第108回

108AM038|第108回 保健師国家試験 過去問

2つ選択

健康増進法に基づく市町村の役割はどれか。2つ選べ。

解答・解説を見る

正解2・3

正答

2.がん検診の実施
3.健康増進計画の策定

この問題のポイント

「健康増進法に基づく」と「市町村の役割」という2つの条件で選択肢を絞る問題です。まず根拠法が健康増進法かどうかを確かめ、次に実施主体が一般の市町村か、それとも都道府県や医療保険者かを確かめます。がん検診と市町村健康増進計画は、健康増進法で市町村に割り当てられた役割です。一方、特定保健指導は高齢者医療確保法に基づく医療保険者の役割であり、特定給食施設の指導と受動喫煙防止の指導は都道府県知事(保健所設置市・特別区では市長・区長)の権限です。

解説

問題文の手がかり

問題文は「健康増進法に基づく」と根拠法を指定しています。そのため、市町村の保健師が実際に関わっている業務でも、根拠法が別の法律であれば除外します。また「市町村」は、保健所を持たない一般の市町村と読み取ります。保健所の権限に属する業務は、この問題では都道府県側の役割として整理します。

健康増進法の全体像と役割分担

健康増進法は2002年に制定され、2003年に施行されました。栄養改善法の内容を引き継ぎ、国民の健康増進を総合的に進めるための基本的な事項を定めています。国・都道府県・市町村の役割は次のとおりです。

  • 国:厚生労働大臣が基本方針を定めます。出題当時の基本方針は健康日本21(第二次)で、現在は2024年度から健康日本21(第三次)が運用されています。国民健康・栄養調査も厚生労働大臣が行い、調査の実務は都道府県・保健所設置市・特別区が担います。
  • 都道府県:都道府県健康増進計画の策定(義務)を担います。保健所を通じて、専門的な栄養指導、特定給食施設への指導、受動喫煙防止に関する指導・勧告・命令なども行います。保健所設置市・特別区では、これらの権限を市長・区長が持ちます。
  • 市町村:市町村健康増進計画の策定(努力義務)を担います。住民からの生活習慣に関する相談への対応、栄養指導その他の保健指導、健康増進事業の実施も市町村の役割です。

市町村の健康増進事業とがん検診

市町村は、健康手帳の交付、健康教育、健康相談、訪問指導などを行います。これに加えて、健康増進法第19条の2と厚生労働省令に基づき、次の事業の実施に努めることとされています。

  • がん検診
  • 歯周疾患検診
  • 骨粗鬆症検診
  • 肝炎ウイルス検診
  • 特定健診の対象とならない40歳以上の人(生活保護受給者など)への健康診査・保健指導

2008年度に老人保健法が高齢者医療確保法へ改められました。このとき、基本健康診査は医療保険者が行う特定健康診査・特定保健指導へ切り替わり、市町村の検診事業は健康増進法に位置づけられました。この経緯を知っておくと、「メタボ健診は保険者、がん検診は市町村」という区別を理解しやすくなります。

市町村健康増進計画

健康増進法第8条は、都道府県計画と市町村計画を次のように定めています。

  • 都道府県は、基本方針を勘案して都道府県健康増進計画を定めるものとされています(義務)。
  • 市町村は、基本方針と都道府県健康増進計画を勘案して市町村健康増進計画を定めるよう努めるとされています(努力義務)。

保健師は、地域診断で健康課題を明らかにし、計画に目標と指標を設定して、事業評価につなげます。この一連のPDCAサイクルで中心的な役割を担います。

実践とのつながり

市町村の保健師は、市町村国保の加入者への特定保健指導や、飲食店の受動喫煙に関する住民からの相談など、多くの場面に関わります。しかし、どの法律に基づき、どの主体の権限で行う業務なのかを区別できないと、住民を適切な窓口につなげられません。根拠法と実施主体をセットで押さえることが、制度問題の基本です。

選択肢の確認

1.特定保健指導:高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、医療保険者が40〜74歳の加入者に対して行う保健指導です。特定健康診査の結果から、内臓脂肪の蓄積とリスク要因の数に応じて、動機付け支援と積極的支援に階層化して実施します。市町村国保の加入者には市町村が実施しますが、これは国保の保険者という立場で行うもので、根拠法は健康増進法ではありません。「市町村の保健師が担当している業務」と「健康増進法に基づく市町村の役割」を取り違えやすい選択肢です。

2.がん検診の実施:正答。健康増進法第19条の2と厚生労働省令により、がん検診は市町村が実施に努める健康増進事業に位置づけられています。国の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」では、胃・子宮頸・肺・乳・大腸の5つのがんについて、対象年齢と受診間隔が示されています。がん対策基本法は、がん対策全体の理念や国・地方公共団体の責務を定める法律です。住民検診を実施する根拠は健康増進法にあるという点がよく問われます。

3.健康増進計画の策定:正答。健康増進法第8条により、市町村は国の基本方針と都道府県健康増進計画を勘案して、市町村健康増進計画を定めるよう努めることとされています。都道府県計画は義務、市町村計画は努力義務という違いも頻出です。

4.特定給食施設に対する指導:特定給食施設への指導・助言、勧告・命令、立入検査は、都道府県知事(保健所設置市・特別区では市長・区長)の権限であり、一般の市町村の役割ではありません。特定給食施設とは、特定かつ多数の者に継続的に1回100食以上または1日250食以上の食事を提供する施設です。設置者は、事業開始から1か月以内に都道府県知事へ届け出ます。実務は栄養指導員が担い、医師または管理栄養士の資格を持つ都道府県などの職員から任命されます。

5.飲食店における受動喫煙の防止に関する指導:2018年改正健康増進法(2020年4月全面施行)により、飲食店などの第二種施設は原則屋内禁煙となりました。違反への対応は、都道府県知事(保健所設置市・特別区では市長・区長)が行います。禁煙場所で喫煙する者には指導を行い、従わなければ喫煙の中止や禁煙場所からの退出を命じることができます。この命令に違反すると過料の対象です。施設の管理権原者には指導と勧告を行い、勧告に従わなければその旨を公表し、さらに命令を出すことができます。この命令に違反した場合も過料の対象です。勧告と公表は管理権原者に対する措置で、喫煙者に対する措置は指導と命令だけです。市町村も「国及び地方公共団体」として、受動喫煙に関する知識の普及や意識の啓発に努める責務はありますが、施設への指導権限は持ちません。「啓発」と「指導」の違いがひっかけになります。

覚えるポイント

  • 健康増進法に基づく市町村の役割は、市町村健康増進計画の策定(努力義務)、生活習慣相談・保健指導、健康増進事業(がん検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、肝炎ウイルス検診、生活保護受給者などの健康診査)です。
  • 都道府県健康増進計画は義務、市町村健康増進計画は努力義務です。国の基本方針は健康日本21で、出題当時は第二次、2024年度からは第三次です。
  • 特定健康診査・特定保健指導は、高齢者医療確保法に基づき医療保険者が40〜74歳の加入者に実施します。市町村国保の加入者に市町村が実施するのは、保険者としての立場です。
  • 特定給食施設(継続的に1回100食以上または1日250食以上)への指導と受動喫煙防止の措置は、都道府県知事(保健所設置市・特別区では市長・区長)の権限です。受動喫煙防止の措置は、喫煙者には「指導→命令→過料」、管理権原者には「指導→勧告→公表→命令→過料」の順です。
  • 出題当時のがん検診の指針は、胃がん50歳以上2年に1回(胃部エックス線は40歳以上年1回も可)、子宮頸がん20歳以上2年に1回、肺がん40歳以上年1回、乳がん40歳以上2年に1回、大腸がん40歳以上年1回です。2024年度からは、子宮頸がん検診で30〜60歳にHPV検査単独法(5年に1回)も選べるようになりました。
  • 制度問題は「根拠法」と「実施主体」の2段階で確認すると、ひっかけを見抜けます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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