112PM065|第112回 看護師国家試験 過去問
Aさん(70歳、男性)は神経因性膀胱 neurogenic bladder のため、膀胱留置カテーテルを挿入し在宅療養を開始することになった。Aさんが行う膀胱留置カテーテルの管理で適切なのはどれか。
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正解: 1
正答
1.外出前に蓄尿バッグの尿を廃棄する。
この問題のポイント
膀胱留置カテーテルを入れたまま在宅療養を始める高齢男性に、本人が日常生活の中で行う管理を問う問題です。手がかりは「在宅療養」「Aさんが行う」「男性」の3点です。外出を含む生活の場面で、カテーテルの牽引、尿の逆流、尿路感染をどう防ぐかという視点と、男性のカテーテル固定部位の知識が判断の鍵になります。
解説
神経因性膀胱は、排尿をつかさどる神経(脳・脊髄・末梢神経)の障害によって、膀胱に尿をためる機能や尿を出す機能が損なわれた状態です。糖尿病による末梢神経障害、脊髄損傷、骨盤内の手術後などで排出が障害されると、尿閉や多量の残尿が生じて導尿が必要になります。可能であれば清潔間欠自己導尿が勧められますが、手技が難しい場合などには膀胱留置カテーテルが選ばれます。Aさんは留置カテーテルで在宅療養を始める段階で、退院前に看護師が本人へ指導する場面と考えられます。
問われているのは「Aさんが行う」管理、つまり本人が家庭や外出先で日常的に実行する内容です。また、男性であることが固定部位を判断する条件になります。
在宅での管理の原則
長期留置の最大の合併症は、カテーテル関連尿路感染です。細菌が入る経路は、カテーテルの外側(尿道との隙間)と、回路の内側の2つです。内側からの侵入は、接続部の開放、排液口の汚染、バッグからの尿の逆流によって起こります。そのため、次の点を指導します。
- 蓄尿バッグは常に膀胱より低い位置に置き、床に直接つけない
- チューブを折り曲げたり、体の下敷きにしたりしない
- 蓄尿バッグが満杯になる前に尿を捨てる。排液口は容器や便器に触れさせず、排液後は排液口を拭いて元に戻す。操作の前後には手を洗う
- 閉鎖式の回路はむやみに開放しない
- 陰部とカテーテル挿入部を毎日洗浄して、清潔に保つ
- 水分制限がなければ十分に水分をとり、尿量を保つ
- 尿の量・色・混濁・血尿を観察する。発熱、尿の混濁、尿が出ない・下腹部が張る、カテーテル周囲からの尿漏れ、痛みがあれば連絡する
外出前に尿を捨てる理由
外出中は、尿を清潔に捨てられる場所や機会が限られます。尿がたまったバッグは重くなってカテーテルを引っ張り、尿道の痛みや損傷、抜けの原因になります。また、満杯に近いバッグでは尿が流れ出にくく、回路内に尿がとどまって逆流の危険が高まります。外出前にバッグを空にしておけば、軽くて持ち運びやすく、膀胱より低い位置にも保ちやすくなります。本人が自分で確実に実行でき、日常生活の中で感染と事故を防ぐ具体的な管理なので、選択肢1が適切です。
男性の固定部位
男性の尿道は、陰茎の付け根(陰茎陰囊角部)で曲がっています。カテーテルを大腿に向けて下向きに固定すると、この曲がり角の尿道壁がカテーテルで持続的に圧迫され、潰瘍や尿道皮膚瘻を起こすことがあります。そのため男性では、陰茎を上向き(腹部側)にして下腹部に固定し、尿道の屈曲を緩やかにします。女性は尿道が短くまっすぐなので、大腿内側に固定します。どちらの場合も、体を動かしたときに引っ張られないようゆとりをもたせます。テープを貼る位置は少しずつずらし、皮膚トラブルを防ぎます。
選択肢の確認
1.外出前に蓄尿バッグの尿を廃棄する。:正答。外出中は尿を清潔に捨てる機会が限られます。たまった尿の重さでカテーテルが引っ張られたり、満杯に近いバッグで流出が妨げられて逆流が起きたりしやすくなります。外出前に空にしておくことは、本人が日常的に実行できる感染予防と事故予防の管理です。
2.カテーテルは大腿の内側に固定する。:大腿内側への固定は女性の方法で、男性のAさんには当てはまりません。男性で下向きに大腿へ固定すると、陰茎陰囊角部の尿道がカテーテルに圧迫され、潰瘍や尿道皮膚瘻の原因になります。そのため、陰茎を上向きにして下腹部に固定します。性別による固定部位の違いは頻出なので、理由とセットで覚えてください。
3.蓄尿バッグに遮光カバーをかぶせる。:在宅で排液として捨てる尿を光から守る必要はなく、蓄尿バッグの遮光は管理の目的に含まれません。遮光カバーが必要になるのは、光で分解・変質する一部の注射薬などです。尿の色・混濁・血尿・量は、感染や閉塞に早く気づくための重要な観察項目で、本人や家族が日頃から目で確認できることが大切です。人目を避ける目的で布製のカバーを使うことはありますが、遮光のためではなく、観察するときはカバーを外して確認します。
4.カテーテルと蓄尿バッグの接続は外さない。:接続部をむやみに開放しないことは、閉鎖式の回路を保って内側からの細菌侵入を防ぐ重要な原則で、考え方の方向性は正しいものです。ただし公式正答は選択肢1のみで、この選択肢は正答とされていません。「外さない」と断定した表現は、蓄尿バッグが破損したり汚れたりして交換が必要になったときなど、接続を外す場面がある実際の管理とは一致しません。その場合は手指衛生を行い、接続部を消毒して清潔操作で外し、つなぎ直します。「原則として閉鎖式を保ち、開放が必要なときは清潔に行う」と理解したうえで、この問題では、本人が行う管理として明確に適切な選択肢1を選びます。
覚えるポイント
- 蓄尿バッグは膀胱より低く保ち、床につけない。満杯になる前と外出前に尿を捨て、排液口を汚染しない。
- 固定部位は、男性が陰茎を上向きにして下腹部、女性が大腿内側。男性を下向きに固定すると、陰茎陰囊角部が圧迫されて尿道皮膚瘻の原因になる。
- 閉鎖式の回路は原則として開放しない。開放が必要なときは、手指衛生と接続部の消毒を行って清潔に操作する。
- 尿の色・混濁・血尿・量は重要な観察項目。遮光は不要で、観察を妨げない。
- 発熱、尿の混濁、尿が出ない・下腹部が張る、尿漏れ、痛みは、連絡すべき徴候として本人と家族に伝える。
- 神経因性膀胱による排出障害では、可能なら清潔間欠自己導尿が勧められる。留置カテーテルは感染リスクを踏まえて管理する。
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