111AM052|第111回 看護師国家試験 過去問

老年期の発達課題を引退の危機、身体的健康の危機および死の危機の3つの段階で示したのはどれか。

解答・解説を見る

正解: 3

正答

3.ペック Peck, R.

この問題のポイント

老年期の発達課題を「引退」「身体的健康」「死」という3つの危機に分けて示した理論家を選ぶ問題です。判断の鍵は、エリクソンの心理社会的発達理論を土台にして、中年期と老年期の課題をさらに細かく示したのがペックであるという知識です。発達理論は「理論家名」と「キーワード」を対応させて覚えておくと、同じテーマの問題にも確実に対応できます。

解説

ペックの老年期の3つの課題

ペック(Peck, R.)は、エリクソンの8段階の理論では成人期以降の長い期間が大まかにまとめられている点に着目しました。そこで中年期と老年期の課題を具体的に分けて示しました。老年期については、次の3つの課題(危機)を挙げています。

  • 引退の危機(自我分化 対 仕事役割への没入):退職で職業上の役割を失ったときに問われる課題です。「仕事=自分」という価値づけから離れ、家庭・地域・趣味など仕事以外の役割や活動に自分の価値を見いだせるかが焦点になります。
  • 身体的健康の危機(身体の超越 対 身体への没入):体力の低下や慢性疾患で身体の衰えが避けられなくなったときに問われる課題です。身体の不調ばかりにとらわれず、人との交流や精神的・創造的な活動に満足や喜びを見いだせるかが焦点になります。
  • 死の危機(自我の超越 対 自我への没入):自分の死が近づいていることを受け止める段階の課題です。子や孫、次の世代、自分が関わってきた社会への貢献を通して、自分を超えたものの中に生き続けると感じられるかが焦点になります。

問題文の「引退」「身体的健康」「死」の3語は、このペックの枠組みそのものです。

ペックは中年期についても、身体的能力より知恵を重んじることなど、4つの課題を示しています。エリクソンの「成人期・老年期」をより具体的にした理論だと理解しておくとよいでしょう。

他の理論家との区別

  • エリクソン:人生を8段階に分け、各段階の心理社会的危機を「○○ 対 ××」の対概念で示しました。老年期は「統合 対 絶望」で、この危機を乗り越えることで得られる力(徳)は英知です。自分の人生を振り返り、よいことも悪いことも含めて受け入れ意味づけられると「統合」に至ります。ペックの3つの課題は、この統合に至るまでの具体的な課題を示したものと位置づけられます。
  • レビンソン:中年男性への面接調査をもとに、成人の発達を「人生の四季」にたとえました。生活構造が安定する時期と変化する過渡期が交互に訪れるとし、特に40〜45歳ごろの「人生半ばの過渡期」がよく知られています。
  • ユング:人生を太陽の運行にたとえ、40歳前後を「人生の正午」と呼びました。人生の後半は外界への適応から内面へと目を向け、本来の自己を実現していく「個性化」の過程であるとしました。
  • ハヴィガースト:本問の選択肢にはありませんが、ペックと混同しやすい理論家です。人生を6段階に分け、各段階で達成すべき発達課題を列挙しました。老年期の課題には、体力と健康の衰えへの適応、引退と収入減少への適応、配偶者の死への適応などが含まれます。ハヴィガーストは「適応すべき課題のリスト」、ペックは「対になる3つの危機」という形の違いで区別します。

看護実践とのつながり

高齢者の心理社会面をアセスメントするとき、ペックの枠組みはそのまま観察の視点になります。

  • 退職後に役割を失って閉じこもりがちな人には、引退の危機への支援として、地域活動への参加や家庭内での役割づくりを考えます。
  • 身体症状への訴えが生活の中心になっている人には、身体の超越に向けて、楽しみや交流の機会を支えます。
  • 死への不安を抱える人には、回想法などで人生を振り返り、次の世代に残してきたものを本人が確かめられるよう関わります。

選択肢の確認

1.エリクソン Erikson, E. H.:人生を乳児期から老年期までの8段階に分け、各段階の心理社会的危機を対概念で示した理論家です。老年期の危機は「統合 対 絶望」の1つとして示されており、引退・身体的健康・死の3段階には分けていません。ペックはこの老年期の段階を細分化した立場であり、土台となった理論と発展させた理論の関係を取り違えないことが大切です。

2.レビンソン Revinson, D. J.:成人期の発達を「人生の四季」にたとえ、生活構造の安定期と過渡期が交互に訪れるとした理論家です(英語表記は一般に Levinson です)。人生半ばの過渡期(いわゆる中年の危機)を重視した理論で知られ、老年期の課題を3つの危機として示したものではありません。

3.ペック Peck, R.:正答。エリクソンの理論を発展させた理論家です。老年期の課題を、引退の危機(自我分化 対 仕事役割への没入)、身体的健康の危機(身体の超越 対 身体への没入)、死の危機(自我の超越 対 自我への没入)の3つに分けて示しており、問題文の記述と一致します。

4.ユング Jung, C. G.:人生を太陽の運行にたとえ、40歳前後を「人生の正午」と呼んだ理論家です。人生後半は内面に目を向けて本来の自己を実現していく個性化の過程であるとしました。中年期の転換点を重視した理論であり、老年期を3つの危機に分けて示したものではありません。

覚えるポイント

  • ペック:老年期は「引退の危機・身体的健康の危機・死の危機」の3つです(自我分化/身体の超越/自我の超越)。エリクソンの理論を中年期・老年期について細分化しました。
  • エリクソン:8段階の心理社会的発達理論です。老年期は「統合 対 絶望」(得られる力は英知)、成人期(壮年期)は「生殖性(世代性) 対 停滞」、成人初期は「親密性 対 孤立」です。
  • レビンソン:「人生の四季」にたとえ、安定期と過渡期が交互に訪れるとしました。キーワードは「人生半ばの過渡期」です。
  • ユング:40歳前後を「人生の正午」とし、人生後半は内面に向かう「個性化」の過程であるとしました。
  • ハヴィガースト:6段階ごとに発達課題を列挙しました。老年期には健康の衰え・引退と収入減少・配偶者の死への適応が含まれ、ペックと混同しやすいので注意します。
  • 発達理論の問題は「理論家名とキーワードの対応」で解けます。数(8段階、6段階、3つの危機)や比喩(四季、正午)を手がかりに整理しておきましょう。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。

関連問題

← 111AM051111AM053 →
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)