111AM083|第111回 看護師国家試験 過去問

タイムアウトによって予防できるのはどれか。

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正解: 1

正答

1.患者の誤認

この問題のポイント

タイムアウトを「いつ・誰が・何を」確認する手順として理解しているかを問う、医療安全の問題です。タイムアウトは、手術や侵襲的処置を始める直前に、チーム全員が手を止めて患者・部位・術式を声に出して確認する手順です。目的は取り違え(誤認)の防止にあります。ほかの選択肢は、それぞれ別の予防策で防ぐ事故であると見分けられれば正答できます。

解説

タイムアウトとは

タイムアウトは、執刀(皮膚切開)の直前に行う確認です。外科医、麻酔科医、看護師など、その場にいる全員がいったん作業を止め、患者の氏名、予定している術式、手術部位(左右を含む)を口頭で確認します。

WHO(世界保健機関)の手術安全チェックリストでは、手術の流れを次の3つの時点に分けて確認します。

  • サインイン(麻酔導入前):患者本人と一緒に、本人確認、部位、術式、同意を確認します。あわせて、部位のマーキング、麻酔器と薬剤の点検、パルスオキシメータの装着、アレルギー、気道確保困難や誤嚥のリスク、大量出血のリスクも確認します。
  • タイムアウト(皮膚切開前):チームメンバーが名前と役割を紹介し合い、外科医・麻酔科医・看護師が患者、部位、術式を口頭で確認します。予想される重大事象(手術時間、出血量、麻酔上の懸念)、滅菌の確認、器械の問題、予防的抗菌薬の投与、必要な画像の表示も共有します。
  • サインアウト(手術室退室前):実施した術式名の記録、器械・ガーゼ・針のカウント、摘出標本のラベル、術後管理の要点を確認します。

なぜ誤認を防げるのか

取り違えは、次のような場面で起こり得ます。

  • 複数の患者が同時に手術室へ搬入される
  • 書類や画像の左右を読み違える
  • 担当者の交代で情報が正しく伝わらない

患者・部位・術式の取り違えは、ひとたび起これば取り返しのつかない結果を招きます。タイムアウトは、執刀直前という後戻りできなくなる時点で、全員が同じ情報を声に出してそろえ、食い違いに気づく最後の機会をつくります。

重要なのは次の2点です。

  • 一人が黙って確認するのではなく、全員が手を止め、同時に声に出して確認すること
  • 職種や立場に関係なく、疑問があれば誰でも手順を止められること

看護師も確認の当事者であり、違和感を口に出す役割を担います。日本では1999年に、大学病院で心臓手術と肺手術の患者を取り違えて手術する事故が起き、患者確認の重要性が広く認識されるきっかけになりました。

臨床での応用

タイムアウトは手術室だけの手順ではありません。中心静脈カテーテル挿入や胸腔穿刺など、病棟や検査室で行う侵襲的な処置でも、開始前に患者・部位・処置内容を確認する目的で取り入れられています。

日常の与薬、採血、輸血での患者確認も同じ考え方に基づいています。

  • 患者本人にフルネームを名乗ってもらう
  • 氏名と生年月日など2つ以上の識別子を使う
  • リストバンドと指示書を照合する

「○○さんですね」と問いかけると、聞き間違えたまま「はい」と答えてしまうことがあります。そのため、本人に名乗ってもらう方法が勧められています。

選択肢の確認

1.患者の誤認:正答。タイムアウトは、執刀直前にチーム全員が手を止め、患者氏名、術式、手術部位と左右を声に出して確認する手順です。患者の取り違えや、部位・術式の誤りを防ぐことが本来の目的です。

2.抗癌薬の曝露:医療者の抗癌薬への職業性曝露は、安全キャビネットでの調製、閉鎖式薬物移送システムの使用、ガウン・手袋・マスク・ゴーグルなどの個人防護具で防ぎます。投与後の患者の排泄物やリネンを適切に取り扱うことも対策に含まれます。タイムアウトは情報をそろえる確認手順であり、薬剤の飛散や皮膚への付着を物理的に防ぐものではありません。抗癌薬の投与前に患者・薬剤・量・経路を確認するのは投与エラーを防ぐためで、曝露対策とは目的が異なる点も区別しておきます。

3.個人情報の漏洩:情報漏洩は、個人情報保護法に基づく院内規程の整備、電子カルテの閲覧権限とパスワードの管理、記録媒体の持ち出し禁止などで防ぎます。エレベーターなど公共の場で患者の話をしないことも大切です。看護師には保健師助産師看護師法で守秘義務が課されています。タイムアウトで患者氏名を読み上げるのは、手術室内のチームで確認するためであり、情報管理を目的とした手順ではありません。

4.ベッドからの転落:入院中の転落は、転倒転落アセスメントスコアシートによるリスク評価、ベッドを低くしてストッパーをかけること、ベッド柵の適切な使用、離床センサーの活用で防ぎます。ナースコールを手の届く位置に置くことや、照明・履物の調整も有効です。睡眠薬の使用、せん妄、認知機能の低下、夜間頻尿などがリスク要因になります。タイムアウトはこうした患者ごとの転落リスクに対処する手順ではありません。

5.血液を媒介とする感染:B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなどの血液媒介感染は、主に次の対策で防ぎます。すべての患者の血液・体液を感染の可能性があるものとして扱う標準予防策、リキャップの禁止、使用済み針の耐貫通性容器への廃棄、安全装置付き器材の使用、B型肝炎ワクチンの接種、針刺し時の報告と対応体制です。タイムアウトでは予防的抗菌薬の投与も確認しますが、これは手術部位感染を防ぐためで、医療者の血液曝露による感染とは別の問題です。

覚えるポイント

  • タイムアウトは、執刀(皮膚切開)直前にチーム全員が手を止め、患者・部位・術式を声に出して確認する手順で、目的は取り違え(誤認)の防止です。
  • WHO手術安全チェックリストは、サインイン(麻酔導入前)、タイムアウト(皮膚切開前)、サインアウト(手術室退室前)の3段階です。
  • 患者確認の基本は、本人にフルネームを名乗ってもらうこと、2つ以上の識別子を使うこと、リストバンドと指示書を照合することです。
  • 事故の種類ごとの予防策を対応させて覚えます。抗癌薬曝露は安全キャビネット・閉鎖式器具・個人防護具、転落はリスク評価と環境整備、血液媒介感染は標準予防策とリキャップ禁止、情報漏洩は権限管理と守秘義務で防ぎます。
  • 針刺しによる感染リスクは、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVの順に高いと覚えておきます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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