112AM083|第112回 看護師国家試験 過去問

成人におけるバイタルサインで緊急に対応が必要なのはどれか。

解答・解説を見る

正解: 2

正答

2.体温34.4 ℃

この問題のポイント

成人のバイタルサインについて、基準範囲から外れているかどうかと、すぐに対応しなければ生命に危険が及ぶかを判断する問題です。5つの値のうち、明らかに基準から外れ、急速に悪化する危険があるのは体温34.4 ℃です。深部体温35 ℃未満=低体温という定義を知っていれば正答できます。

解説

この問題では、各バイタルサインを成人の基準と照らし合わせ、「異常か」と「緊急か」の2段階で考えます。基準からわずかに外れていても経過観察でよい値があります。一方で、放置すると短時間で生命に関わる値もあります。

成人のおおよその基準は次のとおりです。

  • 脈拍:60〜100/分。100/分を超えると頻脈、60/分未満で徐脈とされます。
  • 呼吸数:12〜20/分。
  • 体温:腋窩温でおおむね36〜37 ℃。測定部位による高さは、直腸温>口腔温>腋窩温の順です。
  • 血圧:出題当時の日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019では、診察室血圧を次のように分類していました。正常血圧は120/80 mmHg未満です。正常高値血圧は収縮期120〜129かつ拡張期80未満です。高値血圧は収縮期130〜139かつ/または拡張期80〜89です。140/90 mmHg以上が高血圧です。
  • 意識:GCSは開眼(E)1〜4点、最良言語反応(V)1〜5点、最良運動反応(M)1〜6点の合計で評価します。最高は15点、最低は3点です。

これらに当てはめると、脈拍70/分、呼吸数14/分、GCS15点はいずれも基準内です。血圧130/80 mmHgは高値血圧に分類されますが、今すぐ処置が必要な値ではありません。残る体温34.4 ℃だけが、基準を大きく下回っています。

低体温症は、深部(中心)体温が35 ℃未満になった状態です。重症度によって、おおむね次のように変化します。

  • 軽度(35〜32 ℃):ふるえ、頻脈、頻呼吸がみられます。末梢血管が収縮し、判断力が低下します。
  • 中等度(32〜28 ℃):ふるえが消失し、意識レベルが低下します。徐脈や心房細動などの不整脈も現れます。
  • 高度(28 ℃未満):昏睡に陥り、心室細動や心静止の危険が高くなります。

34.4 ℃は分類上は軽度にあたります。それでも緊急対応が必要な理由は2つあります。第一に、低体温は進行性で、体温が下がるほど意識障害や致死的不整脈に近づきます。第二に、低体温の背景に重大な病態が隠れていることがあります。例としては、寒冷曝露、低血糖、甲状腺機能低下症、副腎不全、敗血症、脳血管障害、薬物やアルコールの影響、広範囲熱傷などが挙げられます。特に高齢者や重症感染症の患者では、熱が出ずにかえって体温が下がることがあります。そのため、低体温を「熱がないから安心」と見過ごしてはいけません。

実際の看護では、次のように対応します。

  • 測定の誤りがないかを確認して再測定します。腋窩の密着不良や、発汗・清拭直後の測定がよくある誤りです。
  • 意識、呼吸、循環を同時に評価し、速やかに医師へ報告します。
  • 濡れた衣類を取り除き、毛布や温風式加温装置で保温・復温します。重症例では、医師の指示のもとで加温輸液や加温加湿酸素を用います。
  • 中等度以上の低体温では、乱暴な体位変換などの刺激で心室細動が誘発されることがあります。愛護的に扱い、心電図モニターで監視します。

バイタルサインは1項目ずつ正常か異常かを見るだけでなく、「放置した場合に何が起こるか」を考えて優先度を判断することが大切です。

選択肢の確認

1.脈拍70/分:成人の脈拍の基準(60〜100/分)の中央付近にあり、頻脈にも徐脈にも当たらないため、緊急対応は不要です。脈拍では、数に加えてリズムの不整、緊張、左右差もあわせて観察します。100/分を超える頻脈や、失神を伴う高度の徐脈であれば、原因検索と迅速な対応が必要になります。

2.体温34.4 ℃:正答。深部体温35 ℃未満の低体温に該当しうる値で、成人の正常範囲を大きく下回っています。進行すると意識障害や致死的不整脈に至ります。背景に低血糖や敗血症などの重大な病態が隠れていることもあるため、再測定、全身評価、報告、保温を直ちに行う必要があります。

3.呼吸数14/分:成人の呼吸数の基準(12〜20/分)の範囲内であり、緊急対応は不要です。呼吸数は急変の早期徴候として重要な指標です。たとえば敗血症を疑うqSOFAでは、22/分以上が項目の一つです。頻呼吸や、12/分を下回る徐呼吸であれば注意が必要です。

4.血圧130/80 mmHg:出題当時のガイドラインの分類では高値血圧にあたり、生活習慣の見直しや経過観察の対象です。ただし、急激な臓器障害を起こす値ではありません。緊急対応が必要なのは、ショックを疑う血圧低下(収縮期90 mmHg未満がひとつの目安)の場合です。また、高度の血圧上昇(多くは180/120 mmHg以上)に脳・心・腎などの急性臓器障害を伴う高血圧緊急症も該当します。

5.グラスゴー・コーマ・スケール〈GCS〉15点:開眼4点、言語5点、運動6点の満点で、意識清明を示すため緊急対応は不要です。GCSは点数が低いほど重症で、8点以下は重症の意識障害として気道確保を考慮する目安とされます。JCSは数字が大きいほど重症なので、評価の向きを取り違えないよう注意します。

覚えるポイント

  • 成人の基準は、脈拍60〜100/分、呼吸数12〜20/分、腋窩温おおむね36〜37 ℃です。
  • 低体温は深部体温35 ℃未満です。軽度(35〜32 ℃)ではふるえと頻脈が起こります。中等度(32〜28 ℃)ではふるえが消えて意識が低下し、不整脈が出ます。高度(28 ℃未満)では心室細動の危険が高まります。
  • 低体温の背景には、寒冷曝露のほか、低血糖、甲状腺機能低下症、敗血症、薬物・アルコールなどがあります。高齢者の重症感染症では発熱せず低体温になることがあります。
  • 血圧130/80 mmHgは高値血圧です。高血圧緊急症は、数値だけでなく急性臓器障害を伴うかどうかで判断します。
  • GCSは3〜15点で、15点が意識清明、8点以下は重症の目安です。JCSとは点数の向きが逆です。
  • 「緊急に対応」を問う問題では、基準からのずれの大きさと、放置した場合に生命に直結するかどうかで優先度を判断します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。

関連問題

← 112AM082112AM084 →
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)