115C060第115回 歯科医師国家試験 過去問

全身管理医学・全身疾患

82 歳の女性。最近むせるようになったことを主訴として家族と来院した。 7年 前から認知症と診断され、現在全介助であるという。 1年前から食事に時間がかか るようになり、最近ではお茶でよくむせるという。誤嚥性肺炎の既往はない。口腔 清掃状況は良好であった。初診時の摂食姿勢の写真 (別冊No. 22A ととろみをつけ た飲み物の摂食指導後の姿勢の写真 (別冊No. 22B を別に示す。 指導後はむせずに嚥下できた。次に行うのはどれか。 1つ選べ。

115C060の問題画像
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正解: d

正答

d

この問題のポイント

認知症が進行した全介助患者で、薄い液体によるむせが、とろみ付与と姿勢調整で消失しています。安全に摂取できる条件を日常生活へ反映するため、次に食内容の指導を行います。

解説

症例は82歳で、認知症があり全介助です。食事時間が延長し、最近ではお茶でむせています。薄い液体は咽頭へ速く流入するため、嚥下反射の惹起が遅れる患者では気道へ入りやすくなります。

写真では、車椅子のリクライニング角度を調整し、とろみをつけた飲み物を用いたところ、むせずに嚥下できています。とろみをつけると液体の流速が遅くなり、口腔内でまとめやすくなります。

この有効性が確認できたため、次は家族・介護者へ、適切なとろみの程度、一口量、食品形態、摂取ペースなどの食内容の指導を行い、日常の食事へ安全な条件を定着させます。

重度認知症では、嚥下を意識させる複雑な指示や、ブローイング訓練などの能動的訓練を理解・継続することが難しい場合があります。代償的手段を中心に、本人の能力と介助環境に合わせます。

摂食嚥下のポイント
むせが消えたことだけで誤嚥が完全に否定されるわけではありません。呼吸状態、湿性嗄声、食後の痰、発熱、体重変化などを継続して観察します。

画像の確認

実画像では、Aで車椅子が軽度リクライニング位、Bで頭頸部を支持したより安定した姿勢へ調整され、とろみを付けた飲料を介助している。姿勢と介助方法がすでに実施されているため、次に食形態・粘度・一口量を指導する正答dへつながる。

選択肢の確認

a.横向き嚥下
誤り。
咽頭残留の左右差がある場合などに用いる代償法です。本症例では、とろみと姿勢調整で安全に嚥下できており、追加する第一選択ではありません。

b.嚥下の意識化
誤り。
意識的に強く嚥下するなどの指示は、理解と学習が必要です。進行した認知症で全介助の本症例には適用しにくい方法です。

c.食環境の改善
誤り。
落ち着いた環境や介助方法の調整は重要ですが、今回の評価で直接有効性が確認されたのは液体のとろみと食形態です。次に優先するのは食内容の指導です。

d.食内容の指導
正答。次に行います。
とろみ付与でむせが消失したため、家族・介護者へ適切な粘度、食品形態、一口量などを指導し、日常の食事へ反映します。

e.ブローイング訓練
誤り。
呼気や鼻咽腔閉鎖機能への訓練として用いることがありますが、認知症が進行した全介助患者で、薄い液体によるむせへ直ちに行う方法ではありません。

覚えるポイント

  • 薄い液体は流れが速く、嚥下反射が遅れる患者では誤嚥しやすくなります。
  • とろみで安全性が改善したら、介護者へ食内容と粘度を指導します。
  • 認知症では能動訓練より、姿勢・食形態・介助法などの代償的対応を優先します。

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