119D035|第119回 歯科医師国家試験 過去問
84 歳の男性。摂食嚥下機能の精査を希望して近医からの紹介があり家族ととも に来院した。4 年前に脳梗塞を発症してから食事量が減少していたがそのままにし ていたところ、2 か月前に誤嚥性肺炎を発症して気管切開が行われ、現在も気管カ ニューレが挿入されている。誤嚥性肺炎発症後、栄養は胃瘻で管理されている。口 腔内の診察では、特記すべき問題がなかった。嚥下造影検査時、嚥下後のむせは認 められなかった。嚥下障害のスクリーニングの結果を表に示す。とろみ付き液体嚥 下時の嚥下造影検査の写真(別冊No. 7)を別に示す。 項 目 指 標 結 果 RSST 2 回以下で問題あり 4 回 MWST 3 点以下で問題あり 5 点 咳テスト むせなしで陽性 陽性 摂食嚥下機能の管理にあたって注意すべきなのはどれか。2 つ選べ。

解答・解説を見る
正解: b・d
正答
b、d
この問題のポイント
むせがないのに咳テストが陽性であることから不顕性誤嚥に注意します。気管切開患者では咳嗽力が低下し、誤嚥物を十分に喀出できない可能性もあります。
解説
症例では、嚥下後のむせを認めませんが、咳テストは陽性です。咳テストは不顕性誤嚥のスクリーニングに用いられ、刺激物を吸入しても咳が誘発されない場合に咳反射低下を疑います。むせがないことは誤嚥がないことを意味しません。
また、気管カニューレ留置、長期非経口栄養、脳梗塞後という背景では、喉頭感覚や咳嗽力の低下があり得ます。誤嚥した物質を喀出できなければ、誤嚥性肺炎の危険が高まります。
全身管理上の注意点
経口摂取の可否はスクリーニングだけで決めず、嚥下造影検査・嚥下内視鏡検査、呼吸状態、覚醒、栄養状態を総合します。
画像の確認
実画像の嚥下造影像ではとろみ付き造影剤が咽頭から喉頭・気道側へ流入しており、設問では嚥下後のむせがない。これは不顕性誤嚥を示し、気管切開・脳梗塞後では誤嚥物を十分に喀出できない危険にも注意が必要である。
選択肢の確認
a.気道狭窄
誤り。
気管切開患者では気道管理上の問題に注意しますが、提示された検査から直接導かれる中心的問題は気道狭窄ではありません。
b.不顕性誤嚥
正しい。
むせがない一方で咳テストが陽性であり、誤嚥しても咳が出ない不顕性誤嚥に注意が必要です。
c.絞扼反射の消失
誤り。
絞扼反射の有無は嚥下安全性と必ずしも一致せず、本症例で示された主要な管理上の問題ではありません。
d.誤嚥物の喀出困難
正しい。
気管切開や神経障害によって咳嗽力が低下すると、誤嚥物を十分に喀出できない危険があります。
e.唾液分泌量の増加
誤り。
長期経管栄養や加齢では唾液分泌量が増加するとは限らず、むしろ口腔乾燥や分泌物管理が問題になることがあります。
覚えるポイント
- むせがなくても不顕性誤嚥を否定できません。
- 咳テストは咳反射低下のスクリーニングに用います。
- 気管切開患者では誤嚥物の喀出能力も評価します。