112AM061|第112回 看護師国家試験 過去問
排卵のある正常な月経周期で正しいのはどれか。
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正解: 4
正答
4.エストロゲンのポジティブフィードバックによって黄体形成ホルモンの分泌が増加する。
この問題のポイント
排卵のある正常な月経周期で、視床下部・下垂体・卵巣・子宮内膜がどう連動するかを問う問題です。「どの時期に」「どこから」「どのホルモンが」分泌され、「何に作用するか」を対応づけて整理できているかが問われます。正答の根拠は、ふだんは抑制的に働くエストロゲンが、排卵直前だけ促進的に働くというフィードバックの切り替わりです。
解説
ホルモンの流れの全体像
月経周期は、視床下部のゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、下垂体前葉の卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)、卵巣の卵胞と黄体の働きで調節されます。卵巣から出るエストロゲンとプロゲステロンは子宮内膜に作用し、同時に視床下部・下垂体へフィードバックをかけます。時期ごとに整理すると次のとおりです。
- 卵胞期(月経開始〜排卵):FSHの刺激で卵胞が発育します。LHの刺激で莢膜細胞(卵胞膜細胞)がアンドロゲンをつくり、顆粒膜細胞がそれをアロマターゼでエストロゲン(エストラジオール)に変えます。エストロゲンは子宮内膜を厚くして増殖期にします。基礎体温は低温相です。
- 排卵期:成熟卵胞からのエストロゲンが高い濃度で一定時間(2日程度)続くと、フィードバックが抑制から促進に切り替わります。これがポジティブフィードバックで、LHが急激に分泌されます(LHサージ)。LHサージの開始からおよそ24〜36時間後に排卵が起こります。LHは顆粒膜細胞を黄体化させる働きももちます。
- 黄体期(排卵〜次の月経):排卵後の卵胞は黄体になり、プロゲステロンとエストロゲンを分泌します。プロゲステロンは増殖した内膜を分泌期に変えて着床に備え、基礎体温を0.3〜0.5℃ほど上げて高温相をつくります。この時期はエストロゲン・プロゲステロンのネガティブフィードバックでFSHとLHは抑えられます。
- 月経期:妊娠が成立しなければ、黄体は排卵後約14日で退縮して白体になります。エストロゲンとプロゲステロンが低下して内膜の機能層がはがれ落ち、月経になります。抑制が外れるとFSHが再び上がり、次の周期の卵胞発育が始まります。
妊娠が成立した場合は、胚(絨毛)から出るヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が黄体を妊娠黄体として維持します。妊娠黄体は、胎盤がホルモン産生を引き継ぐ妊娠初期までプロゲステロンを分泌し続けます。
フィードバックの切り替わりが排卵の引き金
エストロゲンは通常、ネガティブフィードバックでFSHとLHの分泌を抑えます。排卵直前の十分に高い濃度が続いたときにだけ、ポジティブフィードバックに転じてLHサージを起こします。この「抑制から促進への転換」が、月経周期のなかで排卵が1回起こるしくみの中心です。
実践でどう生きるか
黄体期はおおむね14日で一定ですが、卵胞期の長さは人によって変わります。そのため、次の月経予定日から約14日さかのぼると排卵日のおおよその目安になります。基礎体温が低温相と高温相の二相性を示せば排卵があったと推定でき、一相性なら無排卵を疑います。市販の排卵検査薬は尿中のLHサージを検出しています。低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬は、ネガティブフィードバックでゴナドトロピンを抑えて排卵を抑制します。いずれも不妊や避妊、月経不順の相談、家族計画の支援で使う知識です。なお、正常な月経周期は25〜38日とされています。
選択肢の確認
1.黄体は形成後1週間で萎縮する。:黄体の機能期間はおよそ14日間であり、1週間で萎縮するわけではありません。黄体のプロゲステロン分泌は排卵後1週間前後でピークになり、妊娠が成立しなければその後退縮に向かいます。排卵から約14日で月経が始まります。「ピークの時期」と「萎縮の時期」を取り違えやすいので注意が必要です。妊娠が成立すれば、hCGによって妊娠黄体として維持されます。
2.エストロゲンの作用で子宮内膜が分泌期になる。:子宮内膜を分泌期に変えるのは黄体から出るプロゲステロンなので、この記述は誤りです。エストロゲンが起こすのは内膜が厚くなる増殖期です。分泌期は、エストロゲンで増殖した内膜にプロゲステロンが作用して成立します。黄体期にもエストロゲンは分泌されていますが、分泌期への変化の主役はプロゲステロンです。「増殖期=エストロゲン、分泌期=プロゲステロン」と対にして覚えます。
3.発育した卵胞の顆粒膜細胞からプロゲステロンが分泌される。:発育中の卵胞の顆粒膜細胞が主に分泌するのはエストロゲンであり、プロゲステロンではありません。顆粒膜細胞は莢膜細胞由来のアンドロゲンをアロマターゼでエストロゲンに変えています。プロゲステロンを本格的に分泌するのは、LHサージ後に顆粒膜細胞が黄体化してできた黄体です。主語が「黄体」であれば正しい記述になります。妊娠中は胎盤もプロゲステロンの主な分泌源になります。
4.エストロゲンのポジティブフィードバックによって黄体形成ホルモンの分泌が増加する。:正答。成熟卵胞から分泌されるエストロゲンが高い濃度で一定時間続くと、ふだんのネガティブフィードバックがポジティブフィードバックに切り替わります。その結果、下垂体からLHが急増するLHサージが起こり、およそ24〜36時間後に排卵に至ります。
覚えるポイント
- 卵胞期は「FSH→卵胞発育→顆粒膜細胞からエストロゲン→子宮内膜の増殖期・基礎体温の低温相」です。
- 排卵は「高濃度エストロゲンのポジティブフィードバック→LHサージ→約24〜36時間後に排卵」です。エストロゲンがポジティブフィードバックとして働くのは排卵直前だけです。
- 黄体期は「黄体からプロゲステロン(とエストロゲン)→分泌期・基礎体温の高温相(0.3〜0.5℃上昇)」です。
- 黄体の寿命は約14日で、妊娠しなければ白体になり月経が起こります。妊娠すればhCGで妊娠黄体として維持されます。
- 黄体期はほぼ14日で一定で、周期の長さの違いは卵胞期の長さの違いによります。正常な月経周期は25〜38日です。
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