111AM054|第111回 看護師国家試験 過去問

30歳を100%とした生理機能と比較して、老年期において機能の残存率の平均値が最も低下するのは次のうちどれか。

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正解: 2

正答

2.最大換気量

この問題のポイント

加齢による生理機能の低下の程度が、機能によって大きく違うことを問う問題です。「30歳を100%とした」「残存率の平均値」という表現は、加齢と生理機能の関係を示した古典的な研究(ショックのデータ)を指しています。複数の器官が協調して最大の能力を出す機能ほど大きく低下し、単一の組織の性質に近い機能ほど保たれる、という原則を知っていれば判断できます。

解説

30歳を100%とした残存率

加齢によって多くの生理機能が低下しますが、低下の速さと程度は機能ごとに異なります。30歳の値を100%として、80歳前後で残っている割合をおおまかに並べると、次のようになります。

  • 神経伝導速度:約9割
  • 基礎代謝率、細胞内水分量:約8割
  • 心係数(安静時):約7割
  • 肺活量:約6割
  • 腎血流量:約5割
  • 最大換気量:約4割

4つの選択肢のうち最大換気量が最も低いため、正答は選択肢2です。

最大換気量が大きく低下する理由

最大換気量は、できるだけ深く速く呼吸したときに、1分間で換気できる空気の最大量です。安静時の換気量ではなく、呼吸器系が出せる最大の能力、つまり予備力を表す指標です。この値は、次の要素がすべてそろって初めて高く保たれます。

  • 呼吸筋の筋力
  • 胸郭の動きやすさ
  • 肺の弾性
  • 気道抵抗の低さ
  • 呼吸を速く深く続けるための神経と筋の協調

加齢に伴って、これらの要素に次のような変化が重なります。

  • 肋軟骨の石灰化や円背によって胸郭が硬くなり、広がりにくくなります。
  • 横隔膜や肋間筋などの呼吸筋の筋力と持久力が落ちます。
  • 肺の弾性収縮力が低下するため、息を吐くときに末梢の気道が早く閉じやすくなります。

その結果、残気量が増え、肺活量と1秒量は減少します。一方、全肺気量はあまり変わりません。一つひとつの変化は中等度でも、最大換気量はそれらを掛け合わせた結果として決まるため、低下が大きく表れます。

これに対して、神経伝導速度は1本の神経線維を興奮が伝わる速さで、単一の組織の性質に近い機能です。そのため、低下は小さくとどまります。基礎代謝率と細胞内水分量は、筋肉量など細胞量の減少を反映して下がりますが、低下はいずれも2割程度です。

看護への生かし方

高齢者は、安静にしていれば呼吸に問題がなさそうに見えても予備力が小さいため、次のような負荷が加わると呼吸不全に陥りやすくなります。

  • 発熱や感染
  • 手術
  • 運動

咳をする力も低下しているので痰を出しにくく、肺炎や術後の無気肺を起こしやすい状態です。この予備力の低下を補う看護として、次の援助が重要になります。

  • 術前からの呼吸訓練
  • 深呼吸と排痰の援助
  • 早期離床
  • 呼吸しやすい体位の工夫

選択肢の確認

1.基礎代謝率:筋肉量(除脂肪体重)が減るのに伴って加齢とともに低下しますが、老年期でも30歳の8割程度が保たれます。低下の程度は選択肢3と同じくらいで、選択肢2ほど大きくは下がりません。高齢者の必要エネルギー量が少なくなる根拠として押さえておく知識です。

2.最大換気量:正答。胸郭の硬化、呼吸筋力の低下、肺の弾性収縮力の低下が重なり、呼吸器が出せる最大の能力が大きく損なわれます。老年期の残存率は4割程度で、選択肢の中で最も低くなります。

3.細胞内水分量:筋細胞などの細胞量が減るため加齢とともに減少し、高齢者の体水分率が成人より低い主な理由になっていますが、残存率は8割程度です。高齢者が脱水を起こしやすいことから「大きく減る」と取り違えやすい選択肢です。脱水の起こりやすさには、口渇を感じにくくなることや、腎臓で尿を濃縮する力が落ちることも関わっています。

4.神経伝導速度:有髄線維の減少や髄鞘の変化によって少しずつ遅くなりますが、残存率は9割程度で、4つの中で最も低下が小さい機能です。高齢者の反応時間が長くなるのは、伝導速度そのものよりも、中枢での情報処理や判断に時間がかかる影響が大きいと整理すると理解しやすくなります。

覚えるポイント

  • 30歳を100%とした老年期の残存率の目安は、神経伝導速度 約9割 > 基礎代謝率・細胞内水分量 約8割 > 心係数 約7割 > 肺活量 約6割 > 腎血流量 約5割 > 最大換気量 約4割、の順です。
  • 単一の組織の性質に近い機能は保たれやすく、複数の器官が協調して最大の能力を出す機能ほど大きく低下します。
  • 加齢による呼吸機能の変化は、残気量が増加、肺活量・1秒量・1秒率・最大換気量・動脈血酸素分圧が低下、全肺気量はほぼ変わらない、の3つに分けて覚えます。
  • 高齢者で問題になるのは安静時の値よりも予備力の低下で、負荷がかかると破綻しやすくなります(肺炎、術後無気肺、脱水など)。
  • 高齢者の体水分率は成人より低く(およそ50%台)、減るのは主に細胞内液です。

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