113D080|第113回 歯科医師国家試験 過去問
55歳の男性。下顎右側第一大臼歯欠損による咀嚼困難を主訴として来院した。5年前に下顎右側第一大臼歯を抜歯し、そのままにしていたという。診察の結果、下顎右側第二大臼歯の前処置後に固定性ブリッジを装着することとした。初診時の口腔内写真(別冊No. 28A)、エックス線画像(別冊No. 28B)及び前処置中の口腔内写真(別冊No. 28C)を別に示す。 前処置により期待できるのはどれか。2つ選べ。

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正解: d・e
正答
d、e
この問題のポイント
欠損へ傾斜した下顎右側第二大臼歯を矯正的に整直しています。歯軸を起こすことで咬合力を長軸方向に受けやすくなり、ブリッジの共通着脱方向を作る際の過剰切削と露髄を防げます。
解説
長期間放置された第一大臼歯欠損では、遠心側の第二大臼歯が欠損側へ近心傾斜しやすくなります。このまま固定性ブリッジの支台歯にすると、近心支台歯と平行な着脱方向を得るために傾斜歯の歯冠を大きく削る必要があり、歯髄へ接近して露髄する危険があります。また、咬合力が歯の長軸から外れて側方力として作用し、歯周組織に不利です。
矯正的アップライトによって第二大臼歯の歯軸を整えると、咬合圧を長軸方向へ伝えやすくなり、支台歯としての咬合圧負担能力が向上します。同時に支台歯間の軸の不一致が小さくなり、形成量を抑えて露髄を防止できます。ただし、歯根の長さと歯槽骨支持が直接増えるわけではないため、歯冠歯根比を改善する処置とはいえません。
画像の確認
実画像では、第一大臼歯欠損部へ下顎右側第二大臼歯が著しく近心傾斜し、エックス線像でも歯軸が欠損側へ倒れています。前処置中の写真では、近心支台歯と傾斜大臼歯の間に矯正用ワイヤー装置が入り、第二大臼歯を遠心方向へ起こして歯軸を整直していることが分かります。
選択肢の確認
a.帯環効果の獲得
誤り。
帯環効果は歯冠補綴物が健全歯質を周囲から取り囲むことで得られ、臼歯の整直自体では生じません。
b.歯冠歯根比の改善
誤り。
歯軸は改善しますが、臨床的歯冠長や骨内歯根長を直接変えて歯冠歯根比を改善する処置ではありません。
c.欠損部顎堤の形態改善
誤り。
第二大臼歯の整直が主目的で、欠損部顎堤の増生・形成を行っているわけではありません。
d.咬合圧負担能力の向上
正しい。
歯軸を整えると咬合力が長軸方向へ伝わり、支台歯の負担条件が改善します。
e.支台歯形成時の露髄防止
正しい。
支台歯間の歯軸を揃えることで共通着脱方向を得るための過剰切削を避けられます。
覚えるポイント
- 欠損側へ傾斜した臼歯は、ブリッジ前処置として矯正的にアップライトします。
- 整直により力の長軸伝達と支台歯形成量が改善します。
- 歯軸の改善と歯冠歯根比の改善は別概念です。
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