111AM043|第111回 看護師国家試験 過去問

解離性大動脈瘤 dissecting aortic aneurysm の破裂直後に出血性ショック hemorrhagic shock となった患者の症状として正しいのはどれか。

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正解: 4

正答

4.呼吸不全

この問題のポイント

大動脈の破裂で大量に出血した直後に、全身の循環が破綻して何が起こるかを問う問題です。手がかりは「破裂直後」という時間軸と「出血性ショック」という病態です。ショックの5徴候(5P)の一つに呼吸不全(pulmonary insufficiency)が含まれることを知っていれば正答できます。あわせて、見えるようになるまで時間がかかる黄疸、出血直後の体液移動の向きからみて起こりにくい浮腫、血管拡張で生じる顔面紅潮を除外できるかが問われています。

解説

問題文の手がかり

  • 解離性大動脈瘤:大動脈の内膜の亀裂から血液が中膜に流れ込み、壁が二層に裂けて偽腔ができた状態を大動脈解離といいます。解離によって大動脈が瘤状に拡張したものが解離性大動脈瘤で、現在は「大動脈解離」という名称が一般的です。上行大動脈に解離が及ぶものをStanford A型、及ばないものをB型と分類します。突然の引き裂かれるような胸背部痛、痛みの移動、上肢血圧の左右差が特徴で、最大の危険因子は高血圧です。マルファン症候群も原因になります。
  • 破裂直後:外膜が破れ、胸腔・縦隔・心嚢・後腹膜などへ大量に出血した直後の段階です。
  • 出血性ショック:循環血液量減少性ショックの代表で、症状は分〜時間の単位で急速に進みます。

出血性ショックで起こること

ショックとは、全身の組織への血流が不足し、酸素の需要に供給が追いつかなくなった状態です。出血で循環血液量が減ると、心臓へ戻る血液(静脈還流)が減り、心拍出量が低下します。生体は血圧を保とうとして、まず交感神経を興奮させます。頻脈になり、皮膚・腎・消化管の血管を収縮させて、脳と心臓への血流を守ります。その結果、皮膚は蒼白で冷たくなり、冷汗が出て、毛細血管再充満時間(CRT)が2秒を超えて延長します。一回拍出量が減る一方、末梢血管の収縮で拡張期血圧は保たれやすいため、脈圧は小さくなります。尿量の減少や不安・不穏は代償の段階から現れ、代償が限界を超えると血圧が低下して意識障害へ進みます。

呼吸にも早い段階から影響が出ます。

  • 組織の酸素不足で嫌気性代謝が進み、乳酸がたまって代謝性アシドーシス(乳酸アシドーシス)になります。これを代償するため換気が増え、頻呼吸(過換気)になります。
  • 進行すると、肺の血流が減ってガス交換の効率が落ちます。呼吸筋も血流不足で疲弊して浅く速い呼吸となり、意識レベルが下がれば舌根沈下や呼吸抑制も加わって、換気と酸素化を保てなくなります。
  • 胸腔内に破裂した場合は、血胸によって肺が圧排され、呼吸が障害されます。
  • 救命できても、その後にショック肺(ARDS)を起こすことがあります。

このように、呼吸の変化は出血性ショックの早い段階から現れ、進行すれば呼吸不全に至ります。古典的なショックの5Pは次の5つです。

  • 蒼白(pallor)
  • 虚脱(prostration)
  • 冷汗(perspiration)
  • 脈拍触知不能(pulselessness)
  • 呼吸不全(pulmonary insufficiency)

出血量の推定にはショックインデックス(SI=心拍数÷収縮期血圧)を使います。正常は0.5〜0.7程度で、成人では1.0で約1L、2.0で約2Lの出血が目安とされます。

看護実践での活用

大動脈解離では、破裂を防ぐために安静・降圧・鎮痛を徹底することが基本です。破裂してショックに陥った場合は、次の対応を並行して進めます。

  • 気道・呼吸・循環の確保と高濃度酸素投与
  • 太い留置針による複数の静脈路確保と、輸液・輸血
  • 緊急手術(人工血管置換術やステントグラフト内挿術)の準備

観察では、呼吸数・呼吸様式、意識、脈拍、血圧、尿量を経時的に追います。末梢血管が収縮しているとパルスオキシメータの値が不正確になりやすいため、数値だけに頼らず呼吸状態そのものを見ることが大切です。

また、A型解離が心嚢内に破裂すると心タンポナーデを起こします。この場合は血圧低下・頸静脈怒張・心音減弱(ベックの三徴)がみられ、頸静脈が虚脱する出血性ショックと区別する必要があります。

選択肢の確認

1.黄疸:皮膚や眼球結膜の黄染は、溶血・肝細胞障害・胆汁うっ滞によって血中ビリルビンが増えることで起こります。血清総ビリルビンがおよそ2〜3mg/dLを超えると眼球結膜の黄染として見えるようになりますが、そこまで増えるには時間がかかります。破裂直後には、むしろ末梢血管の収縮による蒼白が目立ちます。ショックが長引いて虚血性肝障害(ショック肝)を起こした場合や、大量輸血・大きな血腫の吸収でビリルビンが増えた場合には、数日後に出現することがあります。「直後」という時間軸から、この場面の症状には当たりません。

2.浮腫:間質に水分がたまる所見で、毛細血管内圧の上昇(心不全、静脈還流障害)、血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症)、血管透過性の亢進、リンパ流障害などで生じます。出血直後は毛細血管内圧が下がるため、間質液はむしろ血管内へ引き込まれて循環血液量を補おうとします。体液の動きが逆向きなので、この場面では起こりにくい所見です。除外の理由は時間ではなく体液移動の向きであり、大量輸液の後や、ショックが遷延して血管透過性の亢進や腎不全を合併した後であれば、数時間のうちにも出現しえます。

3.顔面紅潮:顔や皮膚が赤く温かくなるのは、皮膚の血管が拡張した状態です。出血性ショックでは交感神経の働きで末梢血管が収縮するため、皮膚は反対に蒼白・冷感・湿潤となります。赤く温かい皮膚を伴うショックは、アナフィラキシーや敗血症初期のように血管拡張を主体とする血液分布異常性ショックです。脊髄損傷などによる神経原性ショックでも、皮膚は温かく乾いていて徐脈を伴います。発熱、飲酒、一酸化炭素中毒(鮮紅色)でも皮膚は赤くなり、ショックの種類を皮膚所見で見分ける問題でよく問われます。

4.呼吸不全:正答。ショックの5Pの一つである pulmonary insufficiency(肺・呼吸機能の破綻)に当たります。乳酸アシドーシスの代償で頻呼吸となり、進行すると肺血流の低下によるガス交換の効率低下、呼吸筋の疲弊、意識レベルの低下が重なって、換気と酸素化が保てなくなります。胸腔内に破裂した場合は、血胸による肺の圧排も加わります。

覚えるポイント

  • ショックの5P:蒼白・虚脱・冷汗・脈拍触知不能・呼吸不全
  • 出血性ショックの所見:頻脈、頻呼吸、脈圧の縮小、CRT延長、尿量減少、不安・不穏から意識障害へ進み、代償の限界を超えると血圧が低下します。ショックインデックス1.0で約1L、2.0で約2Lの出血が目安です。
  • 代謝性アシドーシスの呼吸性代償は、呼吸を深く速くして換気量を増やし、二酸化炭素を多く吐き出す反応です。典型は糖尿病ケトアシドーシスなどでみられる深く大きいクスマウル呼吸です。浅い呼吸は死腔換気の割合が増えるため、代償としては不利です。
  • ショックの種類の区別:皮膚が冷たく蒼白なら循環血液量減少性・心原性・閉塞性、温かいなら血液分布異常性(アナフィラキシー、敗血症初期、神経原性)を考えます。頸静脈は出血性ショックでは虚脱し、閉塞性ショック(心タンポナーデ・緊張性気胸)では怒張します。
  • 直後にみられない理由を区別する:黄疸は、見えるほどビリルビンが増えるまでに時間を要するため、直後の症状ではありません。浮腫は、出血直後には毛細血管内圧が下がって間質液が血管内へ移動するため起こりにくい所見です(大量輸液の後などには出現しえます)。
  • 大動脈解離の特徴:移動する激烈な胸背部痛と上肢血圧の左右差。Stanford A型は原則として緊急手術の適応となり、破裂を防ぐための安静・降圧・鎮痛が管理の基本です。

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