第109回

109PM001|第109回 保健師国家試験 過去問

一次予防はどれか。

解答・解説を見る

正解2

正答

2.母子健康手帳の交付

この問題のポイント

予防の3段階(一次予防・二次予防・三次予防)の区分を問う基本問題です。見分ける鍵は2つあります。1つは、支援の対象者がすでに病気を持っているかどうかです。もう1つは、支援の目的が発生の防止、早期発見、悪化防止・社会復帰のどれにあたるかです。母子健康手帳は、健康な妊婦と子どもの健康の保持増進を図るものなので、一次予防に当たります。

解説

予防の3段階

予防医学では、疾病の自然史のどの時期に働きかけるかによって、予防を3段階に分けます。自然史とは、健康な時期から病気の始まり、発症・進行を経て、回復または障害に至る流れのことです。この考え方は、リーベル(Leavell)とクラーク(Clark)が示した予防の段階として知られています。

  • 一次予防:疾病の発生そのものを防ぐ段階です。健康増進と特異的予防の2つが含まれます。
    健康増進には、健康教育や、栄養・運動・休養などの生活習慣の改善、生活環境の整備があります。
    特異的予防には、予防接種、事故防止、職業性曝露の防止、妊娠前からの葉酸摂取などがあります。
    対象は主に健康な人です。
  • 二次予防:すでに始まっている疾病を早期に発見し、早期に治療する段階です。症状が出る前に見つけ出す検診やスクリーニングが代表例です。
  • 三次予防:発症後の悪化や再発を防ぎ、機能を回復させて社会復帰を支える段階です。リハビリテーション、職場復帰支援、再発防止のための指導などがあります。

なお、治療による悪化防止(障害の制限)の扱いは教科書によって異なります。二次予防に含める整理と、重症化予防として三次予防に含める整理があります。ただし、どちらの整理でも、発症後の人への介入が一次予防に入ることはありません。

母子健康手帳の位置づけ

母子健康手帳は、母子保健法第16条に基づき、妊娠の届出をした者に市町村が交付するものです。手帳には次の記録が1冊にまとめられています。

  • 妊娠中の健康診査
  • 出産の状態と産後の母体の経過
  • 乳幼児の健康診査
  • 発育の記録
  • 予防接種の記録

これにより、妊娠期から乳幼児期まで一貫した健康管理ができます。さらに手帳には、妊娠中の生活や栄養、出産の準備、育児、事故防止、予防接種などの保健情報も載っています。交付の場面は、保健師などの専門職が妊婦と早い時期に出会う機会です。そこで健康教育や相談を行い、その後の母子保健サービスへつなぎます。

手帳の対象は病気の人ではなく、妊娠した女性とその子どもです。目的は、母子の健康の保持増進と、自ら健康を管理する力を高めることです。これは健康増進そのものなので、一次予防に分類されます。

判断の手順と応用

選択肢ごとに「対象はだれか」「目的は何か」を確認します。この問題の4つの選択肢の目的は、次のように整理できます。

  • がん検診:病気を見つけること
  • 勤務時間の短縮:退院後の生活に戻ること
  • 糖尿病患者への栄養指導:発症後の悪化を防ぐこと
  • 母子健康手帳の交付:健康な母子の健康を守り高めること

一次予防に当たるのは、母子健康手帳の交付だけです。

同じ疾病でも、段階によって予防の区分は変わります。がんの場合は次のとおりです。

  • 一次予防:禁煙支援、子宮頸がんに対するHPVワクチン
  • 二次予防:がん検診
  • 三次予防:術後のリハビリテーション、就労支援

職場のメンタルヘルス対策も同じように整理できます。

  • 一次予防:ストレスチェック制度(主な目的はメンタルヘルス不調の未然防止)
  • 二次予防:不調の早期発見と対応
  • 三次予防:休業者の職場復帰支援

地域でも職域でも、事業を企画・評価するときにはこの区分で活動を整理します。そのため、保健師にとって欠かせない視点です。

選択肢の確認

1.がん検診:症状のない人の中から、がんやその疑いがある人を見つけ出し、早期治療につなげる取り組みです。このため二次予防に当たります。がんの発生そのものを防ぐのは、禁煙やHPVワクチン接種などの一次予防です。「がんの予防」という言葉につられて、検診を一次予防と取り違えないよう注意します。市町村のがん検診は、健康増進法に基づく健康増進事業として行われ、対象年齢や受診間隔は国の指針で定められています。

2.母子健康手帳の交付:正答。妊娠の届出をした人に市町村が交付するものです。妊娠・出産・育児の記録と保健情報を通じて、健康な母子の健康の保持増進を図るため、健康増進としての一次予防に当たります。

3.退院後の勤務時間の短縮:入院治療を受けた人が、体力や病状に合わせて段階的に職場へ戻れるようにする配慮です。社会復帰と再発防止を目的とするため、三次予防に当たります。心の健康問題で休業した労働者の職場復帰支援で行われる短時間勤務や試し出勤も、同じく三次予防の例です。

4.糖尿病患者への栄養指導:すでに糖尿病と診断された人の血糖コントロールを改善する指導です。網膜症・腎症・神経障害などの合併症や病状の悪化を防ぐことが目的で、発症後の介入なので一次予防ではありません。一般には重症化予防として三次予防に分類され、整理の仕方によっては二次予防の悪化防止に含められます。一方、糖尿病を発症していない住民に対して、発症を防ぐための食生活指導を行う場合は一次予防になります。

覚えるポイント

  • 一次予防は、健康増進と特異的予防(予防接種、事故防止、葉酸摂取など)です。対象は主に健康な人です。
  • 二次予防は、早期発見・早期治療です。がん検診やスクリーニングが代表例です。
  • 三次予防は、悪化・再発の防止、リハビリテーション、社会復帰です。職場復帰支援や段階的な勤務時間の調整が例です。
  • 区分は行為の名前ではなく、「対象がすでに病気か」と「目的は何か」で決まります。同じ栄養指導でも、健康な住民への発症予防なら一次予防、糖尿病患者への指導なら悪化防止です。
  • 母子健康手帳は、母子保健法に基づき、妊娠の届出をした者に市町村が交付します。妊娠期から乳幼児期までの記録と保健情報をまとめた、一次予防のための手段です。
  • 同じ疾病でも段階で区分が変わります。がんでは、禁煙・HPVワクチンが一次、がん検診が二次、術後リハビリ・就労支援が三次です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する(medixmatch2025@gmail.com)までお知らせください。確認して修正します。

解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。

学習アプリなら、この問題の解答記録・メモ・暗記カード化を使えます。