112AM084|第112回 看護師国家試験 過去問
老化による尿の生成と排尿機能の変化はどれか。
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正解: 4
正答
4.残尿量の増加
この問題のポイント
加齢による変化を、腎臓で尿をつくる働き(尿の生成)と、膀胱・尿道で尿をためて出す働き(蓄尿・排尿)に分けて整理できるかを問う問題です。膀胱は伸びにくくなって小さくなり、排尿筋が尿を押し出す力は弱まります。一方、腎臓は尿を濃くする力が落ち、夜間の尿が増えます。この変化の方向を押さえれば、すべての選択肢を判定できます。
解説
問題文の手がかり
問題文は「尿の生成」と「排尿機能」の両方を挙げています。選択肢も、腎臓の働きに関わるもの(夜間尿量、尿比重)と、膀胱の働きに関わるもの(排尿回数、膀胱容量、残尿量)が混ざっています。臓器ごとに、加齢で何が起こるかを機序から考えます。
膀胱・尿道の加齢変化(蓄尿と排尿)
- 膀胱壁の変化:膀胱の平滑筋が減り、膠原線維などの結合組織が増えます。そのため膀胱壁の伸展性(コンプライアンス)が低下し、膀胱が十分にふくらまなくなります。結果として、ためられる量である膀胱容量は減少します。
- 排尿筋の収縮力低下:排尿時に膀胱を収縮させる排尿筋の力が弱まり、1回の排尿で膀胱を空にしきれなくなります。
- 不随意収縮の増加:尿が十分にたまる前に排尿筋が勝手に収縮しやすくなります(排尿筋過活動)。これが、急に強い尿意が起こる尿意切迫感や切迫性尿失禁の原因になります。
- 性差:男性では前立腺肥大症によって尿道が圧迫され、尿を出すときの抵抗が増えます。女性では骨盤底筋群の脆弱化やエストロゲンの低下によって尿道を閉じる力が弱まり、腹圧性尿失禁が起こりやすくなります。
排尿筋の収縮力の低下に、男性では尿道抵抗の増大が重なり、排尿後も膀胱内に尿が残るようになります。これが残尿量の増加です。もともと小さくなった膀胱に残尿が居座るため、新たにためられる量はさらに少なくなり、排尿回数は増えます(頻尿)。
腎臓の加齢変化(尿の生成)
加齢によりネフロンの数が減り、腎血流量と糸球体濾過量(GFR)が低下します。尿細管の機能も衰え、集合管の抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)への反応性も落ちます。その結果、尿を濃くする力(濃縮能)が低下します。水分が不足しても濃い尿をつくって水を保つことができないため、尿比重は上がりにくく、低めになる傾向があります。口渇感が鈍くなることと合わせて、高齢者が脱水に陥りやすい理由の一つです。
夜間の尿量にも変化があります。若年者では夜間にADHの分泌が増えて尿量が抑えられますが、高齢者ではこの日内変動が乏しくなります。さらに、日中に下肢にたまった水分が臥位になって循環血液中に戻ること、心機能や腎機能の低下なども加わり、夜間尿量は増加します(夜間多尿)。膀胱容量の減少や眠りの浅さも重なって、排尿のために夜間に何度も起きる夜間頻尿が生じます。
正答に至る判断
以上をまとめると、加齢で増えるのは残尿量・排尿回数・夜間尿量で、減るのは膀胱容量と尿の濃縮能(尿比重)です。この変化の方向と一致する選択肢は、残尿量の増加だけです。
看護実践とのつながり
- 残尿は細菌が繁殖する温床となり、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症を招きます。残尿が大量になると、膀胱からあふれ出るように漏れる溢流性尿失禁も起こります。残尿量は、排尿直後に導尿するか、膀胱用超音波画像診断装置で測定して評価します。
- 夜間頻尿は、暗い中での移動による転倒・骨折の大きな危険因子です。足元灯の設置、トイレまでの動線の確保、ポータブルトイレの検討、夕方以降のカフェインやアルコールの調整などが看護の要点です。利尿薬の服用時間は医師と相談します。
- 夜間の排尿を気にして水分を控えると、濃縮能が落ちている高齢者は脱水を起こしやすくなります。1日に必要な水分は日中を中心に十分とれるよう支援します。
選択肢の確認
1.排尿回数の減少:加齢で膀胱容量が小さくなり、排尿後も膀胱に尿が残るため、一度にためられる量が減ります。そのため排尿回数はむしろ増加し、頻尿になります。排尿回数が減るのは、脱水で尿量そのものが減った場合や、尿閉で自力排尿ができない場合などです。加齢による一般的な変化と取り違えないようにします。
2.膀胱容量の増加:膀胱壁の平滑筋が減って結合組織が増え、伸展性が低下するため、膀胱容量は減少します。「残尿が多い=膀胱に尿がたくさんたまる」と連想して容量が増えると考えがちですが、残尿は出しきれずに残った尿であり、膀胱がためられる最大量とは別の概念です。膀胱が病的に大きく引き伸ばされるのは、低活動型の神経因性膀胱などで尿意が乏しく過伸展する場合です。
3.夜間尿量の減少:高齢者では夜間にADH分泌が高まる日内変動が乏しくなり、臥位で下肢の水分が循環血液中に戻ることも加わって、夜間尿量は増加します。若年者では夜間にADHが増えて尿量が抑えられるため、その生理とは逆の方向に変化する点に注意します。
4.残尿量の増加:正答。排尿筋の収縮力が低下し、男性では前立腺肥大症による尿道抵抗の増大も加わるため、排尿後に膀胱内に残る尿が増えます。残尿は尿路感染症や溢流性尿失禁の原因になるため、看護上も重要な変化です。
5.尿比重の上昇:加齢で尿細管の機能やADHへの反応性が低下して尿の濃縮能が落ちるため、尿比重は上昇しにくく、低めになる傾向があります。尿比重が上昇するのは、脱水で濃縮尿が出ている場合や、糖尿病で尿糖が多い場合など、尿中の溶質が相対的に多いときです。ただし高齢者は濃縮能が落ちているため、脱水があっても尿比重が十分に上がらないことがあります。
覚えるポイント
- 加齢で増えるもの:残尿量、排尿回数(頻尿)、夜間尿量(夜間多尿・夜間頻尿)、排尿筋の不随意収縮
- 加齢で減るもの:膀胱容量、膀胱の伸展性、排尿筋の収縮力、腎血流量とGFR、尿の濃縮能(尿比重は低めになる)
- 残尿が増える機序は、排尿筋の収縮力低下に、男性では前立腺肥大による尿道抵抗の増大が加わること。残尿は尿路感染症と溢流性尿失禁につながる
- 夜間尿量が増える機序は、ADHの日内変動の減弱と、臥位での下肢の水分の還流。夜間頻尿は転倒の危険因子
- 濃縮能の低下と口渇感の低下により、高齢者は脱水になりやすい。脱水でも尿比重が上がりにくいことがある
- 女性は骨盤底筋群の脆弱化による腹圧性尿失禁、男性は前立腺肥大症による排出障害と溢流性尿失禁が起こりやすい
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