111AM055|第111回 看護師国家試験 過去問

高齢者の健康障害の特徴で正しいのはどれか。

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正解: 4

正答

4.薬物の副作用〈有害事象〉が発生しやすい。

この問題のポイント

加齢に伴う身体と心理社会的な変化が、病気のあらわれ方や経過にどう影響するかを問う問題です。「症状のあらわれ方」「治療への反応と回復」「心理的要因」「薬物への反応」の4つの視点を、予備力の低下や臓器機能の低下と結びつけて判断します。鍵は、薬物動態の加齢変化と多剤併用が重なり、有害事象が起こりやすくなることです。

解説

加齢とともに、各臓器の予備力(ふだんは使っていない余力)と、体内環境を一定に保つ恒常性維持機能が低下します。そのため高齢者の健康障害には、成人とは異なる次のような特徴があります。

  • 複数の疾患を同時にもつことが多く、慢性疾患が中心になる
  • 症状が非定型的で、はっきりしないことが多い
  • 個人差が大きい
  • 脱水や電解質異常を起こしやすい
  • 1つの病気をきっかけに他の臓器の障害や合併症が連鎖しやすく、回復に時間がかかる
  • 薬物に対する反応が成人と異なり、有害事象が起こりやすい
  • 心理的・社会的な要因(環境、家族、経済状況など)が、発症・経過・予後に強く影響する

薬物有害事象が起こりやすい理由

選択肢の〈有害事象〉は、薬物との因果関係を問わず、投与後に生じた好ましくない事象全般を指します。副作用は、そのうち薬物との因果関係が否定できないものです。高齢者で有害事象が起こりやすい理由は、次のように整理できます。

  • 分布:体内の水分量が減り、体脂肪の割合が増えます。そのため水溶性の薬物は血中濃度が上がりやすくなります。脂溶性の薬物は脂肪に蓄積し、作用が長引きやすくなります。血清アルブミンが低下すると、たんぱく結合率の高い薬物(ワルファリンなど)で遊離型が増え、作用が強く出ることがあります。
  • 代謝:肝血流量と肝臓の容積が低下し、肝臓で代謝される薬物の分解が遅れます。
  • 排泄:腎血流量と糸球体濾過量が低下し、腎排泄型の薬物が体内に残りやすくなります。高齢者は筋肉量が少ないため、血清クレアチニン値が基準範囲内でも腎機能が低下していることがあります。
  • 感受性:睡眠薬、抗不安薬、抗精神病薬など中枢神経系に作用する薬物への感受性が高まり、ふらつき、転倒、せん妄を起こしやすくなります。
  • 多剤併用(ポリファーマシー):複数の疾患をもち、複数の医療機関を受診するため、処方薬が増えます。その結果、相互作用や重複投与が起こりやすくなります。日本老年医学会のガイドラインでは、服用薬がおおむね6種類以上になると有害事象が増えるという報告が示されています。
  • 服薬管理:視力・聴力・認知機能・手指の巧緻性が低下すると、飲み忘れや飲み過ぎなどの服薬エラーが起こりやすくなります。

有害事象の症状そのものも非定型的です。ふらつき、食欲低下、便秘、せん妄、活動性の低下など、「年のせい」と見過ごされやすい形で現れます。その症状に対して新しい薬が追加され、さらに薬が増えていく処方カスケードも問題になります。

看護での生かし方

高齢者に新たな症状が現れたときは、まず薬物の影響を疑う視点が大切です。具体的には次のように関わります。

  • お薬手帳で服用中の薬を一元的に把握する
  • 一包化や服薬カレンダーで服薬を支援する
  • 医師・薬剤師と情報を共有する

また、症状が非定型的であることを踏まえ、「元気がない」「食事量が減った」「話のつじつまが合わない」といった「いつもと違う」変化を早く捉えることが、重症化の予防につながります。

選択肢の確認

1.症状の出現は定型である。:高齢者の健康障害は、症状が非定型的に現れることが大きな特徴です。肺炎でも高熱や咳・痰が目立たず、食欲低下や元気のなさ、せん妄だけが現れることがあります。心筋梗塞でも、典型的な胸痛を欠く無痛性のものが少なくありません。背景には、痛覚などの感覚閾値の上昇、免疫反応の低下、認知機能の低下による訴えの乏しさがあります。「定型」は成人の典型的な病像に当てはまる表現であり、高齢者の特徴としては誤りです。

2.治療の効果が現れやすい。:高齢者は予備力と恒常性維持機能が低下しているうえ、複数の疾患を併せもつことが多いため、治療への反応は一般に現れにくく、回復にも時間がかかります。安静や入院をきっかけに廃用症候群や合併症を起こし、かえって機能が低下することもあります。薬物療法では効果より有害事象が前面に出ることもあり、「効果が現れやすい」とはいえないため誤りです。

3.疾患の発生に心理的要因の影響は少ない。:高齢期には、配偶者や友人との死別、退職による役割の喪失、健康や経済基盤の喪失など、多くの喪失体験が重なります。転居や施設入所といった環境の変化も起こりやすく、これによる心身の不調はリロケーションダメージと呼ばれます。こうした心理的・社会的要因は、うつ病の発症や、意欲・食欲の低下を通した身体機能の低下など、疾患の発生と経過に大きく影響します。影響は「少ない」のではなく大きいため誤りです。

4.薬物の副作用〈有害事象〉が発生しやすい。:正答。加齢により体内水分量と血清アルブミンが減り、肝臓での代謝と腎臓からの排泄が低下します。そのため同じ用量でも血中濃度が高くなり、作用が強く長く出やすくなります。これに、中枢神経系に作用する薬物への感受性の亢進、多剤併用による相互作用や重複投与、服薬管理の難しさが加わり、有害事象が起こりやすくなります。

覚えるポイント

  • 高齢者の健康障害は「多疾患併存・慢性化」「症状が非定型」「個人差が大きい」「回復が遅く合併症が連鎖しやすい」「心理社会的要因の影響が大きい」「薬物有害事象が起こりやすい」で整理します。
  • 薬物動態の加齢変化は、体内水分量の減少(水溶性薬物の血中濃度が上昇)、体脂肪割合の増加(脂溶性薬物が蓄積)、アルブミン低下(遊離型が増加)、肝代謝と腎排泄の低下です。
  • 新たなふらつき・転倒・せん妄・食欲低下・便秘をみたら、まず薬の影響を疑います。多剤併用と処方カスケードに注意します。
  • 非定型症状の代表例は、発熱や咳の乏しい肺炎、胸痛のない心筋梗塞、せん妄だけが目立つ感染症です。
  • 筋肉量の少ない高齢者では、血清クレアチニン値が基準範囲内でも腎機能が低下していることがあります。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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