111AM051|第111回 看護師国家試験 過去問

Aさん(54歳、女性)は甲状腺機能亢進症 hyperthyroidism と診断され、放射性ヨウ素内用療法を受けることとなった。看護師の説明で正しいのはどれか。

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正解: 1

正答

1.「治療前1週間は海藻類を摂取しないでください」

この問題のポイント

放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)の仕組みと、治療前後の生活上の注意を問う問題です。判断の鍵は「甲状腺はヨウ素を取り込んでホルモンを作る」という性質です。ここから「治療前は体内のヨウ素を減らしておく」という準備が導けます。あわせて、この治療は内服で行うこと、放射線が甲状腺に集中するため全身性の副作用が少ないことを押さえれば、他の選択肢も除外できます。

解説

治療の仕組み

甲状腺の濾胞細胞は、血中のヨウ素をナトリウム・ヨウ素共輸送体によって積極的に取り込み、甲状腺ホルモン(T3、T4)の材料にします。放射性ヨウ素内用療法は、この性質を利用する治療です。放射性ヨウ素(ヨウ素131)を含むカプセルを内服すると、放射性ヨウ素が甲状腺に集まります。そこで放出されるβ線が濾胞細胞を破壊し、ホルモンの産生を減らします。

β線は組織内でわずか数mm以内しか届かないため、周囲の臓器への影響は小さく抑えられます。一方、ヨウ素131はγ線も放出します。γ線は体外に出るため、治療後しばらくは周囲の人の被曝に配慮する必要があります。ヨウ素131の物理的半減期は約8日です。

治療前の準備:ヨウ素制限

食品などに由来する通常の(放射性でない)ヨウ素が体内に多いと、甲状腺はそのヨウ素で満たされます。すると投与した放射性ヨウ素の取り込みが低下し、治療効果が弱まります。そこで治療前の一定期間(おおむね1〜2週間、施設の指示による)、ヨウ素を多く含む次のものを避けます。

  • 昆布、わかめ、ひじき、のりなどの海藻類
  • 昆布だしや昆布エキスを使った加工食品
  • ヨウ素を含むうがい薬(ポビドンヨード)や消毒薬
  • ヨード造影剤を用いる検査(影響が長く残るため、事前に申告してもらいます)

抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)も治療前の数日間、医師の指示で中止します。抗甲状腺薬は、取り込んだヨウ素がホルモン合成に組み込まれて甲状腺内にとどまる過程を妨げ、治療効果を弱めるためです。日本の食生活は海藻由来のヨウ素摂取が多いので、具体的な食品名を挙げて説明することが看護師の大切な役割になります。

治療後の経過と生活指導

治療はカプセルを水で飲むだけで、痛みも体の固定もありません。甲状腺機能亢進症(多くはバセドウ病)に用いる量であれば、外来で行えることが多いです。甲状腺がんに対する大量投与では、放射線治療病室への入院が必要になることがあります。

治療後に起こりうる経過は次のとおりです。

  • 早期(数日〜数週間):放射線による甲状腺の炎症で頸部の痛みや腫れが出ることがあります。壊れた濾胞からホルモンが放出され、甲状腺中毒症状が一過性に悪化することもあります。
  • 数か月以降:甲状腺機能低下症の頻度が高く、甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)の補充が必要になります。そのため、定期的に甲状腺機能検査を受けるよう説明します。
  • 活動性の眼症がある場合は悪化することがあり、喫煙者で起こりやすいとされます。

被曝防護の指導として、治療後数日間は乳幼児や妊婦と長時間密着しない、別々に寝る、トイレは座って使用しよく流す、水分を多めにとって排尿を促す、などを伝えます。妊娠中・授乳中は禁忌であり、治療後は一定期間の避妊が必要です。

Aさんは治療前の段階にあるため、放射性ヨウ素の取り込みを高めるヨウ素制限を説明する選択肢1が正しい内容です。

選択肢の確認

1.「治療前1週間は海藻類を摂取しないでください」:正答。海藻類はヨウ素を非常に多く含みます。治療前に体内のヨウ素を減らしておくと、甲状腺が放射性ヨウ素を効率よく取り込めるようになり、治療効果が高まります。

2.「治療中は体を固定します」:この治療は放射性ヨウ素のカプセルを内服するだけです。薬剤が血流に乗って甲状腺に自然に集まるので、照射位置を合わせる必要がなく、体を固定しません。体の固定が必要なのは、リニアックなどで体外から放射線を当てる外部照射です。特に頭頸部の照射では、シェル(固定具)を用いて毎回同じ位置に照射します。外部照射と内用療法を取り違えないことが大切です。

3.「治療後の副作用に脱毛があります」:放射性ヨウ素は甲状腺に選択的に集まり、β線の到達距離も短いため、頭皮の毛根が障害されることはありません。脱毛は、細胞分裂の盛んな毛母細胞を傷つける殺細胞性抗がん薬の副作用や、頭部を照射野に含む外部照射で起こるものです。この治療で説明すべき副作用は、早期の頸部の痛み・腫れと、後に起こる甲状腺機能低下症です。

4.「治療後1週間は生野菜を摂取しないでください」:生野菜の制限は、抗がん薬治療や造血幹細胞移植で骨髄抑制が起こり、好中球が減って易感染状態にある患者に対して、食品からの感染を防ぐために行うものです。甲状腺機能亢進症に用いる量の放射性ヨウ素では、問題となる骨髄抑制は起こらないため、生野菜を控える必要はありません。この治療後の注意の中心は、食事制限ではなく周囲の人への被曝防護です。

覚えるポイント

  • 放射性ヨウ素内用療法は、甲状腺がヨウ素を取り込む性質を利用した治療です。治療前はヨウ素制限(海藻類、昆布だし、ヨウ素系うがい薬、ヨード造影剤)を行い、医師の指示で抗甲状腺薬を中止します。
  • 投与はカプセルの内服で、痛みも固定もありません。体の固定が必要なのは外部照射です。
  • 副作用は、早期が頸部の痛み・腫れと甲状腺中毒症状の一過性悪化、晩期が甲状腺機能低下症(ホルモン補充が必要)です。脱毛は起こりません。
  • 治療後はγ線による周囲への被曝に配慮します(乳幼児・妊婦との密着を避ける、トイレは座って使いよく流す、水分摂取)。妊娠中・授乳中は禁忌で、治療後は一定期間避妊します。
  • 生野菜の制限は、骨髄抑制による易感染状態への対策です。甲状腺関連では、抗甲状腺薬の重大な副作用である無顆粒球症(発熱・咽頭痛が出たらすぐ受診)も併せて覚えておきましょう。

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