111AM084|第111回 看護師国家試験 過去問

安静臥床による廃用症候群 disuse syndrome で生じるのはどれか。

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正解: 4

正答

4.骨吸収の亢進

この問題のポイント

長く安静臥床を続けたときに全身に起こる変化(廃用症候群)について、それぞれが「増える」のか「減る」のかを問う問題です。呼吸・循環・代謝・消化の機能はいずれも低下・減少します。一方、骨では荷重と筋収縮による刺激がなくなるため、骨吸収が骨形成を上回ります。各選択肢の変化の向きを、機序から判断できるかが鍵です。

解説

廃用症候群は、治療のための安静や活動量の低下によって心身を使わない状態が続き、その結果として起こる二次的な機能低下の総称です。生活不活発病とも呼ばれます。原疾患とは別に起こり、高齢者ほど短期間で生じて回復に時間がかかります。そのため、予防は看護の重要な役割です。

設問は、安静臥床によって「生じる」変化を選ぶ形式です。選択肢はすべて「増加・上昇・亢進・増進」という増える方向の言葉で書かれています。したがって、実際に増える変化はどれかを、系統ごとの機序で見分ける必要があります。

主な系統別の変化は次のとおりです。

  • 骨:骨は、荷重(重力)と筋の収縮による機械的な刺激を受けることで骨形成が保たれています。臥床でこの刺激が失われると、破骨細胞による骨吸収が高まり、骨芽細胞による骨形成は低下します。その結果、骨量が減少します(廃用性骨萎縮、廃用性骨粗鬆症)。骨から溶け出したカルシウムは尿中に多く排泄され、尿路結石の原因になります。骨代謝が活発な若年者などでは、高カルシウム血症を起こすこともあります。
  • 筋・関節:筋萎縮と筋力低下が進みます。完全安静では、1週間で筋力が10〜15%程度低下するといわれます。関節拘縮も起こります。
  • 循環:臥位になると、下肢の血液が胸部へ移動します。心房が伸展すると体は「血液が多い」と感知し、心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌が増え、抗利尿ホルモンの分泌は抑えられて利尿が進みます。その結果、循環血液量は減少し、1回拍出量の低下、安静時心拍数の増加、起立性低血圧が生じます。さらに、血液の濃縮と下肢の静脈うっ滞により、深部静脈血栓症のリスクも高まります。
  • 呼吸:腹部臓器による横隔膜の圧迫、胸郭運動の制限、呼吸筋力の低下によって、1回換気量や肺活量が減り、咳嗽力も低下します。分泌物が肺の背側にたまり、無気肺や沈下性肺炎を起こしやすくなります。
  • 代謝・消化:筋肉量が減るため基礎代謝は低下し、耐糖能も低下します。腸蠕動と腹圧の低下で便秘になり、活動量の低下とあわせて食欲も落ちます。
  • 皮膚・精神:褥瘡、抑うつ、意欲低下、認知機能の低下、せん妄などもみられます。

このように、廃用症候群では多くの機能が低下します。ただし「低下するものだけ」と覚えると誤ります。骨吸収、尿中カルシウム排泄、安静時心拍数、血栓のできやすさのように、増える方向の変化もあります。これらはいずれも、機能低下の結果として起こっています。本問で、この増える変化にあたるのが骨吸収です。

臨床では、骨吸収の亢進が骨折や尿路結石につながります。また、食欲低下が低栄養を招き、筋萎縮や褥瘡を悪化させるという悪循環も生まれます。予防の基本は、安静の指示の範囲内で次のような援助を計画的に行うことです。

  • 病状が許す範囲での早期離床
  • 座位・立位による荷重
  • 関節可動域訓練
  • 体位変換
  • 深呼吸や排痰の援助
  • 十分な水分補給

選択肢の確認

1.1回換気量の増加:臥位では、腹部臓器が横隔膜を胸腔側へ押し上げ、背部が寝具に接して胸郭が広がりにくくなります。呼吸筋も弱るため、1回換気量は減少します。浅い呼吸と咳嗽力の低下が重なると、無気肺や沈下性肺炎につながります。1回換気量が増えるのは、運動時や、代謝性アシドーシスを代償する深く大きな呼吸(クスマウル呼吸)などの場面です。

2.循環血液量の増加:臥位になった直後は、下肢からの静脈還流が増えて中心部の血液量が一時的に増えます。しかし、これを感知した利尿反応が続くため、結果として循環血液量は減少します。この一時的な変化と取り違えないよう注意が必要です。起立すると血液が下肢へ移動し、心拍出量を保てずに起立性低血圧が起こります。循環血液量が増えるのは、心不全や腎不全による体液貯留、妊娠などです。

3.基礎代謝の上昇:基礎代謝量は筋肉などの除脂肪量に大きく左右されるため、筋萎縮が進む廃用症候群では低下します。基礎代謝が上昇するのは、発熱、甲状腺機能亢進症、熱傷や大手術後の侵襲期などです。臥床中の患者でもこれらの原因があれば上昇しますが、それは臥床そのものによる変化ではありません。

4.骨吸収の亢進:正答。荷重と筋収縮による機械的な刺激が失われると、破骨細胞による骨吸収が骨形成を上回り、骨量が減少します。その結果、尿中カルシウム排泄の増加による尿路結石や、骨折しやすさにもつながります。

5.食欲の増進:活動量が減るとエネルギー消費が減り、さらに腸蠕動の低下による便秘や意欲の低下も加わるため、食欲は低下します。摂取量が減ると低栄養を招き、筋萎縮や褥瘡をさらに悪化させます。食欲が増進するのは、副腎皮質ステロイド薬の使用時や甲状腺機能亢進症などです。

覚えるポイント

  • 廃用症候群(生活不活発病)は、安静・不活動による二次的な機能低下です。高齢者ほど早く生じ、回復に時間がかかります。
  • 骨は荷重と筋収縮によって維持されます。臥床すると骨吸収が骨形成を上回り、骨量減少、尿中カルシウム排泄の増加(尿路結石)、ときに高カルシウム血症が起こります。
  • 循環は「中心部への血液移動→利尿→循環血液量の減少」の流れで、起立性低血圧と安静時心拍数の増加を招きます。起立性低血圧は、起立後3分以内に収縮期血圧20mmHg以上、または拡張期血圧10mmHg以上低下するものです。
  • 血液の濃縮と静脈うっ滞により、深部静脈血栓症のリスクが上がります。
  • 1回換気量・肺活量・咳嗽力が低下して、無気肺や沈下性肺炎が起こります。また、基礎代謝・耐糖能・腸蠕動・食欲はいずれも低下し、便秘や低栄養につながります。
  • 変化の大部分は低下ですが、骨吸収・尿中カルシウム排泄・安静時心拍数のように増える変化もあります。予防の基本は、早期離床と荷重、関節可動域訓練、体位変換です。

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