2〜S4)から出る副交感神経の骨盤内臓神経です。この神経は基靱帯の近くを通って膀胱・直腸へ向かいます。そのため基靱帯を切除する広汎子宮全摘出術では、神経温存術式を行っても損傷を完全には避けられず、次のような状態が起こります。

  • 膀胱に尿がたまっても尿意を感じにくい
  • 排尿筋の収縮が弱く、尿が出にくい、残尿が多い
  • 膀胱が過度に充満すると尿があふれ出る(溢流性尿失禁)

残尿を放置すると尿路感染を起こしやすくなります。また、膀胱が引き伸ばされることで排尿筋の機能がさらに低下し、進行すれば水腎症など上部尿路にも影響が及びます。

退院指導の要点

尿意を当てにできないため、**尿意の有無にかかわらず時間を決めて排尿を試みる(時間排尿)**ことが基本です。排尿時には腹圧をかける、下腹部を手で圧迫するなどして膀胱を空にするよう工夫します。残尿が多い場合は、清潔間欠自己導尿を退院後も続けます。発熱、排尿時痛、尿の混濁など尿路感染の徴候があれば受診するよう伝えます。

排尿障害は長期に及ぶこともあります。入院中から排尿日誌や残尿測定を通して、本人が自分の排尿状態を把握できるよう支援し、在宅で続けられる方法を一緒に選ぶことが看護の役割です。直腸を支配する神経も影響を受けるため、便秘への対応も必要です。

そのほかの生活指導

  • 腟断端:腟の上部を切除して縫合閉鎖しています。断端が治癒するまでは性交と浴槽入浴を控え、外来で医師が治癒を確認してから再開します。腟が短くなるため性交痛が生じることがあり、潤滑剤の使用や相談先を伝えることも大切です。
  • リンパ浮腫:骨盤リンパ節郭清により、下肢にリンパ浮腫が起こることがあります。締めつける衣類を避けること、長時間の立位・座位を避けて下肢を挙上することを指導します。足の傷や虫刺されから感染(蜂窩織炎)を起こさないよう、皮膚を清潔に保ち保湿することも伝えます。
  • 卵巣欠落症状:閉経前に両側卵巣を摘出した患者では、ほてりや発汗などの更年期様症状が起こることがあります。

選択肢の確認

1.「術後2週から性交は可能です」:術後2週の時点では腟断端がまだ十分に治癒していません。性交によって出血、断端の離開、感染を起こすおそれがあるため、この説明は誤りです。再開の目安は経過によって異なりますが、少なくとも術後1〜2か月程度を経て、外来診察で腟断端の治癒を確認し、医師の許可を得てからになります。単純子宮全摘出術でも腟断端を縫合するため、同じように時期を守る必要があります。

2.「定期的に排尿を試みてください」:正答。骨盤内臓神経が損傷されると、尿意が低下し、排尿筋の収縮も弱くなります。そのため尿意を待たずに時間を決めて排尿し、残尿による尿路感染や膀胱の過伸展を防ぎます。必要に応じて、腹圧や用手圧迫による排尿、自己導尿を組み合わせます。

3.「調理のときは手袋をしてください」:手の傷ややけどを防ぐために手袋を使う指導は、乳癌手術で腋窩リンパ節郭清を行った後に、患側上肢のリンパ浮腫や感染を予防する目的で行うものです。広汎子宮全摘出術の骨盤リンパ節郭清後に浮腫が起こるのは下肢なので、調理時の手袋は必要なく、誤りです。この術式で指導すべきなのは、下肢の皮膚の保護や挙上です。

4.「退院当日から浴槽の湯に浸かることができます」:退院の時点では腟断端がまだ治癒していないため、浴槽入浴は腟断端の感染を招くおそれがあり、誤りです。退院後しばらくはシャワー浴とし、湯船に浸かるのは外来で医師の許可を得てからにします。

覚えるポイント

  • 広汎子宮全摘出術(主に子宮頸癌)では、基靱帯とともに骨盤内臓神経が損傷され、排尿障害(尿意低下・残尿・溢流性尿失禁)が高い頻度で起こる。
  • 骨盤内臓神経は仙髄(S2〜S4)由来の副交感神経で、排尿筋の収縮と排便に関わる。
  • 排尿障害への指導は、尿意にかかわらない時間排尿、腹圧・用手圧迫による排尿、残尿が多ければ清潔間欠自己導尿、尿路感染の徴候があれば受診。
  • 性交と浴槽入浴は、医師が腟断端の治癒を確認してから再開する(退院直後はシャワー浴)。
  • リンパ浮腫が起こる部位は郭清部位で決まる。骨盤リンパ節郭清では下肢、乳癌の腋窩リンパ節郭清では上肢に起こる。調理や家事のときの手袋は、乳癌術後の指導。

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