第108回
108AM037|第108回 保健師国家試験 過去問
割合の差の検定について正しいのはどれか。2つ選べ。
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正解3・5
正答
3.クロス集計表は有用である。
5.χ2〈カイ2乗〉検定で有意差を検定する。
この問題のポイント
割合の差の検定が扱うデータの種類と、使う表・検定法を問う問題です。手がかりは「割合」という言葉です。割合は「あり・なし」などのカテゴリーに当てはまる人数を数えて求めるので、扱うのは質的変数です。質的変数どうしの関連はクロス集計表に整理し、カイ2乗検定で判定します。回帰分析・相関係数・散布図は量的変数どうしの関係をみる道具だと区別できるかが鍵です。
解説
統計手法は、扱う変数の種類で選びます。
- 質的変数(カテゴリー変数):性別、地区、喫煙の有無、健診受診の有無など。名義尺度や順序尺度にあたり、集計すると人数と割合(%)で表します。
- 量的変数:年齢、体重、血圧値、BMIなど。間隔尺度や比尺度にあたり、平均値や標準偏差で要約できます。
割合の差の検定は、2つ以上の群で、ある特性をもつ人の割合を比べる検定です。たとえば次のような比較が該当します。
- A地区とB地区で喫煙者の割合に差があるか
- 教室参加群と非参加群で禁煙成功者の割合に差があるか
群分け(地区、参加の有無)も結果(喫煙の有無、禁煙成功の有無)もカテゴリーです。つまり、質的変数と質的変数の関連を調べていることになります。
このようなデータは、まずクロス集計表(分割表)に整理します。行に群を、列に結果のカテゴリーをとり、各マスに該当する人数(観察度数)を入れます。2群と2カテゴリーなら2×2表です。群ごとの割合もこの表から計算でき、検定もこの表の度数をもとに行います。
カイ2乗検定は次の手順で進めます。
- 帰無仮説を「群によって割合に差がない(2つの変数は独立である)」と置きます。
- 帰無仮説が正しいとしたら各マスに入るはずの人数を期待度数といいます。求め方は「そのマスの行合計×列合計÷総数」です。
- 各マスで(観察度数−期待度数)²÷期待度数を計算し、合計したものがカイ2乗値です。
- 自由度(行数−1)×(列数−1)のカイ2乗分布に照らしてp値を求めます。p値が有意水準(通常5%)未満なら帰無仮説を棄却し、「有意差あり」と判断します。2×2表の自由度は1で、5%水準の境界値は3.84です。
具体例で確かめます。A地区100人中喫煙者30人(30%)、B地区100人中喫煙者20人(20%)とします。全体では200人中50人(25%)が喫煙者なので、期待度数は両地区とも喫煙者25人、非喫煙者75人です。カイ2乗値(連続性の補正なし)は次のとおりです。
(30−25)²/25+(20−25)²/25+(70−75)²/75+(80−75)²/75≒2.67
これは3.84に届かないため、5%水準で有意差があるとはいえません。10ポイントの差があっても、人数が少なければ偶然のばらつきの範囲と判断されることがあります。
期待度数が小さいマス(目安として5未満)があると、カイ2乗検定の近似が不正確になります。その場合はフィッシャーの正確確率検定を用います。
量的変数の場合は道具が異なります。2つの量的変数(例:BMIと収縮期血圧)の関係は、次の順で調べます。
- 散布図で点の並び方を確認する
- 直線的な関連の強さを相関係数で示す
- 一方から他方を予測・説明する式を回帰分析で求める
選択肢1・2・4は、いずれもこちらの系統の道具です。また、量的変数の平均値を2群で比べる場合はt検定を使います。「割合の差」と「平均値の差」でも検定法が変わります。
保健師は地区診断や事業評価で、割合を比べる場面が多くあります。たとえば地区別の健診受診率や、事業参加群と非参加群の行動変容の割合です。見かけの差が偶然の範囲を超えるかはカイ2乗検定で確かめます。ただし、有意差は差の大きさや因果関係を示すものではありません。年齢構成などの交絡の影響もあわせて考える必要があります。
選択肢の確認
1.回帰分析で用いる。:回帰分析は、目的変数を説明変数で表す式を求め、予測や影響の大きさの推定に用いる手法です。代表的な線形回帰は、血圧値のような量的変数を目的変数とし、散布図の点に直線をあてはめるイメージです。2群の割合を比べる割合の差の検定とは、目的も手順も異なります。なお、目的変数が「あり・なし」の2値の場合はロジスティック回帰分析があり、交絡因子を調整したオッズ比の推定に使われます。ただしこれは多変量解析という別の手法で、割合の差の検定そのものとは区別します。よって誤りです。
2.相関係数が計算できる。:相関係数は、2つの量的変数の直線的な関連の強さと向きを−1〜+1で表す指標です(ピアソンの積率相関係数)。散布図の点が直線に近いほど、絶対値が1に近づきます。割合の差の検定で得られるのはカイ2乗値とp値であり、相関係数は求めません。よって誤りです。順序尺度どうしではスピアマンの順位相関係数を使うこと、相関が強くても因果関係を意味しないことも頻出です。
3.クロス集計表は有用である。:正答。群(例:地区)と結果(例:喫煙の有無)という2つの質的変数を行と列に配置し、各マスに人数を入れることで、群ごとの割合を比べられます。期待度数の計算にも、この表の行合計・列合計・総数を使います。割合の差の検定は、この表を作るところから始まります。
4.検定の際に散布図を用いる。:散布図は、縦軸と横軸に2つの量的変数をとり、一人ひとりのデータを点で打った図です。相関や回帰を分析する前に、関係の形や外れ値を確認するために使います。「あり・なし」のようなカテゴリーは軸上の位置として意味のある値をもたないため、割合の差の検定では散布図を用いません。よって誤りです。割合を比べて示す図には、棒グラフや帯グラフが適しています。
5.χ2〈カイ2乗〉検定で有意差を検定する。:正答。クロス集計表の観察度数と、差がないと仮定したときの期待度数とのずれをカイ2乗値として求めます。そのうえで自由度に応じたカイ2乗分布からp値を出し、有意差を判定します。期待度数が小さいマスがある場合は、フィッシャーの正確確率検定に切り替えます。
覚えるポイント
- 手法は変数の種類で選びます。質的×質的はクロス集計表とカイ2乗検定、量的×量的は散布図・相関係数・回帰分析です。
- 2群の平均値の差はt検定、3群以上の平均値の比較は分散分析、割合の差はカイ2乗検定です。
- 期待度数=行合計×列合計÷総数です。自由度は(行数−1)×(列数−1)で、2×2表は1、5%水準の境界値は3.84です。
- 期待度数が小さいマス(目安5未満)がある場合は、フィッシャーの正確確率検定を用います。
- 相関係数は−1〜+1で直線的関連の強さを示し、因果関係は示しません。有意差も、差の大きさや因果関係を示すものではありません。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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