112AM053|第112回 看護師国家試験 過去問

老化に伴う血液・造血器系の変化で適切なのはどれか。

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正解: 4

正答

4.赤血球数が減少する。

この問題のポイント

加齢に伴う血液と造血器の変化について、老年看護の基礎知識を問う問題です。判断の鍵は、造血の場である赤色骨髄が脂肪組織(黄色骨髄)に置き換わり、造血能とその予備能が低下するという流れです。ここから、赤血球は減る方向、黄色骨髄は増える方向と判断できます。白血球のうち好中球は「数は大きく変わらず機能が低下する」、血小板の凝集能や凝固系は「むしろ亢進する方向にある」と分けて覚えておくと、選択肢を整理できます。

解説

選択肢は、造血の場である骨髄(選択肢2)、赤血球とその産生を調節するホルモン(選択肢1・4)、白血球(選択肢3)に分かれます。それぞれの加齢変化を順に整理します。

造血の場の変化

血球は骨髄で造られます。骨髄には次の2種類があります。

  • 赤色骨髄:造血が活発で、血球に富むため赤く見える骨髄です。
  • 黄色骨髄:造血を行わず、大部分を脂肪組織が占める骨髄です。

新生児では、ほぼ全身の骨髄が赤色骨髄です。成長とともに、四肢の末梢側の骨から体の中心に向かって、黄色骨髄への置き換わりが進みます。成人で赤色骨髄が残るのは、主に胸骨、肋骨、椎骨、骨盤(腸骨)、頭蓋骨などの体幹・頭部の骨と、大腿骨・上腕骨の近位端です。骨髄穿刺を胸骨や腸骨で行うのはこのためです。高齢になると、残っている赤色骨髄でも脂肪化がさらに進み、造血細胞が占める割合は低下します。

赤血球系の変化

造血組織が減り、造血幹細胞の働きも衰えるため、造血の予備能は低下します。そのため健康な高齢者でも、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値はわずかに低下する傾向があります。これが正答の根拠です。

高齢者の造血は「平常時には保たれているが、余力が小さい」と理解してください。次のような要因が加わると、容易に貧血になります。

  • 出血
  • 鉄・ビタミンB12・葉酸の不足
  • 慢性腎臓病
  • 慢性炎症、悪性腫瘍

成人の貧血の目安として、WHOの基準ではヘモグロビン濃度が男性13 g/dL未満、女性(非妊娠時)12 g/dL未満とされています。軽度の低下は加齢で説明できますが、はっきりした貧血を「年のせい」で片づけず、原因を探すことが重要です。

赤血球の産生を調節するエリスロポエチンは、主に腎臓の尿細管周囲の間質細胞で産生されます。組織の低酸素を感知して分泌されるホルモンです。加齢に伴って腎機能が低下すると、エリスロポエチンの産生能も低下する方向にあります。高齢者の貧血では、貧血の程度に見合うほどエリスロポエチンが増えないことが多いとされます。さらに、エリスロポエチンに対する骨髄の反応性も低下するため、刺激を受けても赤血球が増えにくくなります。老化に伴う変化として押さえるべきなのは、エリスロポエチンの増加ではなく、産生と骨髄の反応の両面で「赤血球を増やす余力」が小さくなることです。

白血球・血小板・凝固系の変化

白血球は、顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)、単球、リンパ球(T細胞・B細胞など)に分けられ、加齢による変化は系統ごとに異なります。

顆粒球の大部分を占める好中球は、加齢によって数が大きくは変化せず、白血球の総数もほぼ保たれます。変わるのは主に機能で、好中球の遊走能・貪食能・殺菌能が低下します。

リンパ球系では、次のような変化が起こります。

  • 胸腺は思春期以降に萎縮し、新たなT細胞(ナイーブT細胞)の供給が減るため、細胞性免疫が低下します。
  • B細胞による、新しい抗原に対する抗体産生も低下します。
  • 一方で、自己抗体は出現しやすくなります。

血小板数も大きくは変化しません。ただし、機能が低下する白血球とは対照的に、血小板の凝集能(反応性)は亢進する傾向があります。また、フィブリノゲン、第VII因子、第VIII因子などの凝固因子も増える方向にあります。これらが重なり、高齢者は血栓ができやすくなります。

臨床での活かし方

  • 高齢者の貧血は、倦怠感や息切れだけでなく、ふらつきによる転倒、活動量の低下、認知機能の低下、心不全の悪化など、非特異的な形で現れやすいです。転倒予防とあわせて、原因の検索(栄養状態、便潜血、腎機能、服薬内容など)につなげます。
  • 免疫機能が低下しているため感染しやすく、感染しても発熱や白血球数の増加がはっきりしないことがあります。「熱がないから大丈夫」と判断せず、食欲低下、活気のなさ、意識状態の変化、呼吸数の増加などの小さな変化を観察します。
  • 血栓傾向があるため、長期臥床や脱水は深部静脈血栓症や脳梗塞の誘因になります。早期離床と水分摂取の支援が大切です。

選択肢の確認

1.エリスロポエチンが増加する。:エリスロポエチンは腎臓で低酸素を感知して産生されるホルモンです。加齢で腎機能が低下するとその産生能も低下する方向にあるため、老化に伴う変化として適切ではありません。高齢者の貧血では、むしろ貧血の程度に比べて分泌が不十分なことが多いとされます。腎機能がさらに低下した慢性腎臓病では、産生が低下して腎性貧血になります。反対に産生が増える代表例は、高地での生活や慢性閉塞性肺疾患などによる慢性的な低酸素状態で、その結果として二次性の赤血球増加症が起こります。加齢変化と混同しないようにしましょう。

2.黄色骨髄が減少する。:加齢とともに、造血を行う赤色骨髄が脂肪組織に置き換わって黄色骨髄になるため、黄色骨髄は減少ではなく増加します。赤色骨髄と黄色骨髄を逆に覚えていると選んでしまう選択肢です。「赤色骨髄が減少する」という記述であれば適切です。

3.顆粒球数が増加する。:加齢によって、白血球の総数や、顆粒球の大部分を占める好中球の数はほとんど変化しません。低下するのは遊走能・貪食能・殺菌能といった機能です。好中球が増える代表的な状況は細菌感染症、強いストレス、副腎皮質ステロイド薬の使用などで、好酸球はアレルギー疾患や寄生虫感染で増えます。いずれも加齢変化ではありません。なお高齢者では、細菌感染症でも好中球の増加が目立たないことがある点も押さえておきましょう。

4.赤血球数が減少する。:正答。赤色骨髄の脂肪化と造血幹細胞の機能低下により、造血能とその予備能が低下します。その結果、赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値は軽度に低下する傾向があります。ただし明らかな貧血がある場合は、加齢だけで説明せず、鉄欠乏、慢性疾患、腎機能の低下、消化管出血などの原因を評価します。

覚えるポイント

  • 加齢で赤色骨髄は脂肪化して黄色骨髄に置き換わります(赤色骨髄は減少、黄色骨髄は増加)。成人の造血は胸骨・椎骨・骨盤などの体幹の骨が中心です。
  • 赤血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリットは加齢で軽度に低下し、造血の予備能が小さいため貧血になりやすくなります。成人の貧血の目安(WHO)は、ヘモグロビンで男性13 g/dL未満、女性(非妊娠時)12 g/dL未満です。
  • エリスロポエチンは腎臓で産生されます。慢性腎臓病では産生が低下して腎性貧血に、慢性的な低酸素状態では産生が増加して二次性の赤血球増加症になります。
  • 顆粒球は好中球・好酸球・好塩基球を指します。その大部分を占める好中球は、加齢で数はほとんど変わらず(白血球総数も同様)、遊走能・貪食能・殺菌能が低下します(数より機能の変化)。
  • T細胞・B細胞は顆粒球ではなくリンパ球に属します。リンパ球系では、胸腺の萎縮でナイーブT細胞の供給が減って細胞性免疫が低下し、新しい抗原への抗体産生も低下します。高齢者の感染症は発熱や白血球増加が目立たないことがあるため、全身状態の小さな変化に早く気づくことが大切です。
  • 血小板数は大きく変化しません。一方で、血小板の凝集能やフィブリノゲンなどの凝固因子は亢進・増加する方向にあり、高齢者は血栓症のリスクが高まります。

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