111AM036|第111回 看護師国家試験 過去問
集団指導が望ましいのはどれか。
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正解: 2
正答
2.1型糖尿病 type 1 diabetes mellitus の学童を対象とした療養指導
この問題のポイント
保健指導や患者教育を行うときに、集団指導と個別指導のどちらが適しているかを見分ける問題です。判断の鍵は4つあります。対象者の課題が共通しているか、仲間どうしの学び合いや支え合いが効果を高めるか、プライバシーや羞恥心への配慮が必要か、一人ひとりの手技や病状に合わせる必要があるか、です。同じ病気で同じ発達段階の子どもが集まることで効果が高まる選択肢2が、集団指導の利点を最も生かせる場面です。
解説
集団指導と個別指導の特徴
集団指導の主な利点は次のとおりです。
- 共通する知識や技術を、多くの人に効率よく伝えられます。
- 参加者どうしが体験を語り合い、互いに影響し合う(グループダイナミクス)ことで学びが深まります。
- 同じ立場の仲間がいると分かることで孤立感が和らぎ、療養を続ける意欲が高まります。
- 仲間がうまくできている姿を見ることで「自分にもできそうだ」という自己効力感が高まります。バンデューラが示した自己効力感の4つの源のうち、代理的経験にあたります。
典型的な例は、糖尿病教室、両親学級(母親学級)、禁煙教室、患者会です。一方で集団指導には、一人ひとりの状況に合わせにくい、人前では質問しにくい、私的な事柄を扱いにくいという限界があります。
個別指導は、次のような場合に選びます。
- 病状や生活背景、理解度、価値観に合わせて内容を調整する必要がある場合
- 手技を実際に行ってもらい、一つずつ確認する必要がある場合
- 他者に知られたくない情報や、羞恥心を伴う内容を扱う場合
1型糖尿病の学童に集団指導が望ましい理由
1型糖尿病は、主に自己免疫によって膵β細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる病気です。生涯にわたりインスリン療法が必要で、小児期に発症することも少なくありません。学童の療養課題は、どの子にもおおむね共通しています。
- 血糖自己測定
- インスリン自己注射
- 低血糖の予防と、低血糖時の補食
- シックデイ(発熱などの体調不良時)の対応
- 給食・体育・宿泊行事など学校生活での工夫
- 友人に病気をどう伝えるか
学童期は、エリクソンの発達課題でいう「勤勉性 対 劣等感」の時期です。仲間集団の影響が強まり、友だちとの比較の中で自分を評価するようになります。そのため、注射や補食が必要な自分だけが「みんなと違う」と感じ、孤立感や劣等感を抱きやすくなります。同じ病気の仲間と一緒に学べば、「一人ではない」と実感でき、仲間の工夫をまねしながら、療養行動を主体的に身につけられます。小児糖尿病キャンプは、集団生活の中で注射・測定・食事・運動・低血糖対応を体験的に学ぶ取り組みで、各地で行われています。
なお、集団指導と個別指導はどちらか一方だけを選ぶものではありません。インスリン量の調整や家族への説明など、個別性の高い部分は個別指導で補います。そのうえで、共通課題の学習と仲間づくりに集団の力を生かすのが、この場面で最も望ましい形です。
他の3つが個別指導になる理由
残りの3つには、個別性の高さ、手技の確認、プライバシーへの配慮のいずれか、または複数が強く当てはまります。病棟や外来で指導計画を立てるときは、「内容」だけでなく「対象者の特性」と「扱う情報の性質」から方法を選ぶ、という考え方が実践でも求められます。
選択肢の確認
1.胃全摘出術後の患者への退院指導:胃全摘出術後には、共通して注意すべき点がいくつかあります。ダンピング症候群を防ぐための少量頻回食とゆっくり食べる習慣、鉄やビタミンB12の吸収障害による貧血、カルシウム吸収低下による骨粗鬆症、逆流性食道炎への注意です。しかし実際の指導内容は、再建法、術後合併症の有無、体重減少の程度、仕事内容、調理を担う家族の有無などによって大きく変わります。退院後の生活に直結する指導なので、本人と家族の状況に合わせた個別指導が基本です。一般的な食事の知識を伝える教室が集団で開かれることはありますが、退院指導としては個別性が優先されます。
2.1型糖尿病 type 1 diabetes mellitus の学童を対象とした療養指導:正答。自己測定、自己注射、低血糖時の補食、学校生活の工夫など、療養上の課題が対象者に共通しています。学童期は仲間の影響が大きい時期で、同じ病気の仲間と学ぶことで孤立感が和らぎ、代理的経験を通して自己効力感が育ちます。小児糖尿病キャンプに代表されるように、集団の力が療養行動の習得と継続を支える場面です。
3.子宮頸癌 cancer of the uterine cervix の術後の神経因性膀胱の患者への間欠的自己導尿の指導:広汎子宮全摘出術では、膀胱を支配する骨盤内臓神経などが損傷されやすく、排尿筋の収縮低下や尿意の低下によって尿閉や残尿が起こります。在宅では、無菌操作ではなく清潔操作で行う清潔間欠自己導尿が用いられます。陰部を露出して行う手技で、体型、手指の動き、姿勢、尿道口の見つけ方(鏡の使用など)に個人差があります。そのため、看護師が一人ずつ実際の手技を確認しながら指導する必要があります。排泄に関わり羞恥心の強い内容でもあり、プライバシーが守られる環境での個別指導が適しています。
4.ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染 human immunodeficiency virus infection 者への生活指導:HIV感染症には今も社会的な偏見や差別が残っており、感染の事実が他者に知られると、就労や人間関係に深刻な不利益が生じるおそれがあります。指導内容も、抗HIV療法の確実な服薬継続、日和見感染症の予防、性行為による感染予防、パートナーへの告知など、きわめて私的な事柄に及びます。免疫状態や生活背景も一人ひとり異なるため、秘密が守られる環境での個別指導が原則です。本人が自ら選んで参加するピアサポートの場は別として、医療者が一律に集めて集団で指導する方法は適しません。
覚えるポイント
- 集団指導が向くのは、共通の課題があり、仲間どうしの体験共有・支え合い・代理的経験による自己効力感の向上が期待できる場面です(糖尿病教室、両親学級、禁煙教室、小児糖尿病キャンプなど)。
- 個別指導が向くのは、次の3つの場面です。
- 術後の退院指導のように個別性が高い内容
- 自己導尿のように手技を一人ずつ確認する必要がある場面
- HIV感染症や排泄のようにプライバシーや羞恥心への配慮が必要な内容
- 学童期は「勤勉性 対 劣等感」の時期で、仲間集団の影響が強まります。慢性疾患をもつ子どもには、同じ病気の仲間との交流が療養継続の支えになります。
- 広汎子宮全摘出術後の神経因性膀胱には、清潔操作で行う清潔間欠自己導尿を個別に指導します。
- 胃全摘出術後は、ダンピング症候群(少量頻回食)、鉄・ビタミンB12欠乏による貧血、骨粗鬆症に注意します。
- 集団指導と個別指導は、目的に応じて組み合わせて用いるのが実践の基本です。
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