第109回

109PM002|第109回 保健師国家試験 過去問

公衆衛生看護の実践で用いられるPDCAサイクルの説明で正しいのはどれか。

解答・解説を見る

正解2

正答

2.継続的な業務の改善を促す取り組みに使用される。

この問題のポイント

PDCAサイクルが何のための道具なのかを、公衆衛生看護で使われるほかの理論やモデルと区別できるかを問う問題です。PDCAサイクルは、計画(Plan)→実施(Do)→評価(Check)→改善(Act)を繰り返し回して、業務や事業の質を高めていくマネジメントの手法です。ほかの選択肢は、介入の車輪、コミュニティ・アズ・パートナー・モデル、医療の質評価の枠組みの説明になっています。選択肢中の「可視化」「視点」「指標」という語に注目すると、どの枠組みを指しているかを読み分けられます。

解説

PDCAサイクルの構造

PDCAサイクルは品質管理の分野で広まった考え方で、デミングの名とともに紹介されることが多い手法です。4つの段階は次のとおりです。

  • Plan(計画):現状と課題を把握し、目標、方法、評価指標を定めます。
  • Do(実施):計画に沿って事業や業務を行います。
  • Check(評価):実施の過程と結果を、計画時に決めた指標で評価します。
  • Act(改善):評価で見えた課題をもとに見直し、次の計画に反映します。

最大の特徴は、Actで終わらずに次のPlanへつながり、サイクルが繰り返し回ることです。1回の点検で終わらせず、回すたびに質を一段ずつ高めていく(スパイラルアップ)ことを目指すため、「継続的な改善」の手法と位置づけられます。

公衆衛生看護での使われ方

保健師の活動では、地域診断で健康課題を明らかにし、目標と評価指標を備えた事業計画を立てます(P)。次に健康教育、健康相談、訪問などの事業を実施し(D)、結果を評価して(C)、内容や対象、方法を見直し、次年度の計画や予算に反映します(A)。

厚生労働省が示した「地域における保健師の保健活動に関する指針」(平成25年)では、保健師の活動の基本的な方向性の一つとして「地域診断に基づくPDCAサイクルの実施」が挙げられています。健康増進計画、母子保健計画、医療保険者のデータヘルス計画、特定健康診査・特定保健指導など、計画に基づく保健事業の多くがPDCAサイクルに沿った運営を前提としています。

Checkの段階では、保健事業の評価で用いる4つの観点が使われます。

  • ストラクチャー(構造):実施体制、人員、予算、関係機関との連携など。
  • プロセス(過程):実施の手順や、対象者の選定・支援方法は適切か。
  • アウトプット(事業実施量):実施回数、参加者数、実施率など。
  • アウトカム(結果):健康状態、行動、検査値などの変化。

正答を導く考え方

PDCAサイクルは、何をどう改善していくかという「進め方の循環」を示すものです。一方、地域をどういう視点で見るか、保健師がどんな介入を行うか、質をどんな数値で測るかといった「中身」を示すものではありません。この区別ができれば、業務の改善を継続的に促す取り組みに使われるという選択肢2が正しいと判断できます。

選択肢の確認

1.公衆衛生看護活動の実践者が行う介入を可視化している。:この記述は、米国ミネソタ州保健局が開発した「公衆衛生介入の車輪(インターベンション・ホイール)」の説明です。この枠組みは、保健師が行う17の介入を、個人・家族、コミュニティ、システムという3つのレベルとともに車輪の形で示し、公衆衛生看護の実践内容を目に見える形にしたものです。PDCAサイクルは管理の循環を示すもので、介入の種類や対象レベルを分類・可視化するものではありません。

2.継続的な業務の改善を促す取り組みに使用される。:正答。PDCAサイクルは、計画・実施・評価・改善を繰り返し回すことで業務や事業の質を継続的に高めるマネジメント手法です。保健活動では、地域診断に基づく計画の立案から評価、次の計画への反映までをつなぐ枠組みとして使われます。

3.コミュニティアセスメントの視点を示している。:地域をアセスメントする視点を示す代表的な枠組みは、アンダーソンとマクファーレンのコミュニティ・アズ・パートナー・モデルです。このモデルは、地域の人々を表すコア(歴史、人口統計、価値観・信念など)と、物理的環境、保健医療と社会福祉、経済、交通と安全、政治と行政、コミュニケーション、教育、レクリエーションの8つのサブシステムから地域を捉えます。地域診断はPDCAのPlanを立てるための前提となる作業ですが、PDCAサイクル自体は地域の何を見るべきかという視点を与えるものではありません。

4.医療の質を評価する指標である。:医療の質の評価では、ドナベディアンが示した構造(ストラクチャー)・過程(プロセス)・結果(アウトカム)の3側面で捉える枠組みがよく知られています。具体的な測定には、クオリティ・インディケーター(臨床指標)などの数値が用いられます。病院の質改善活動でPDCAサイクルが使われるため混同しやすいのですが、PDCAはCheckの段階でこうした指標を活用しながら改善を進める「手順」であって、指標そのものではありません。

覚えるポイント

  • PDCAサイクルは、Plan(計画)→Do(実施)→Check(評価)→Act(改善)を繰り返し、業務や事業の質を継続的に高めるマネジメント手法です。
  • 保健師活動指針(平成25年)では、保健活動の方向性として「地域診断に基づくPDCAサイクルの実施」が示されています。
  • 保健事業評価の4観点は、ストラクチャー・プロセス・アウトプット・アウトカムです。PDCAのCheckで使います。
  • 介入の車輪(インターベンション・ホイール)は、17の介入と3つのレベル(個人・家族、コミュニティ、システム)で公衆衛生看護の介入を可視化したものです。
  • コミュニティ・アズ・パートナー・モデルは、コアと8つのサブシステムで地域をアセスメントする枠組みです。
  • 医療の質評価はドナベディアンの構造・過程・結果で整理します。「管理の循環=PDCA」「地域を見る視点=コミュニティ・アズ・パートナー」「介入の可視化=介入の車輪」「質の評価=ドナベディアン」と対応づけて覚えます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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