37Q122|第37回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題120から問題122までについて答えなさい。 〔事 例〕 Dさん(男性、障害支援区分4)は、ベッカー型筋ジストロフィー(Becker muscular dystrophy)である。自宅で家族と生活をしている。Dさんは、食事は自立しているが、排泄{はいせつ}、入浴に介護が必要である。歩行はできず、移動は電動車いすを使用している。絵を描くことが趣味であり、日中は創作活動に取り組んでいる。 これまでDさんは自宅で家族の介護を受けながら生活してきたが、Dさんの身体機能の低下に伴い、家族の介護負担が増えたため、居宅介護を利用することになった。 Dさんが居宅介護を利用してから数年が経過し、Dさんの身体機能は徐々に低下して、着替えに時間がかかるようになった。Dさんは自分のことはできるだけ自分で行いたいという思いがあり、時間がかかっても自分で着替えをしていた。 ある日、DさんはF介護福祉職に、「着替えをすると疲れてしまい、絵を描くことができない」とつぶやいた。F介護福祉職は、「着替えは私たちや家族の介護を利用して、Dさんは好きな絵を描いたらいいのではないですか」と伝えた。その後、Dさんは介護福祉職と家族の介護を利用して、短時間で着替えを済ませ、絵を描くことに専念できるようになった。 F介護福祉職が発言した自立観を示した人物として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.エド・ロバーツ(Roberts, E.)
この問題のポイント
「自立」を、日常生活動作をすべて一人で行うことと考えるのか、それとも必要な支援を自分で選び、望む生活を実現することと考えるのかを問う問題です。
エド・ロバーツは自立生活運動を進め、介助を受けることと自立は矛盾せず、本人が生活の主導権をもち、時間や力を自分の望むことに使えることが自立であるという考え方を示しました。
解説
Dさんは、「自分のことはできるだけ自分で行いたい」という思いから、時間がかかっても自分で着替えていました。しかし、着替えで疲れ切ってしまい、大切にしている絵を描けなくなっています。
ここで重要なのは、着替えを一人で完了することだけを自立の目標にしないことです。介護福祉職や家族の介助を本人が選んで利用し、短時間で着替えを終えれば、残った時間と体力を創作活動に使えます。これは、介助を生活の手段として活用しながら、本人が自分の生活を決めるという自立生活の考え方です。
エド・ロバーツは、重度の障害がある当事者としてアメリカの自立生活運動を進めた人物です。自立とは、他人の手を一切借りないことではなく、必要な支援を自分で選択・管理し、どこで誰とどのように暮らすかを自分で決めることだと考えます。
事例では、F介護福祉職が介助の利用を提案し、その後、Dさんが実際に介助を利用して絵を描くことに専念できるようになっています。最終的に何を介助してもらい、何に時間を使うかを決める主体はDさんです。
ただし、介護者が「絵を描く方がよい」と一方的に決定してはいけません。Dさんが着替えを自分で行うことにどのような意味を感じているのかを確認し、部分介助、衣服や自助具の工夫、介助する時間帯など複数の方法を示して、本人が選べるようにします。
ひっかけポイント
自立は「何でも自分一人ですること」ではありません。必要な支援を利用しながら、本人が生活の選択と決定を行い、望む活動に参加できることも自立です。
介護実践でのポイント
できる動作を奪わないことと、自力での実行を無理に求めないことの両方が大切です。本人が優先したい活動、疲労の程度、介助を受けたい部分を確認し、支援方法を一緒に決めます。
選択肢の確認
1.ヴィクトール・フランクル(Frankl, V.)
誤り。
フランクルは、人生の意味を見いだすことを重視するロゴセラピーで知られています。必要な介助を活用して自己決定による生活を実現する自立生活運動の人物ではありません。
2.バンク-ミケルセン(Bank-Mikkelsen, N.)
誤り。
バンク-ミケルセンは、障害のある人ができるだけ一般の人と同じ生活条件で暮らせるようにするノーマライゼーションの理念を発展させた人物です。事例の自立観を直接示した人物ではありません。
3.エド・ロバーツ(Roberts, E.)
正答。最も適切です。
エド・ロバーツは自立生活運動を進め、介助を受けながらでも、本人が生活の主導権をもち、時間や力を望む活動に使うことを自立ととらえました。Dさんが着替えの介助を利用して創作活動に専念する事例と一致します。
4.フェリックス・バイステック(Biestek, F.)
誤り。
バイステックは、個別化、意図的な感情表出、受容、自己決定など、援助関係におけるケースワークの原則を示した人物です。自立生活運動におけるこの自立観を示した人物ではありません。
5.ミルトン・メイヤロフ(Mayeroff, M.)
誤り。
メイヤロフは、ケアを相手の成長や自己実現を助ける営みとして論じた人物です。介助を活用して本人が生活を自己決定するという自立生活運動の人物ではありません。
覚えるポイント
エド・ロバーツは、アメリカの自立生活運動を代表する人物です。
自立とは、すべての動作を一人で行うことではなく、必要な支援を自分で選び、生活を自己決定することです。
介助を利用することは、自立の反対ではありません。
本人が大切にする活動へ時間と体力を使えるように支援方法を調整します。
介護者が代わりに価値を決めるのではなく、本人の選択と同意を支えることが重要です。