60AM016|第60回 作業療法士国家試験 過去問
30 歳の男性。会社員。中学生の頃より人前で話すときに緊張が強くなり、人と 会うのを避けるようになった。大学卒業後に就職し、顧客との交渉が多い部署に配 属となった。プレゼンテーションの際には動悸、発汗および腹痛が出現し、うまく 行えなかった。仕事の業績も落ち込んだため精神科を受診した。 最も考えられるのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 2
正答
2.社交不安症〈社交不安障害〉
この問題のポイント
対人関係における緊張と回避行動、特に人前で話す際の身体症状(動悸、発汗、腹痛)が中学生時代から継続しており、特定の社会的状況(プレゼン)で発現する点が重要です。これらの症状が社会的場面に限定され、他者からの評価への恐怖が中心であることが、診断の鍵となります。
解説
本症例は、中学生の頃から人前で話すときに強い緊張を経験しており、人と会うのを避ける行動パターンが確認されています。職場で顧客との交渉が頻発する部署に配属されたこと、プレゼンの際には動悸、発汗、腹痛といった自律神経症状が現れ、その結果としてプレゼンを回避している点は、社交不安症(社交不安障害)の典型的な臨床像です。診断基準では、社会的・対人的情況における「他者からの評価への恐怖」や「恥ずかしさへの恐怖」が主な特徴とされ、この患者の経過と症状はその基準に一致しています。
作業療法の視点から見ると、この障害は日常生活や職業活動におけるADL(日常生活機能)・IADL(生活支援機能)の維持に支障を及ぼしており、特に「社会的参加の機会を減少させる行動パターン」に注目することが介入の第一歩となります。認知行動療法(CBT)が第一選択となることから、患者の「対人行動における認知歪み」の改訂が重要です。
選択肢の確認
1.持続性抑うつ症〈気分変調症〉:2年以上の慢性的な抑うつ気分が主訴だが、本症例ではそのような記述がない。対人緊張が主な課題であるため不適切。
2.社交不安症〈社交不安障害〉:社会的状況での恐怖、身体症状、回避行動が継続的で、経過が中学生時代から一致。正解。
3.身体症状症:身体症状が持続的で、社会的状況に限定されるが、その背景にある「対人恐怖」が明確でないため不適切。
4.全般不安症〈全般性不安障害〉:多様な事柄への心配が特徴だが、本症例は「人前での話す場面」に限定されているため鑑別可能。
5.パニック症〈パニック障害〉:予期しないパニック発作が特徴だが、本症例はプレゼンという特定の状況で発現しており、予期しない発作ではない。
覚えるポイント
「人前で話す→緊張・身体症状→回避行動→中学生時代からの継続」は、社交不安症の診断に最も適したパターンです。作業療法では、その社会的行動の再構築を支援することが、生活の質向上につながります。