111AM082|第111回 看護師国家試験 過去問

急性大動脈解離 acute aortic dissection において緊急手術を行うかどうかの観点で用いる分類はどれか。

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正解: 2

正答

2.スタンフォード分類

この問題のポイント

急性大動脈解離の分類のうち、緊急手術を行うか保存的治療にするかを決めるときに用いる分類を問う問題です。判断の鍵は「解離が上行大動脈に及んでいるかどうか」の1点です。この基準だけで2つに分けるのがStanford分類です。あわせて、同じ大動脈解離の分類であるDeBakey分類との違いと、心不全や急性心筋梗塞で使う分類(NYHA、Killip、Forrester)との区別も押さえましょう。

解説

大動脈解離と上行大動脈の重要性

大動脈壁は内膜・中膜・外膜の3層でできています。大動脈解離では、内膜に亀裂(エントリー)が生じ、そこから流れ込んだ血液が中膜を裂きながら長軸方向に進みます。その結果、本来の血管腔(真腔)とは別の腔(偽腔)ができます。

  • 最大の危険因子は高血圧で、Marfan症候群などの結合組織疾患も関係します。
  • 典型的な症状は、突然の激烈な胸痛・背部痛です。
  • 解離が進むにつれて、痛みが胸から背中、腰へ移動することがあります。

上行大動脈は心臓の出口にあたり、冠動脈や脳へ向かう頸部の分枝がすぐ近くから出ています。そのため、ここに解離が及ぶと次のような致死的合併症を起こしやすくなります。

  • 心膜腔への破裂による心タンポナーデ
  • 大動脈弁の支持が失われることによる急性大動脈弁閉鎖不全
  • 冠動脈の閉塞による急性心筋梗塞
  • 頸部分枝の閉塞による脳虚血

この場合、発症直後から時間とともに死亡率が上がります。そのため、上行大動脈に解離が及んでいれば、原則として緊急手術(人工血管置換術)を行います。

Stanford分類

Stanford分類は、エントリーの位置にかかわらず、解離が上行大動脈に及ぶかどうかだけで分類します。

  • A型:上行大動脈に解離がある → 原則として緊急手術
  • B型:上行大動脈に解離がない → 原則として降圧・鎮痛・安静による保存的(内科的)治療

B型でも、破裂や切迫破裂、腹部臓器や下肢の虚血(灌流障害)、コントロールできない疼痛や高血圧を伴う場合は、ステントグラフト内挿術(TEVAR)や手術を検討します。このようにStanford分類は「すぐに手術か、まず内科治療か」の判断に直結するため、臨床で最もよく使われます。

DeBakey分類との関係

DeBakey分類は、エントリーの位置と解離の範囲による解剖学的な分類です。

  • Ⅰ型:上行大動脈にエントリーがあり、弓部から下行大動脈以遠まで広がる
  • Ⅱ型:解離が上行大動脈に限局する
  • Ⅲ型:左鎖骨下動脈より遠位の下行大動脈にエントリーがあり、下行大動脈以下に広がる(胸部に限局するⅢa、腹部に及ぶⅢb)

Stanford分類との対応は次のとおりです。

  • Ⅰ型とⅡ型は、Stanford A型に相当します。
  • Ⅲ型は、上行大動脈へ逆行性に解離が及ばなければ、Stanford B型に相当します。

DeBakey分類は解離の広がりを詳しく表すのに役立ちます。しかし、緊急手術の要否という観点で用いる分類はStanford分類です。

看護での活かし方

手術を待つA型や、保存的治療を行うB型の急性期には、解離の進展と破裂を防ぐことが看護の中心になります。

  • 厳格な血圧管理を行います(収縮期血圧100〜120mmHg程度が目安とされます)。
  • 十分に鎮痛し、安静を保ち、排便時などの怒責を避けます。

あわせて、解離の進展や分枝の灌流障害を早く捉えるため、次の点を観察します。

  • 痛みの増強や部位の移動
  • 血圧の左右差
  • 意識レベル
  • 四肢の冷感と脈拍の触知
  • 腹痛と尿量
  • 下肢の麻痺

選択肢の確認

1.NYHA 分類:心疾患のある患者が身体活動で感じる息切れ・動悸・疲労などの自覚症状の程度から、心不全の重症度をⅠ〜Ⅳ度に分ける分類です。Ⅰ度は日常の身体活動で症状がなく、Ⅳ度は安静時にも症状があります。主に慢性心不全の機能評価に使うもので、大動脈解離の手術適応の判断には用いません。

2.スタンフォード分類:正答。解離が上行大動脈に及ぶA型と、及ばないB型に分ける分類です。A型は原則として緊急手術、B型は原則として保存的治療となり、治療方針の決定に直結します。

3.Killip〈キリップ〉分類:急性心筋梗塞に伴う心不全の重症度を、肺ラ音の範囲、Ⅲ音、ショックの有無といった身体所見からⅠ〜Ⅳ群に分ける分類です。肺ラ音が全肺野の50%以上で聴取される肺水腫はⅢ群、心原性ショックはⅣ群です。対象は急性心筋梗塞であり、大動脈解離には用いません。

4.DeBakey〈ドベーキー〉分類:大動脈解離の分類ではありますが、エントリーの位置と解離の範囲でⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型に分ける解剖学的な分類です。主な目的は解離の広がりを詳しく表すことです。緊急手術を行うかどうかの判断には、上行大動脈への解離の有無だけに着目した選択肢2の分類を用います。同じ大動脈解離の分類なので、最も取り違えやすい選択肢です。

5.Forrester〈フォレスター〉分類:肺動脈カテーテル(スワン・ガンツカテーテル)で測った心係数と肺動脈楔入圧を用いて、急性心不全の血行動態をⅠ〜Ⅳ群に分ける分類です。境界値は心係数2.2L/分/m²、肺動脈楔入圧18mmHgです。もとは急性心筋梗塞の心不全評価のために作られ、群ごとに利尿薬・血管拡張薬、輸液、強心薬などの治療を選ぶのに使います。大動脈解離の手術適応の判断には用いません。

覚えるポイント

  • Stanford分類は上行大動脈への解離の有無で分けます。A型(あり)は原則緊急手術、B型(なし)は原則保存的治療で、合併症があればTEVARや手術を検討します。
  • DeBakey分類はエントリーと範囲による解剖学的分類です。Ⅰ型・Ⅱ型はStanford A型、Ⅲ型はStanford B型に相当します。
  • A型が危険なのは、心タンポナーデ、急性大動脈弁閉鎖不全、冠動脈閉塞による心筋梗塞、脳虚血を起こしやすいためです。
  • 急性期看護の柱は、厳格な降圧、鎮痛、安静、怒責の回避です。あわせて、痛みの移動、血圧の左右差、臓器虚血の症状を観察します。
  • 心臓関連の分類の区別:NYHAは自覚症状(慢性心不全)、Killipは身体所見(急性心筋梗塞)、Forresterは心係数と肺動脈楔入圧(血行動態)です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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