113D059|第113回 歯科医師国家試験 過去問
73歳の女性。義歯が当たって痛いことを主訴として来院した。7年前に下顎部分床義歯を製作し問題なく使用していたが、最近になって嚙みしめると下顎右側舌側部に疼痛が生じるようになったという。検査の結果、支台装置の適合に問題はなかった。初診時の義歯装着時の口腔内写真(別冊No. 14A)、義歯撤去時の口腔内写真(別冊No. 14B)及び手圧による適合試験の写真(別冊No. 14C)を別に示す。 原因として考えられるのはどれか。1つ選べ。

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正解: d
正答
d
この問題のポイント
遊離端義歯は、支台歯側の支持と被圧変位量の大きい顎堤粘膜側の支持に差があります。咬合力や手圧で義歯床が支台歯を支点に回転沈下し、舌側顎堤を圧迫して疼痛を起こしています。
解説
歯根膜支持の支台歯はほとんど沈下しない一方、遊離端義歯床下の粘膜は荷重で圧縮されます。長期使用中に顎堤吸収が進むと床下粘膜との支持が失われ、レスト付近を支点として遠心義歯床が大きく沈下・回転します。この回転により床縁が舌側粘膜へ食い込み、安静時よりも嚙みしめ時に疼痛が出ます。
支台装置の適合が良好でも、床下組織の変化は独立して起こります。適合試験は単に一面の隙間を見るだけでなく、一方へ手圧を加えた際の反対側の浮き上がりや床縁の移動を観察します。処置では咬合、床の適合・支持域、顎堤変化を評価し、リラインまたは義歯再製を検討します。
画像の確認
実画像では、Aで下顎右側に遊離端型の部分床義歯が装着され、金属レスト・クラスプと長い義歯床がみられます。Bでは右側舌側顎堤に限局した発赤・潰瘍があり、床縁による圧迫部位と一致します。Cは手圧による適合試験後に撤去した義歯で、床粘膜面に白色調の適合試験材が残っています。その分布から床と顎堤の接触を評価し、口腔内所見と合わせて荷重時の沈下・回転を判断します。
選択肢の確認
a.床の不適合
誤り。
静的な床内面の局所的不適合だけでなく、荷重時の支点回りの動きが示されており、直接の機序は回転沈下です。
b.維持力の低下
誤り。
義歯の脱離が主訴ではなく、嚙みしめ時に床が沈下して粘膜を圧迫しています。
c.人工歯の咬耗
誤り。
人工歯咬耗は咬合高径や接触の変化を生じますが、手圧試験で示される床の回転を直接説明しません。
d.義歯の回転沈下
正しい。
支台歯を支点として遊離端床が粘膜側へ回転・沈下し、舌側床縁が疼痛部を圧迫します。
e.リンガルバーの変形
誤り。
写真で大連結子の明らかな変形はなく、支台装置の適合にも問題がありません。
覚えるポイント
- 遊離端義歯=歯根膜と粘膜の被圧変位量差→回転沈下です。
- 長期使用では顎堤吸収により床の支持が失われます。
- 疼痛部だけ削らず、咬合・適合・動揺を評価してリラインや再製を検討します。
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